海と山、時々きもの -6ページ目

海と山、時々きもの

ダイビング記録+きもの試行錯誤の覚書。…だったはずなのに最近は山歩きの記録簿と化しつつある。
23年秋から山のない国に滞在中のため山歩き頻度は低下中。

メンヒから下山して宿に帰ってきて改めて怪我を確認してみた。

両脚+足は打ち身が結構ある。
一番ひどく見えるのは左膝上で赤黒く広範囲に内出血してた。
右膝下も広範に青く内出血しててやや腫れている。
右膝は擦り傷もあったけど、不思議なのは膝に擦り傷があるのにサポートタイツとパンツ(モンチュラエクスカリバー)は無傷なこと。膝が弱いのか布が強いのか。

脚の側面や裏側、お尻の頬っぺたにも青く内出血してる箇所がある。
米俵ローリングしたときにまんべんなく打ったんだな、という印象。

右足首はたぶんひねって軽く捻挫したと思われる。足首が少し腫れている。
ただ、骨に異常はなさそうでこれは心底ほっとした。

昔学生の頃に左足の甲の外側に5㎜くらいヒビが入ったことがあるから骨に異常があった場合の痛みや腫れ具合はなんとなくわかる。
今回の足首はそこまでじゃない。
右手の小指も突き指して変色+すごいおデブになっていたけどこれも骨に異常はなさそう。

あと、右手首の外側を打ったらしく軽く内出血してる。

不思議なのは左腕+左手はほぼ無傷だったこと。

どういう転がり方をしたんだろうか?

ユングフラウヨッホの駅でトイレに入ったときに気づいていたけど、顔は左目の目尻の下を赤く内出血してた。
宿では気づかなかったけど翌々日に家に帰ってきたときに左目の下全体が薄っすら青緑になってたのに気づいたので、やっぱり打ったんだろうなと思う。
ただ不思議なことにかけていたはずのサングラスは無傷だった。
どういう衝撃の加わり方をしたんだろうか。

左のおでこあたりがちょっと痛い気もしたんだけど、変色はないしこれはシロッコ様様だと改めて感謝。

あと、謎に首が痛かった。首の付け根辺りが両側痛い。
どんくらい痛いかというと、あおむけの状態から体を起こそうとすると首が痛くて体を起こせないくらい痛い。
起き上がる時って腹筋だけじゃなく首の筋肉を結構使うんですね、というのを初めて知った。
ただ変色などは特になかったのでこれは打ったというよりも筋肉痛?あるいはロープを変なかけ方していたせいなのかな、と思う。

当日の夜は、(落ちた)、という動揺のせいか、帰りの雷鳴の中の下山が本当に怖かったせいか、殆ど寝られなかった。
小指と足首も痛かったし、そのせいなのかなんか熱っぽくもあった。

1週間経つ今、体の打ち身と小指+足首以外は不調はない。
目の下の内出血は消えた。

足首は寝起きは結構痛いし、小指も机の角にひっかけたりすると「いったああ」と声が出るくらいには痛いのがやや気になるけど。

全体として軽傷に済んだのは本当にラッキーだったなと思う。

で、「なんでこんなことになってしまったのか」とこの1週間色々と自問していた。

あそこで落ちた原因は雷が鳴っていて焦った、ということもあるけど、まずはそもそも自分の岩登りスキルが未熟だった、ということがあると思う。

岩がはがれたとかそういう不可抗力ではない。
単純に足を置く場所をたぶんミスって体重移動もミスったから足が滑って落ちた。

例えどんなに焦っていようとちゃんとした岩登りスキルがあればきちんとした昇り降りができたのではないだろうか。

自分が体力がなく鈍足のヘタレだし技術もないということは十分認識していたつもり。
岩場のクライミング経験がないということも認識していた(だからメンヒが不安だった。)

ただ、認識はしていたものの、そのほぼ経験値ゼロの状態で、結構な分量でその「岩場のクライミング」が発生するメンヒをひとりで登るということのリスクをきちんと把握できていなかったかもしれない。

メンヒを舐めていたつもりはないし不安も実際にあったんだけど、もしかしたら動画やyamapを見て「岩場のクライミングといってもそんなに難しくなさそう」と楽観的な気持ちもあったかもしれない。

コスミックリッジやエギーユマルブレを登った事で経験値を得た気になっていたのかもしれない。
ガイドさんにロープでつながれて指示されながら動いただけなのに(しかもエギーユマルブレは自力で上り下りできず荷物のように降ろされた所もあった)。

もう一つはやっぱり、自分の登る遅さと天気予報を加味してきちんとした山行計画を立てられなかったことかなと思う。だから天候悪化の中降りる羽目になり焦ってしまった。

メンヒの登山はユングフラウヨッホからどんなにゆっくり登っても3時間、という色々な記録をそのまま鵜呑みにしていた。
普通の山を登るにも人より遅くかつ岩場のクライミング経験(ルートファインディングを含めて)のほぼない私は4時間は見ておくべきだった。
実際、引き返したリッジの途中まででたぶん3時間15分くらいかかっている。

