3日目の記録でも少し書いたけど、これまでモンブラン三山縦走ルートの記録を読んだ際は、エギーユデュミディ展望台からのリッジ歩きが一番怖かった、と書いている人が結構いた。
シャモニーから帰ってきて以来三山縦走ルートの記録動画を幾つか見ているけど、動画でも結構怖そうにみえる。
ただ、今回自分が行った時は、途中までロープが設置されていた。
下の写真で右端から中央に向かって伸びているのがそれ。
すれ違いしやすくするためなのか、途中で二手に分かれているところもある。
ガイドさんには、片手は必ずロープをつかんで降りるように言われた。
少なくとも1年前までの複数のモンブラン登山動画ではこの手すりというかロープは登場していないように見える。
(違ってたらすみません)
これが、冬の間だけ設置されているのか、それとも事故防止のために最近になって設置されたものなのかはわからない。
結構細いところもあり、すれ違いには苦労する。
帰りに登っている時、上から降りてくるスキーヤーをよけようとして谷側に一歩踏み出したら足もとがちょっと崩れたけど、片手はロープをつかんでいたので特にひやりとはしなかった。
ロープがあるとなしとではだいぶ安心感が違う。
このロープが夏もあるのか。。。今年の夏、また来たいと思っているので、あると嬉しいんだけど果たしてどうなんだろう。
今回、シャモニーガイド協会主催の雪山教室3日間のコースに参加してどうだったか、と問われると、参加して良かった、と思う。
ただ、満足度100点中の100か、と問われると、何というか、一言で表現するのが難しい。
①言語面でのストレスが大きかった
難しい、と感じる一番大きな原因は、やはり言語面でのストレス。
英語コースだと思ってたら英語コースじゃなかった件。
ただ、これに関しては完全に私が悪くて、ガイド協会もガイドBも何にも悪くない。
まず、私は今回、「英語によるコース」だと思って参加したけど、1日目に帰ってコース概要をよく読み返してみたら「IFMGA English speaking mountain guiding service」と書いてあった。
要するに「ガイドが英語を喋れます」というだけで、「英語によるコース」とは一言も書いてない。
「英語コース」だと思ってたのは私の勝手な思い込み。
ガイドAもある程度英語は喋れたし、ガイドBはアメリカ人なので当然英語が母語。
なのでコース概要は何にも間違っていない。
次にコース説明がフランス語中心だったのは私以外の参加者が全員フランス語が喋れたからなので、ガイドがマジョリティに合わせるのも当然だろう。
あと、「フランス語わかる?」と聞かれて「ほぼ無理」と答えたのも悪かった。「ほぼ」の定義は人によってそれぞれだから。
私は「無理。一言もわからない」と答えておくべきだった。
英語による登山用語も触れるのは初めてなので全部理解できたかは怪しいけど、フランス語だと今喋っているのが地名なのか知らない単語なのかすらおぼつかないので、自分がこれからどういうルートを行くのかすらわからない、ガイドの指示すら聞き取れない、というのは激しくストレスだった。
一応頑張って聞き取ろうと神経を集中させるんだけど、そうすることでエネルギーを使うから、途中からは放棄してしまった。
でも、これも私が悪い。
私はもっと、「英語でも説明して」と要求すべきだった。
(私一人だけのために英語で説明を繰り返すのは皆の時間を無駄にしてしまう)などとチキンなことを思って黙るのではなく、「フランス語で言ったことを全て英語で復唱して」と最初からいうべきだった。
何故なら、私は他の参加者と同じ料金を払って参加しているのだからその権利がある。
あと、もし私が説明がわからないせいで事故ったりすればそれは他の参加者の迷惑にもなるんだから、むしろ英語での完全な説明を要求すべきだった。
だからこれは、勝手にチキってそれをせず、勝手にストレスを溜め込んでいた私が悪い。
②技術面でのニーズが合わなかった
これも別にシャモニーガイド協会もガイドABも全く悪くなく、単なる需給のミスマッチだと思うんだけど、「アイゼンとピッケル経験有」という参加者条件から想定していたよりは個人的な印象としてはちょっと易しかった。
