南アルプス・ぶっつけ本番!南ア南部テン泊縦走(1日目:畑薙湖〜ウソッコ沢小屋〜横窪沢小屋) | 単独行者の山行録

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歩いた山々の記憶を詳らかに。
山行中心の備忘録。

今年こそは是が非でも。
コロナに倒れて悉く潰えた去年の夏の大型連休。
だからこそ、今年の夏は絶対に大きな山行を実行するつもりでいた。
例年通り8月上旬に希望休をたくさん入れて···っと。8月2日から6日にかけて首尾良く連休を取得。
6日は嫁との約束があるので万が一の予備日とし、期間は実質4日間。
今年に入ってまだ一度もテン泊山行していないのに、いきなり本番を迎えて大丈夫か···?
盛夏の長期山行で候補としてはやはり日本アルプスの高峰の縦走で、北アルプスの後立山や裏銀座、南アルプスの白峰南嶺、南部の高峰たち。
行きたい山は数あれど、今回選んだのは南アルプス南部の山々。
茶臼岳、上河内岳、聖岳、赤石岳、それに出来れば悪沢岳も登ろうという計画だ。
何故他の候補を差し置いて今回の山行を計画したかと言うと、実行に移すにはまたと無い千載一遇の機会だったから。
今年は早々に梅雨が明け、連日晴天が続いたお陰で登山道は乾いているだろう。
そう、南アルプス南部には私が超絶大嫌いなヤマビルの生息域で、特に今回起点とした畑薙湖周辺は被害報告が多い危険ゾーン。
それが理由で今までずっと躊躇っていたのだった。
だからこそ、これだけ晴れ間が続いて登山道が乾燥し、奴らが鳴りを潜めている年はまたと無い好機だった。

予約がとれない・・・
南アルプス南部の山域は知っての通り某企業様の社有地だ。
交通の便が劣悪を極める畑薙第一ダムまで入るのも一苦労だが、その更に先は送迎バスに頼らねばならない。
送迎バスを利用する条件は点在する山小屋に宿泊すること。(テント泊は☓。2000円も払ってるのに···)
これが不便な上に馬鹿高ぇんだ。何せ素泊まりで1万、食事ありで+三千、テン泊でも2千だからねぇ。
北アルプスとか八ヶ岳にも言えることだけど、いつから相場がこんなにおかしくなったんだ?
社有地にご厚意で入らせて頂く手前、あまり文句は言いたくないのだが・・・もう少し何とかなりませんかね?
特に送迎バスの利用条件はその日の体調や気分によって移動距離や計画そのものをコロコロ変えるフレキシブルな山行を是とする私のスタイルとは絶望的に相性が悪い。(その日までに所定の小屋に到達せねばならず、時間やルートが固定されてしまう)
ってかそもそも、泊まりたい小屋の予約がとれない。
どうしても一度は小屋泊しなければならないので、今回の山行を計画通り歩くには椹島へ下りるエスケープルート分岐の赤石岳手前の百間洞山の家か逆コースにする場合に絶妙な場所に位置する千枚小屋のどちらかに泊まる必要があったのだが···どちらも早々に満室。
こまめにキャンセル待ちを狙うものの、一向に空く気配がないので、仕方無しに悪沢岳手前の中岳避難小屋にしましたよ···(泣)
百間洞山の家の予約がとれず、中岳避難小屋を選択せざるを得なかったことで、赤石岳から椹島へのエスケープが使えなくなってしまうことに。(最悪小屋泊は諦めて赤石小屋でのテン泊も考慮。金は払っているのだから、送迎バスが使えないなんて事は無いだろう。多分。)

8月1日
あるぺん号に乗るため前夜竹橋の毎日新聞東京本社に集合。
秘境の大井川上流の畑薙第一ダムに行く手段としては毎日あるぺん号の他に静岡駅からのしずてつジャストライン(要予約・夏季限定)、路線バスとコミュニティーバス(静岡駅↔横沢↔白樺荘)があるものの、後者2つは不便な上に午後の到着となってしまうため、往路の交通手段はあるぺん号一択。
今回初めて竹橋を利用したが、これまでのクソな新宿西口の集合場所に比べてビル内部だけあって涼しいし、トイレやコンビニもあり全ての点で良かった。
大勢の登山者がいる中で畑薙第一ダム行きは私含めて8人ほど。
マイクロバスでの移動も悠々快適だった。