これはgoproで記録してた岩場を登る時にもたもた手がかり足掛かりを探している自分。
たぶん普通の人ならさっさと登れる岩場だと思う。

 

ここも普通の人ならさっさと進めてそうだけど、私は怖くていったん手袋を外して素手で岩を掴みかえている。

 

岩場の登り降りはいちいちこんな調子だったので人よりだいぶ時間がかかっていると思う。


そして雷予報をもっと真剣に捉えるべきだった。

参照した天気予報サイトの複数で雷予報が出ていたことをもっと真剣に危機感もって考えるべきだったし、予報が14時から天気悪化だったとして、実際に14時きっかりに悪化開始するわけではない、という当たり前のことを、前は認識していたはずのことを今回はきちんと考えられていなかった。
前も書いたけど、登りたい気持ちが先行し過ぎて自分に都合の悪い情報をシャットアウトしていた気がする。

8時半に出発して登り3時間だからまぁ天気が悪化する14時前には帰ってこられるだろう、などと考えていたけど、私のような鈍足が3時間で登れる訳がないということをもっと考えるべきだった。

そもそも山行計画を取りやめるか、雲の様子をもっとよく見て早めに引き返すか、グリンデルワルトでのホテル代一泊分(200スイスフラン超)を無駄にしてでもメンヒヒュッテに予約を入れ前泊して早朝からスタートして午前中に帰着できるようすべきだった。

後細かい反省点を挙げると、とりあえずgpsの軌跡があれば来た道は戻れると思っていたのもgpsを過信し過ぎだと思うし、懸垂下降の準備ものんびり写真撮りながらやるのではなくてさっさと降りるべきだったし、取りつきに辿り着いたときに雷鳴がやんでいたからといって休憩したり怪我の点検をしたりするのではなく、どんだけ疲れていたとしても必死で撤収準備して急いでユングフラウヨッホに向かうべきだったとも思う。

…あんまりうまく纏められなかったけど、以上が反省点。

メンヒはずっと挑戦してみたかった山で、一人で手がかり足掛かりを探しながら登るのは思ったよりもとても楽しかった。

景色も素晴らしかったし見たかった頂上に続く道も見られた。

やってみたかった懸垂下降も出来た(とても楽しかった)。

でも満足した、という言葉で締め括れないのはこの下山時のやらかしのせい。

軽傷で済んだことを神様とご先祖様とシロッコに感謝して、反省を次に活かして登ろうと思う。

唯一後から登ってきたガイドパーティが頂上に向かうのを眺めながら少しだけ齧ったプロテインバーの残りをザックにしまい、セルフビレイを外して下山開始。


この時点でたぶん12時過ぎだったと思う。

雲が厚くなってきている、早く降りたいな、とは思っていた。


ただこの時点でそこまで危機感はなかった。

この雪の急登は皆普通に前向きで降りてたけどチキンな私は念のためと思って途中までバックステップで降りた。


これも今思えば反省点。
雪の状態は悪くなかったので気を付けて普通に前向きに降りればよかった。
その方が早く降りられた。

降りてる途中で嫌な雲だな、早く降りなきゃ、と思う。


…思ったはずなのに私はここで、ちょっと怖いしせっかくロープ持ってきたんだから懸垂下降試してみるか、などと思ってしまった。

いや、早く降りろよ、

 

と今なら思う。

迫る危機に気づかず呑気に人生初の懸垂下降にわくわくしながらセルフビレイを取り


ロープを準備し


捌いて

 

末端処理し、


降りた。

 

おお、降りられた、と感動。

懸垂下降、楽しい。
ロープの長さがあまりまくってるしせっかくだからこのまま次の岩も降りるか、とそのままロープを引っ張って懸垂下降。


いや、早く降りろよ。

とほんとに思う。


私がもたもた懸垂下降し終わってロープをしまっている間に上から下ってきたガイドパーティはさっさと下って行った。


このあたりで周りの雲の近づいてきかたをみて、初めてちょっと焦りが生まれた。


これはあかん、早く降りよう。


ロープをしまったら次また取り出すの面倒くさいかな、と思って捌いて束ねたロープを首にかけて腰ベルトで固定する、とどう考えても違いそうな自己流で固定し急ぎ足で下山再開。


で、この辺りからだったと思うんだけど、雷鳴が聞こえ始めた。


これは、あかん、となった。

視界不良も一人なことも怖くはない。

落ち着いて来た道を探して引き返せばいい。

 