スクリューの使い方とかカムの使い方とかは今回初体験だったので新鮮だったけど、1日目のアイスクライミング講習とかは冬に赤岳鉱泉で何度もやったしな、という個人的な感想。
後、自分にとっては使わない技術もあった。
2人で登る時の確保のためのロープの岩へのかけ方とかは2日目、3日目に色々教えてくれたけど、これは一人で登りたい私にとっては正直興味なかった。
もう一つ、少し残念だったのは、1日目のアイスクライミングやアイゼンの使い方の講習の時はさすがに色々足の置き方とか指導されたけど、2日目、3日目のコースの時はそれがなかった。
これはガイドさんの性質にもよるんだろうけど。
私は日本の雪山教室はミ〇〇ツ登山教室しか知らないけど、ここはいつ行っても、色々と細かく見てくれて指導してくれる印象がある。
赤岳鉱泉のアイスクライミング講習の時だけじゃなくて、2日目の実践山行の時も、足の置き方、アイゼンの爪の入れ方、少しでも楽な登り方、ピッケルの使い方など細かく声掛けしてくれる。
教え方がスパルタだ、という印象を持つ人もいるようだけど、私は特にそう思ったことはない。
教えてもらう立場なのだから多少厳しく言われようが当たり前だと思っているし、生死にかかわることなのでむしろ厳しく細かく色々教えてもらいたい。
今回、例えば2日目は雪が結構崩れやすくてエリックは登るのに難儀していたけど、おそらくミ〇ヤツ登山教室なら雪の蹴りこみ方とか指導してくれたんじゃないかな、と勝手に思ったりしていた。
あと、3日目のリッジ歩きが終わった後にガイドBや他の組に、歩き方がstableだった、と褒めてもらえたけど、これはミ〇〇ツで色々教えてもらってたことが活きたのかな、と思うし、ヨーロッパの山だからといって何かそこまで日本と違う特別な技術が必要な訳でもないのかもしれない、とちょっと自信にもなった。
(但し体力はゴミカス)
③ルートは最高だった
①、②もありつつ、でも今回参加してよかったな、と思うのはやっぱりこれが大きい。
特に2日目と3日目。
エギーユ・デュ・トゥールとコスミックリッジ。
どちらも、3000m超まで一気にケーブルカーで上がり、200m弱降りて氷河を歩き200mくらい登るだけ。
(コスミックリッジ自体は100mも登らないと思う。)
私は塔ノ岳を登るときですらいつも頭痛がするくらいの頭痛持ちなんだけど、今回何にも薬を服用せずでも頭痛が全くなかったのは、ルートがいずれも短時間ということが大きかったように思う。
2日目最後のエギーユ・ドゥ・ミディ展望台への登りでへろったくらいで、他はそこまでしんどく息が切れるようなところはなかった。
どちらも展望は最初から最後まで最高of最高だったし、眺めとルートという意味では「山で最重要視するのは眺め。しんどいのは嫌いだけどたまーに3点支持で登ったりするところが出てくるような、ちょっとわくわくする雪山登山がしたい」という自分のニーズに最高に合致するルートだった。
④総括
以上、今回色々書いたけど、参加して良かった。
もしシャモニーで冬の雪山教室を考えている人がいたらこれはぜひお薦めしたいと思う。
で、人様には薦めながらこんなこと言うのもあれだけど、私は次はこのルート(エギーユドトゥールとコスミックリッジ)を一人で行こうと思う。
今回改めて思ったけど、やっぱりロープにつながれて他の人のペースに合わせながら行く登山が自分はほんとに無理だ。
こんなこと思うのは、大変親切だったエリックやガイドBには申し訳ないけど。
3日目、帰りのエギーユ・ミディに向けた登りでロープに対するストレスがピークになって「取っていい?」と言った後(当然却下された)、エリックは何度も「幾らゆっくりでもいいから。ゆっくり行こう」と言ってくれたけど、言われれば言われるほど申し訳なくて自分が情けなくてストレスがうなぎ上りだった。
常に他人のペースを気にしながら、他人にかける迷惑を気にしながら登るのはほんとに無理。
「一人は推奨しない」と言ってくれたガイドBには申し訳ないけど、今回の教室でどういうルートかわかったし、ルート的にはどちらも一人でも行けると思う(途中の氷河でクレバスに落ちるリスクを除けば)。
だから来年か、再来年になるかわからないけど、今度は冬はシャモニーで1週間くらい過ごして雪稜を登ったりして雪遊びしたりしに行こう。
また行きます、アルプス。