ケータイの相手は、今回のバリアフリーマップ作りのための調査の依頼主で昔からの仕事仲間でもあるJだっだ。
夕方、行きつけの店で落ち合うことにした。
ビールを一口飲んでからJは切り出した。
「大事な話があるんですが・・・」
急に大きな仕事が入り、バリアフリーマップの
WEBサイトの制作に予定していた彼の会社の
スタッフを確保できなくなったことをJは告げてきた。
「では、バリアフリーマップはしばらくペンディング
ですか?」
「開設は遅れさせたくないんです。調査も順調にすすめてもらってるし、コンテンツを無駄にはできませんので・・・」
「どうするんですか?」
Jはグラスの中の透明な液体を見つめている。その中に写し出された答えを読み取ろうとしているようにも見える。
「調査とあわせてWEBサイトの制作もお願いしたいと思っているのですが・・・」
「・・・」
今度はこちらが答えを探す側になった。でもビールグラスの中に答えが写ってなんかいない。気泡が浮いては
消える以外に何の変化も起こらなかった。
「わかりませんね。デザイナーもプログラマーもなしでどうするんですか?外注ですか?」
「いや、知っての通り外注を使う余裕などとてもない現状です。その上で可能な限りの制作をお願いできないかと・・・」
Jは制作というものを熟知しているし、こちらの未熟なスキルレベルも把握している。
「可能な限りって・・・、仮にどんなにいいコンテンツがあったとしても、見せ方とか使い勝手の悪いホームページなんて
ヒドイ代物じゃないですか」
「・・・」
今度の沈黙に重みはなかった。こちらの言い分などハナから承知している。
「いつも無理を言ってすまないと思ってます。できるサポートは最大限します」
人には2つのタイプがある。つまり無理を言えるタイプと無理を受け入れてしまうタイプだ。
Jはビールを飲み干すと「ハァー」と軽い息をついてから言った。
「また借りを作ってしまいました。債務残高が膨らむ一方です」
どこかで聞いたセリフだった。
とんだハロウィンの貰い物だ。
どうやらバリアフリーマップ作りの旅はまだまだ続きそうです。
おまけにデスクワークまでも・・・。
でも、貰ったのは果たして、トリートなのか?それともトリックなのか?