でも雷は怖い。
避けようがない。

雷鳴と前後してガスが急速に濃くなっていって、そしていきなりものすごい勢いで雹が斜めから叩きつけるように降り始めた。

ここまで私は上半身はミレーのアミアミ+モンチュラの冬用マグリア+パタゴニアのR1フーディ、という装備で降りてたんだけど、これはあかん、となってザックを下ろし急いでマムートのハードシェルを取り出して羽織って再び下山再開。

最初前方に見えていたガイドパーティはガスって一瞬で見えなくなった。


視界が数mになってしまい心臓がばくばくしてきたけど、落ち着け、足元に注意して降りろ、と自分に言い聞かせる。
GPSを確認しつつ来た道を戻ればいいだけ。

ただ、(落ち着いて降りなきゃ)と思いつつ雷鳴がこわい。結構近くに聞こえる。
最初は音だけだったけど、一回、ぴかっと光ってその後すぐ「ごろごろ」と聞こえた時は心臓がきゅっとなるかと思った。

雹はいつの間にか雪に変わって天気予報通りsnow showerになっていた。

この辺りの記憶はちょっと曖昧で、焦りまくっていたことと、とにかく必死で白いガスの中、降りれそうな岩場のルートを探しまくっていた記憶しかない。

だからどのあたりでどれくらいの岩場かも忘れたんだけど、結構大き目の一枚岩(だったと思う)を降りようとして右足をかけて次に左足を下ろそうとしたら、右足が滑って体が傾き、あっと思った。

ここら辺も記憶が曖昧なんだけど、たぶん体が右に傾いて(やばい)と思った次の時には横倒しに地面にぶつかったと思われる大きな衝撃が来て、でも体がそこで止まらず米俵のように横向にごろごろと回転しながら転がり落ちた。

転がってる間は自分にはどうすることもできなかったけど、幸い回転はすぐに止まった。

落ちた瞬間最初にたぶん体の右側、特に右足に結構な衝撃と痛み、次に左顔面に結構な衝撃と痛みが来て、転がる米俵状態の時は全身が痛かった記憶だけはうっすらある。

回転が止まってすぐに体を起こそうと思って動けない、となり焦ったけどたぶん背負ったロープとザックのせいで体が変な風に固まっていただけだった。
ザックのベルトを外してそんなに急な斜面じゃないのを確認してザックから腕を抜いて、おそるおそる立ち上がった。

右足と右手がめっちゃ痛い。
一歩踏み出して右足に力を入れてみたけど痛いけど歩ける。
左足は無事。


歩ける、とわかってちょっとだけほっとした。

私が止まったのはそんなに急じゃないガレ場の斜面だった。

落下箇所に目を凝らそうとしてみたけどガスと降り続く雪で落ちた岩の上は見えない。
でもたぶんそんなに大きな岩じゃなかったので、せいぜい2mくらい落下して地面で体を打った後止まらなくてガレ場を数m米俵ローリングしただけだと思う。

2mくらい上にペツルのピッケルが突き刺さってるのが見えた。あっという間に雪で白くなっていく。

とりあえずあれを取り戻さないと、と思って、よろよろと這い上がり、ピッケルを掴む。掴んだらほっとした。

左手でピッケルは握れるけど右手でピッケルは握れない。小指がやばいし掌が痛いので力が入らない。

ザックの所まで戻る時も右足が痛い。
そして雷鳴はまだやまない。早く降りなければならない。

でも自分でも動揺しまくっているのがわかったので、とりあえず落ち着こう、と思った。
なんか昔読んだ山と渓谷で、怪我したときだったか遭難しかかった時は「いったん飲み物でも飲んで落ち着け」みたいなことが書いてあった気がする(気のせいだったらすみません)。

snow showerに打たれながらザックを開け、サーマスの山専ボトルでお湯を飲んだ。
温かいお湯が胃に入ると、ちょっとだけ確かに落ち着いた気がした。

ただたぶんやっぱり動揺しまくっていたせいか飲み終わった後中蓋をきちんと閉めなかったようで、取りつきまで戻った後山専ボトルを取り出したらお湯がこぼれ出てきた。

右足と右手がめっちゃ痛い。
でも降りなければならない。

ロープが邪魔過ぎたけど格納する暇も惜しく、再び首掛け→ザックの腰ベルトで固定、という急場しのぎスタイルで下山再開。

ピッケルを握りしめ、雷鳴の中を一人歩く。

右足にあんまり力が入れられないせいか、焦っているせいか、新雪の下のガレガレの石に右足を取られて何度も尻餅をついた。
何度目かの尻餅の後、右足のアイゼンを喪失していることに気づいた。
たぶん落ちて転がったときに外れたんだと思う。

