北千住駅西口。
23区内なのにここまで来ると地方都市臭が漂っている。
バスターミナルを覆うように架けられた駅ビルからつながるデッキ。
百貨店の入口と地上に降りるための2台のエレベータへと続く。
車椅子にとっては天国的インフラのひとつだ。
調査終了時刻は1時過ぎ。昼にしよう。
旨そうな定食屋がないかとデッキの上から360°サーチする。と、なんだかディープな趣のある1本の通りが
手招きしていた。
半ば操られるようにエレベータに乗り込むとゴンドラは奈落の底を目指してまっすぐ落ちて行った。
その飲み屋街は南に200mほど伸びていた。途中いくつか横道があったが段差なんかが店の前にあったので
脇には逸れず、終点まで行って折り返してくる。
何軒か大衆居酒屋が営業していたが、定食とか丼ぶりのようなランチメニューがなかった。
まだ日が高いというのに、すでに本気メニューでの営業のようだ。
吉田類がクローリングしていても全くおかしくない。
意を決していちばん客が入っている店に足を踏み入れる。
15人ばかりの客の構成は半数が常連、半数がサラリーマンか一見客(風ないでたち)。
本日の献立は電気ブランのソーダ割り、レバ刺、
もつ煮。
相席の向かいに座るご常連と取り留めの
ない話をしながら、電気ブランをすすると何だか
現実味が失せてゆく。
ご常連が店員を呼び止め、空いたグラスを指してリピート注文。「ここは焼き鳥が旨ぇんだよ」と教えてくれる。
先行している場所から早くこっちへ来いと呼んでいる風にも聞こえる。
生ぬるく淀んだ午後の空気のなか、もうここで墜ちてしまってもいいかという衝動を抑え「先を急ぐので」と
辞し、グラスに残った電気ブランを飲み干す。
そうマップ作りはまだ始まったばかり。
次の街を目指すため、再び駅の改札をくぐるのだ。そしてそのためにまずはあの車椅子天国のデッキへと
上がらなくてはならない。
滑車が巻きあげる蜘蛛の糸にぶら下がっているゴンドラに乗って。