8月2日
沼平ゲートに着いたのは朝の6:30。
下車したのは私含めて2人のみで他の乗客は往路は送迎バスを利用するようだった。
準備運動をして沼平ゲートを出発。
今年に入って初めてのテン泊装備は4日分の食料と水を含めた冬季のテン泊並の重さ。
この時点では思ったほどの重さは感じなかったが、今年初のテン泊登山が夏のぶっつけ本番になるなんて不安しかない···。
水を湛える朝の畑薙湖。
登山口に向けて林道を歩いて暫くすると、露出して干からびた湖底が見えてきた。
いや、湖底ではなく堆積した土砂だろう。
聞いていた以上に覆い尽くさんばかりの凄い量だ。
沼平ゲートから30分程で登山口の畑薙大吊橋に到着。
長いし、高いし、(幅が)狭いし、高所が苦手な私には兎に角怖い。
橋の中ほどで1枚撮ろうと思ったけど、怖くて撮れませんでした(笑)

さて、対岸からはいよいよ本格的な登山道。
ここからは今回の山行で最も危惧していたヒルゾーンであります。
直近に事前に調べたレポでも複数の被害報告を確認済み。
しかも数日前に予報が変わり前日に雨が降りやがったので、最早ウェッティーな登山道での遭遇は避けられないだろう。
前日に待ち伏せスプレーとヤマビル忌避剤で登山靴とゲイターを万遍なく猛毒コーティングして万全を期したつもりだが果たして・・・。
ヤレヤレ峠へ続くトラバース。
やっぱりヒルの生息地を歩くと過呼吸になってしまうw
緊張しながら足元を悉に確認するものの、今のところノーエンカウント。
あれ?こんなはずじゃ···。
ヤレヤレ峠からはウソッコ沢に向けてせっかく稼いだ標高を悉く消費。
やれやれ、マジかよ···という気分にさせられるのが峠名の由来?
鉄製の頑丈な1号橋。
かなりお金をかけてますなぁ。
支沢に架かる2号橋。
一転足場と支えの木が朽ちている上に幅も狭くて少し怖い。(しかも滑るし。)
3号橋が見えてきた。
本沢に架かる橋はどれも新しめで頑丈な造り。
今のところ懸念していたヤマビルの姿も無く久し振りのテン泊装備の重荷も問題なし。
寧ろ何度も吊り橋を渡る他の山には無い独自性が楽しくて意気が上がって参りました。
崩落した登山道に代わって沢を歩く。
雨天時は危険そう。
沢歩きから道は突然左岸の急斜面へと続き、高巻きのトラバース道へと変化。
何だろう、思っていたのと違って道が目まぐるしく変化してめっちゃ面白い。
初めて見る深緑色のKGB(コウガイビル)。
人間には無害だけど、こういう系はやっぱり苦手。
昔実家の庭の石を持ち上げた際に石に付いてたこれを触って発狂したことを思い出す(笑)
沢沿いの岩の上ではニホントカゲがバスキング中。
脆い足場の4号橋。
重荷で足場が折れないか、余計な不安が付き纏う(笑)
8:34ウソッコ沢避難小屋に到着。
年季が入りやや湿気った感じの内部だけど、十分に実用的。
ただ、入口の扉が壊れて閉まらないのはちょっと···。
ウソッコ沢避難小屋を過ぎるといよいよ本格的な登りに。
先ずは荒れ狂う勢いで流れ落ちる沢を渡って
間もなく急坂に次ぐ急坂の始まり。
序盤こそ調子良く歩けていたものの、この辺りから徐々に疲れが見え始める。
もうすぐ中の段と言われても、中間地はまだまだ先。
むしろ疲労度に比べて進行度はまだまだで絶望すら覚える(笑)
名前の通り、急坂が一時的に落ち着く中の段に到着。
ここでザックを下ろして水分と栄養を補給。
今回は久しぶりのテン泊に耐えられるよう、意識的にこまめな休息と栄養補給を心掛けています。
急坂を再開して30分、横窪峠に到着。
山と高原地図によれば、急坂区間はここまでのようだ。
美しい沢の先に小屋の赤い屋根が見えてきた。
沢のせせらぎと緑が美しい雰囲気の良さそうな小屋だなぁ。
小屋の周辺には花や小さな生き物の姿
9:58横窪沢小屋に到達。