でも申し訳ないけど雷の中もう探しに戻る気力・体力はない。
ここからは別にアイゼンなくても降りられるはず。

焦るな、落ち着け、と思って撮った写真。


もう大きな岩場はなかったような気がするけど、広いガレ場は視界不良の際は道がとてもわかりにくい。

yamapを確認すると、どうやらちょっと行きとずれていたので、軌道修正する。



ひたすら必死で降り続けていたら、いつの間にか雷鳴がやんでいるのに気づいた。
ほっとして撮った写真。たぶん気象計のあたりだと思う。


雪も視界不良も相変わらずだけど、雷がないだけで心の余裕が桁違いだった。

GPSを見ながら進む。

人の声が聞こえた、と思ったらさっきのガイドパーティのお客さんの一人が岩の下から一般道に向けて走っていくのが見えて、ああ、地面だ、と思ったら一気に力が抜けそうになった。

懸垂下降の準備をする。
雷がないしゴールはすぐそこに見えているので、心の余裕がある。


左足だけのアイゼンは逆に降りにくい気もしたけど、これとピッケルだけが命綱だと思って結局怖くて最後まで外せなかった。

一瞬で岩を降りたら金属梯子。
ここは右手でそのままロープを掴みながら梯子を下りた。
懸垂下降すると右足に衝撃が走って痛い。


無事地面に到着。


到着したらどっと疲れてロープを回収したら取りつきの岩にちょっとの間座り込んでしまった。

無事に地面に降りられた。
良かった。。。

ここで初めて怪我の状態を確認してみようと思った。
右手はとりあえず小指が痛くて親指の下あたりも痛い。
ここで見た時は(左手より若干腫れてるかな?)くらいだけど、宿に帰ってから確認したら左手の1.5倍くらいデブになっていた。


これは次の日の右手小指。左手の1.5倍サイズ。

 


右足は靴を脱がないとどうなってるかわからないけどとりあえず歩けるのであれば問題ない。

ヘルメットを外してみた。左後ろが凹んでいる。


前も左が凹んでいる気がする。


これは後日確認したけど、前は亀裂が入っていた。


シロッコ、ほんとに有難う。

私の頭を守ってくれて。
君がいなかったら私の頭はかち割れはしなくても亀裂は入っていただろう。

シロッコに感謝し、お湯を一口飲んで(中蓋を閉め忘れていたのでお湯がこぼれ出た)、アイゼンを外しピッケルをザックにつけてからロープもしまった。


ロープは50mロープでハシゴの上の岩にある支点から地面まで届く。
ただ個人的にはハシゴを使えばいいと思うしメンヒに50mロープはちょっと長すぎていらないかも、と思った(岩で落ちるような下手野郎の感想なのであてにはならないかもしれない)。



一般道に向けて歩き出す。視界も雪もさっきよりだいぶまし。


誰もいない。当たり前か。さっきまで雷鳴ってたし。

雷が収まっていなかったらここから5分というメンヒヒュッテにダッシュし扉を叩いて雨宿りならぬ雷宿りを願い出ようと思っていたけど、もう駅に帰ろう、帰りたい、と思った。

結果的にこの後駅に着くまで雷鳴を聞くことはなかったけど、結果的に幸運だっただけで正しい判断ではなかったかもしれない。
天気予報では雷マークは17時台もついていたから。

ただこの時の私はとりあえずもう早く帰りたい一心だった。

雷が鳴っていたときよりもガスは取れ雪も小降りだったけど、一般道にも全く人影は見えず、ユングフラウヨッホの出口ドアに帰着するまですれ違ったのはヒュッテに行くと思われる登山者1組だけだった。

 

出口ドアの手前まで来て道にロープが張ってあって「?」となる。
振り返ったところ。
朝は道にこんなものはなかった。

 


来た道を戻ってきたつもりだけどなんか変な横道に入ってしまっただろうか、と思った。
でもまた、朝はなかったはずのフェンスが出現した。


「あれ?」と思いつつそのまま進んでいたら、出口ドアだったはずのものが閉まっているのがみえて心臓が一瞬止まった。


もし鍵がかかっていたらどうしよう、叩けば誰か出てきてくれるのだろうか、と心臓ばくばくだったけど取っ手を回したら普通にドアは開いて心底ほっとした。

なんか朝はなかったゲートがある。

 

仕方ないので乗り越えさせて頂く。


 

無事に帰ってきたんだ。。。

とりあえず一刻も早く駅に行きたい、と思ったけど、順路みたいなものに逆らって朝来た道を戻っていいのかわからなかったので、とりあえず順路通りに進んだ。

 

なんか途中にあった展示をとりあえず撮ってみたけど疲れすぎてほっとし過ぎて全く心に入らなかった。



とりあえず無事に帰れた。。。

順路は残り55分、の表示を見て、(55分ももう歩けないかも)と絶望してたらice palace?みたいな展示物の前で駅に向かう横道の表示を見つけて無事駅に帰着。

帰りは16時17分発の電車を予約していた。
行く前は(時間余ったらどう潰そうかな)と思っていたけど、結果的にそんなに待たず電車に乗れた。

電車の中で切符確認に来た車掌さんにチョコレートを貰う。

「ご訪問有難うございます」チョコ。


私を無事に帰してくれて有難うございます。

 

ベルナーアルプスの神様に心から感謝。


生きてるって素晴らしい、と思いながら痛む体を引きずりグリンデルワルトに帰ることができた。

 

反省点はまた改めて書こうかなと思う。

19日、朝6時47分のグリンデルワルト駅発の始発電車に乗ろうとしたら車両故障で動かない、という幸先悪いスタートを切る。
次の電車は7時11分発だという。

グリンデルワルトターミナル駅で乗り換えて7時15分発のケーブルカーに乗らなきゃ、と思っていたので大変焦り、結局ダッシュで徒歩で行ったけどその途中で代替バス(?)に抜かされたし、ついてみてわかったんだけどケーブルカーなので15分きっちりにつく必要はなかった。


無駄に体力を消耗し一人だけ汗だくになったけど、とりあえずなんとか予定通り始発の便でユングフラウ到着。

始発の電車に乗ると8時11分にユングフラウヨッホ駅に着く。
ユングフラウ駅で出口がわからなかったらどうしよう、と思ってたけど一応わかりやすかった(氷河方面の出口に出ればいい)。


出口を出たところ。

この時点で8時半過ぎくらいだったと思う。

 

 

記録を読んでると高度順応でゆっくりしてから登山開始する人もいるようだったけど、今日は午後から天気が悪化するからできるだけ早く出発したい。

準備してたらスタートが遅くなり、私は始発電車組の中で一番最後だった。
この日は同じ始発電車組の人が3,4組先行してただろうか。たぶんメンヒヒュッテに泊まったのだろうと思うパーティも2組くらいいた。

取りつきまでの緩やかな坂道すらすぐに息が切れだして、観光客のフランス人のおっちゃんに軽快に追い抜かされ、私大丈夫かな、という気持ちになる。


あれを登るんだなぁ。
わくわくする気持ちと不安が半々くらい。


もしリッジでミスってこっち側に落ちたらあのクレヴァスに吸い込まれて終了、と。


懸念点の一つだった取りつきは間違えようもなかった。準備している人が見える。



トレースも明瞭。


というか金属梯子が一般道から目視できる。

 

 

 

取りつきに向かって一般道から逸れながら、先行者の登り方をパクろうと姑息にじっと眺めていた。
金属梯子を登り終わったら1mくらい右手にあるクラックみたいな所を登るんだな。

頭の中で先行の人の登り方を繰り返しながらハシゴにたどりつき、ストックをしまった。

ちなみに開始からこの時点まで私はアイゼンをつけなかった。

氷河を歩くんだから本来はつけたほうがいいのかもしれない。

ただ私はアイゼンをつけるとすぐにばてるので、少しでも早く取りつきに辿り着いて登山を開始したかった。

金属ばしごを登り終わったところ。上の方にあるハシゴはロープが短い場合は下山時に懸垂下降支点として使えるのかもしれない(ここまで来たらハシゴを降りたほうが早いと個人的には思うけど)。


はしご登り終わり地点から1mくらい右に移動し岩を見上げる。

上に懸垂下降支点が見える。

ロープが長い(私は今回50mを持参)場合は、この懸垂下降支点から一気に地面まで下降できる。


先行のガイドパーティはさっきこの懸垂支点から左に行っていた気がしたので私もパクって左に行ってみる。

確かにうっすら道がある気がする。


ガレガレしている。



とりあえず歩きやすそうな所を見つけて登っていく。
この上の写真の中央からやや右上寄りに懸垂下降支点が1つ、さらにその上に銀色の気象計(?)が見えるので目的地は明瞭。

懸垂下降支点。

上から既に1パーティ下山してきている。たぶんメンヒヒュッテの宿泊者だろう。

下山者の右奥の方に気象計(?)が小さく見える。


気象計は思ったよりも遠くて、たどり着くまでに結構色々歩いた。

雪がある所はトレースを盗む。


岩場はよくわかんないけどとりあえず歩きやすそうなところを歩く。


トレースがわかりやすいところもある。


振り返ったところ。視界良いってほんと素晴らしいんだな、と下山時実感した。


こういう岩場はどう登るのかわからないので、とりあえず登れそうなところを自分なりに探しながら登る。
特にルートの目印のペイントが合ったりするわけではない。私が気づかなかっただけかもしれないけど。


ところどころで先行者の足跡を発見すると、ルート間違っていなさそうで安心する。


ようやく近くに見えてきた気象計。

ほんと意外に遠かった。


この気象計から先も、アイゼンをつけていない先行者が多かったけど、ビビりの私はここでアイゼンを装着し、ピッケルはザックから外して背中とザックの間に挟んだ。

振り返るとほんと素晴らしい景色。

 

 

岩登り、どうなるかと思ったけど今のところ楽しい。登ってる最中に写真を撮る余裕もあった(この頃は)。


ここら辺は私のようなクライミングセンスゼロの人間でも難しくなかった。


…と思ったけど、下山時に私が岩場から滑り落ちて米俵のように転がったのはたぶんこの辺りなので、あまり大きなことは言えない。。。


この岩場を過ぎるとちょっと雪エリアの分量が多くなってくる。


こういうリッジはまだ怖くはない。そこまで尖ってないし短いので。


この辺りも別に普通。


この辺りも怖くはない。
楽しい。あれがリッジ手前かな(そうであってくれ)とぜえはあしながら思う。


懸垂下降支点は色んな所にあって、ここでも上の方に1つ見える。


下りる人達を待つ。
ここは登るのは楽しそうだけど降りるのはちょい怖そう。


さらにもう一段登るとたぶんここで岩場が終了。


後は雪の急登。


ひいこら言いながら休み休み登る。
景色が最高だ。


ついにリッジ手前までたどり着いた。
私が遅すぎて一緒の電車で来た人達はこの時点で全員下りに入っていた。

 

 

これが見たかった。


最高過ぎる。

 

リッジは思ったよりも長い、というのが見た感想。
果たして行けるのだろうか。風は予報通り微風だけど。

リッジを進み始めて最初のうちは良かった。

何故ならまだ右手に壁というか雪面がある。雪庇だったら、とちょっと怖いけど。


ここら辺はまだよかった。

 

でもこの辺りから、あ、ちょっともう景色見られない、と思った。
両端がほんとに切れ落ちている。


左に落ちたらさっきのクレヴァスに吸い込まれておわり。

右も視界の端でしかとらえられないけど左以上に落下距離がある気がする。

あ、無理かも、と思いつつも何とか進んでいたけど、足が竦んで変に力が入ったのか、左足の指が攣り始めた。

やばい、指が攣り始めた。でも軽度だからまだ歩ける気はする。
ここまで来たんだから山頂まで行ってみたい。山頂はすぐそこにみえてる。


ただここから先山頂までも同じような尖ったリッジが続いている。
この先進んで足がどうしようもなく攣ったら?
途中で動けなくなったら?


迷ったのはほんの少しで、チキンな私はここで「うん、やめよう」となった。
もう私は十分頑張った。景色は最高だしもうここでいい。

引き返すためUターンしようと思ったけどUターンも怖すぎてしばらく立ちすくんでしまった。

しかしいつまでもこのリッジ上で棒立ちしてても何が変わるわけでもないので勇気を振り絞ってゆっくりゆっくり回れ右する。
たぶんすごいへっぴり腰で能のごとき振り向き速度だったと思う。

なんとか振り向きに成功し、足元以外何も見ないようにして引き返す。

しばらくして左側に雪面が出てきてようやくほっと一息ついた。


ここからは怖くない。

 

ここで携帯を取り出してYamapを眺めて、ほんとに後一歩だったんだなぁ。。。と思った。

でも私には無理だ。怖すぎる。

 

まぁここまででも十分楽しかったしきれいな景色を楽しめた。私にはこれで十分だ。

 


ようやくリッジの開始地点まで引き返してきて、長い鉄柱にセルフビレイを取ってようやく一息ついた。
ザックを下ろしてサーモスの山ボトルからお湯を飲んで休憩。

これはユングフラウ展望台とは反対側を見下ろしたところ。


こっちにも氷河をゆく豆粒のような人影が見える。


私が休憩を開始したころに一組ガイドパーティが上がってきた。
たぶん次の電車で来たんだと思うけど、この日私の後から登ってきたのはこのパーティだけだった。

最後尾のおじさんのザックがおんなじInstinct45で、お互い「このザック、最高だよね」とサムズアップ。


プロテインバーを齧りながらおじさん達を見送る。


今思えばそんな悠長なことをしてないでさっさと下山開始すべきだった。

ここからは地獄の下山だった。

今回、登る機会は19日と20日の2日あった。
1週間前から一日4回くらい天気予報サイトをチェックしまくっていた。

チェックしたのはいつも使っているWindyと


googleでmountain weather forecast monchと打ち込んで出ていた以下の2つ。

mountain forecast


meteo exploration


上の3つの予報は16日時点のもの。
windyの方は気温がちょっとおかしいように思えた。

気温に関しては他の2つが正しそうに思ったが、いずれにせよそんなに寒くはなさそう。

3つに共通していたのは、19日より20日の方がまだちょっと天気が良さそうということ。
あと、3つのうち2つが土曜日に雷マークが出ていることが気になった。

これは登るなら20日だろうか。
ただmountain forecastを見ると19日午前はほぼ無風状態なのが心惹かれる。

エギーユマルブレの時強風の中リッジを渡るのが怖かったので、メンヒのあのリッジを歩くなら風はできるだけ弱い方がいい。

まぁ後数日あるし天気予報はまだ変わりうる、と思いながら引き続き天気予報をチェックし続けた。

グリンデルワルトに到着した際の天気予報はこれ。


 

windyが11時から雷マークが出ているのが嫌な感じがする。

ただmountainforecastは雷マークは出ていない。
風は20日より19日の方が穏やかそうだ。

もう一つ別の天気予報サイト。

天気は19日の方が悪そう。ただ風は19日の方が穏やかそう。



寝る前の予報はほぼかわらなかったけど、windyの雷マークは14時頃からにかわっていた。



今冷静に考えてみると全ての予報は「19日よりも20日の方が登るのに適してるのでは?」と言っていたと思う。


でも私は「明日起きて天気予報見て決めるか」と思いつつ19日に登る方に気持ちが傾きすぎていた。

20日の方が天気良さそうに見える、20日も雷予報だけど雷の時間は19日より遅い。

でも天気予報は急に変わる可能性もあるし、もし19日見送って20日に天候悪化が早まって登れなかったらきっと19日登らなかったことを後悔する気がする。
そして19日の方が風が弱そうに見えるのに心惹かれる。

19日は午後からsnow showerと書いてあるけど、そんなに積雪はしなそうだし始発の電車で登れば8時半過ぎには登山スタートして12時前には山頂について下山開始できる。
snow showerで視界が悪い中リッジを進むのは怖いけどリッジさえ過ぎてしまえばGPSもあるし戻れるだろう。

雷は気になるけど。。。14時までに帰ってこられるようにすればいいだろう。


今こうやって書き出してみても我ながら

何故それで行けると思った???

と思うものばかり。

風については天気予報のうち半分は19日が弱い予報だったけどもう半分は20日の方が弱い予報だった(私は都合よくそれを無理した)。

snow showerの中リッジを進むのは無理だけど岩場を降りるのだって私には無理に決まってる。初めての場所で苦手なクライミングなのに。

 

「そんなに積雪はしなさそう」と何故何の根拠もなく思ったのか。

参照した天気予報サイトのうち1つは積雪27㎝の予報だったのに。

一番肝心の雷については、何故真剣に怖がらなかったのか今でもわからない。
「14時までに帰ってこられるようにすればいい」、ではない。

以前自分でも書いてた。

「予報が12時から雪だったとしても雪はいきなり12時に降り出すわけじゃない」

以前はそう思って早めに撤退したのに今回はそう思うことができなかった。
山行中に雷に合うことを私は一番怖いと思っていたはずなんだけど、何故か今回は雷予報を真剣に捉えられていなかった。


後、そもそもの反省として、自分の体力と登る遅さをきちんと組み込んで山行計画を立てられていなかった。

メンヒを登るのは通常3時間という。
でも私は人より登るの遅いし岩場でルートファインディングきちんとできるかもわからないし4時間はかかる、とみておくべきだった。
そして岩場を降りるのは普通の山を下りるのと違って登りと同じくらい(私は)時間がかかる、だから往復8時間はかかるかもしれない、それがこの天気予報の中で行けるのか、ということを考えるべきだった。

今思えば色々思考が明らかにおかしいんだけど、この時は全くおかしいことに気づけなかった。


せっかく来たんだから登れる機会があるうちに登りたい、19日に登ってしまいたい、という思いが強すぎて、それに合わせて自分の都合の良い情報だけを拾っていたんだと思う。
 

 

19日当日の朝の天気予報はこれ。

 

自分の都合の良い情報だけ拾っている頭で踏みとどまれるはずもなく、うきうきで支度して6時47分グリンデルワルト駅発の始発電車に乗りに向かった。

自分が最初にメンヒ(4,107m)に興味を持ったのはたぶん1年以上前だと思う。


そのころはまだ、せっかくヨーロッパに来たんだから「ヨーロッパといえばモンブラン」だろうしモンブラン登ってみようかな、でも私のような千年に一度のヘタレチキンに登れるんだろうか、とりあえずなんかめっちゃしんどそうだけど。。。といろいろyoutubeで三山縦走ルートの動画を探して眺めていたら、youtube君が「こんな山もあるで」とお薦めに出してくれたのがMonch(メンヒ)の動画だった。oはドイツ語のウムラウトのo。

サムネイルのこの素敵な稜線に視線が釘付けになった。


こっちはちょっと見てるだけで手汗がすごかった。。。


怖いけど、でもこの青空を登っていくような最後の景色を見てみたい、道中は岩場もあって楽しそう、ここ、登ってみたいな、と思い始めた。

日本語で「メンヒ」と検索すると結構Yamapやyamarecoをはじめ記録が色々と出てくるので割と人の多いルートっぽい。
記録を読んだりyoutubeの色んな記録動画を見てたら、ますます登りたくなった。


まずアプローチが簡単なのが良い。
ユングフラウヨッホまで登山電車でびゅんと上がってそこから取りつきまで40分歩くだけ。

最高だ。

登りは3時間、標高差は600mちょっとというのも体力に自信のない自分には良い。
モンブランの三山縦走ルートは往復の時間の長さ(往復11時間)に尻込みしていたので。

懸垂下降がある(場合が多い)、というのも私の中ではポイント高い。
蓮華岳丸石尾根でできなかった懸垂下降、実践でやってみたい。
ロープもちゃんと日本から持ってきている。

簡単に日帰りでアクセスできてちょっとスリリングな岩場歩きや懸垂下降が出来るって最高なのでは?

と行ってみたい思いがどんどん膨らんでいき、こちらにいる間にここは是非行こう、となった。

山に登る一番の目的はきれいな景色を眺めること。ずっとクライミングで這い上るような登山は好きじゃないけど、ところどころ三点支持で登るような岩場のある山は大好物」という自分の好みにとても合致していた。

メンヒについてはガイド登山は最初から考えなかった。
やっぱり私は一人で登るのが好きだ。

技術も根性もない奴がこんな偉そうなこと言う資格はないのわかっているけど。
こっちでも日本と同じように一人でのんびり登りたい、と思った。


タトランスカロムニツァやモンテペルディドのガイド登山があんまりいい思い出じゃなかったこと、楽しかったシャモニーのガイド協会の講習やツアーもロープでつながれて歩くのは正直好きじゃなかった(安全確保のためなのはわかってます技術もないのにごめんなさい)ことも、「ひとりで登りたい」という思いを強くした。


ただ、一人で行くことに不安もあった。

不安①クレヴァスに落っこちないか
シャモニー周辺の氷河歩きと違って、メンヒ取りつきまでは観光客向けの一般道(?)を歩き最後だけ取りつきに向かって氷河に踏み込むようだけど、そのとりつきまでの安全な道が見つけられるか、ということ。
人気のルートらしいので踏み跡があることに期待するしかないか、と思いつつ、yamapやヤマレコの他人の軌跡を見て、歩いても大丈夫そうなルートに目星をつけた。

不安②クライミングセンスゼロの私がメンヒの岩場を登れるのか
メンヒの岩場は2級ー3級程度、という表示をよく見かけたけど、クライミング経験がほぼない私はその「2級、3級程度」が自分に登れるのかどうかよくわからない。
動画で見ると簡単なような気もするし結構難しそうな気もする。
登りは良いけど下れるのだろうか。
懸垂下降支点は豊富にあるようだけど全部にあるわけじゃないだろう。
一人でこんな岩場を上り下りしたことのない私にルートファインディングがきちんとできて登り降りできるのだろうか、これが一番不安だった(この不安は結局的中した)。

不安③たぶん高所恐怖症の私にメンヒの最後のリッジが渡れるのか
今までの5年程度の登山経験でうすうす感じていたけど、私はたぶん高所恐怖症なんだと思う。

普通の岩場の登り降りとかは別にいいんだけど、両側に何にもない尖ったリッジは足が竦む。
6月のエギーユマルブレの後、あんな短いリッジでガイドに確保されてても足が竦んだのにあのメンヒの頂上手前の長いリッジを命綱なしで歩けるのだろうか、という不安は大きくなった。


ただ、この点はまぁ無理なら引き返せばいいか、とも思った(なので実際引き返したときにも別に悔しくはならなかった)。
山頂にはそんなに拘らない。

リッジ手前から、青空に向かって伸びていく白い道、あれが見られればそれでいい。
そこに行くだけでも十分楽しそう(実際楽しかった)。

不安④懸垂下降の実地経験がない
はるか昔に講習を受けたことはあるけど私には懸垂下降の実地経験がない。
唯一の機会は蓮華岳丸石尾根だったけど、撤退したので結局しないまま今に至る。
いきなり一人で懸垂下降するのは無謀だろうか、と思った。


ただこれはまぁ、なんとかするしかないか、とも思った。
誰にでも何事にも「初めて」はあるわけだし。
takemovieさんの動画を見まくり、行くまでの間に何度も家で風呂場の蛇口を支点に見立てて懸垂下降の練習やロープの捌き方の練習をした(蛇口ごめん)。

色々不安はあったけどできるだけ準備して、「無理はしない」と自分に言い聞かせながらグリンデルワルトに向かった。