白い巨塔ってドラマが異様にどろどろしている。
あんまりどろどろしているから、エンディングのテーマが優しく流れて来るとほっとする。
しかし、あのどろどろさ加減。無きにしもあらず。
それが恐ろしい。
ドラマの中で江口さん扮する里見先生がせめてもの癒し。
どろどろ族の連中には「なーーにを甘いこと言ってるんだ!いつまでそんな素人みたいなことを言っているんだ!」と言われているが、あの中では一番心満たされた人間のサンプルのようだ。
私利私欲の為だけに動く者たちは、我が我がといつでもエゴイスト。
物凄く自分の事を考えこだわっていると言うのにさ迷い続け、その傍らで人のために悩み苦しむ者が、結局はその「人との関わり」の中から己が答えをはじき出す。
素敵な皮肉だなと思う。
その甘い男の役柄が言っていた。
「結局は、『頑張れ、頑張れ。』と、積極的な治療をしたために、本人の寿命を縮めることになった。」と。末期癌の患者さんのことだ。
「頑張るのか受け入れるのか。どっちがいいのか。一人一人の患者さんに出会う度に迷い続ける。」
私は昔出会った患者さんを思い出す。いや、思い出すと言うより、いつもここにいる。
その人はいつでも怒っていた。
「あんたたちの言葉や態度には『あなた死ぬ人。私生きる人。』って考えが滲み出ている。」
そんなことはありませんよ。
「嘘を言え!おまえも一緒に死んじまえばいいんだ。あたしと一緒に死んじまえ。皆、皆死んじまえ!」
私たちは毎日呪いの言葉を甘んじて受けていた。
ずっとずっと傍にいて。
悪態ついている彼女の口から普通だったら聞くに耐えない言葉が来る日も来る日も飛び出して来るのに、
傍にいて。
ずっとずっと傍にいて。
一人にしないで。
そう言っているような気がしたから。
やがて、その方の憎しみが日増しに溶けて来て、ある日、にっこりと微笑みかけられた。
「いつもありがとう。」
その笑顔から、彼女が召されてしまうまでの時間はとても短かった。
何年も長い経過を辿り、「死ね!おまえも死ね!」と言っていた時の彼女は憎しみに生かされて、それでも生き生きとして元気だった。
私たちは「ありがとう」って言う力無き微笑みを忘れない。幸せそうな笑顔に見えた。だけど、力が抜けたようなその笑顔が零れた瞬間、彼女の中から何かが飛び立ってしまったような気がしてならなかった。
自分たちがしたことは果たして・・・・。
月日が流れた。
同じような状況が何度かあった。
そんな疑問を幾人かの患者さんに抱いたことが何度かあった。
ドラマの中で大河内教授って役の爺さんが、ずいぶん初めの段階で里見助教授に言っていた。
「人の命を預る仕事に答えなどない。」
私はその通りだと思った。
だから、ずっとずっと考えつづける。思考錯誤してここにいる。
だけど、ただの一度足りとも「これで良かった。」と思ったことはない。
答えなんてない。
本当にその通りだと思った。
療養型の病棟では一日中、静かにBGMを流している。お年寄りが好きそうな童謡とか演歌とか森や川の自然の音とか。
そんな中で白い巨塔のテーマがかかった。オルゴールバージョンだ。
振り返って見る。
6階の窓から見る景色は晴れ晴れとしていて、ビルの向こうの遥か遠くの家並みまでもが見えた。さらにその向こうには山並みが見えた。
その上に雲がかかっていて、雲間を縫った日の光が地上に向かって射していた。
私はそのBGMにぴったりな景色を患者さんと眺めていた。
「いやあ、絶景だ。神様が降りて来そうな景色だねえ。」とそのお婆ちゃんが言うので、それがとても可愛らしく思えて笑った。二人で笑った
あんまりどろどろしているから、エンディングのテーマが優しく流れて来るとほっとする。
しかし、あのどろどろさ加減。無きにしもあらず。
それが恐ろしい。
ドラマの中で江口さん扮する里見先生がせめてもの癒し。
どろどろ族の連中には「なーーにを甘いこと言ってるんだ!いつまでそんな素人みたいなことを言っているんだ!」と言われているが、あの中では一番心満たされた人間のサンプルのようだ。
私利私欲の為だけに動く者たちは、我が我がといつでもエゴイスト。
物凄く自分の事を考えこだわっていると言うのにさ迷い続け、その傍らで人のために悩み苦しむ者が、結局はその「人との関わり」の中から己が答えをはじき出す。
素敵な皮肉だなと思う。
その甘い男の役柄が言っていた。
「結局は、『頑張れ、頑張れ。』と、積極的な治療をしたために、本人の寿命を縮めることになった。」と。末期癌の患者さんのことだ。
「頑張るのか受け入れるのか。どっちがいいのか。一人一人の患者さんに出会う度に迷い続ける。」
私は昔出会った患者さんを思い出す。いや、思い出すと言うより、いつもここにいる。
その人はいつでも怒っていた。
「あんたたちの言葉や態度には『あなた死ぬ人。私生きる人。』って考えが滲み出ている。」
そんなことはありませんよ。
「嘘を言え!おまえも一緒に死んじまえばいいんだ。あたしと一緒に死んじまえ。皆、皆死んじまえ!」
私たちは毎日呪いの言葉を甘んじて受けていた。
ずっとずっと傍にいて。
悪態ついている彼女の口から普通だったら聞くに耐えない言葉が来る日も来る日も飛び出して来るのに、
傍にいて。
ずっとずっと傍にいて。
一人にしないで。
そう言っているような気がしたから。
やがて、その方の憎しみが日増しに溶けて来て、ある日、にっこりと微笑みかけられた。
「いつもありがとう。」
その笑顔から、彼女が召されてしまうまでの時間はとても短かった。
何年も長い経過を辿り、「死ね!おまえも死ね!」と言っていた時の彼女は憎しみに生かされて、それでも生き生きとして元気だった。
私たちは「ありがとう」って言う力無き微笑みを忘れない。幸せそうな笑顔に見えた。だけど、力が抜けたようなその笑顔が零れた瞬間、彼女の中から何かが飛び立ってしまったような気がしてならなかった。
自分たちがしたことは果たして・・・・。
月日が流れた。
同じような状況が何度かあった。
そんな疑問を幾人かの患者さんに抱いたことが何度かあった。
ドラマの中で大河内教授って役の爺さんが、ずいぶん初めの段階で里見助教授に言っていた。
「人の命を預る仕事に答えなどない。」
私はその通りだと思った。
だから、ずっとずっと考えつづける。思考錯誤してここにいる。
だけど、ただの一度足りとも「これで良かった。」と思ったことはない。
答えなんてない。
本当にその通りだと思った。
療養型の病棟では一日中、静かにBGMを流している。お年寄りが好きそうな童謡とか演歌とか森や川の自然の音とか。
そんな中で白い巨塔のテーマがかかった。オルゴールバージョンだ。
振り返って見る。
6階の窓から見る景色は晴れ晴れとしていて、ビルの向こうの遥か遠くの家並みまでもが見えた。さらにその向こうには山並みが見えた。
その上に雲がかかっていて、雲間を縫った日の光が地上に向かって射していた。
私はそのBGMにぴったりな景色を患者さんと眺めていた。
「いやあ、絶景だ。神様が降りて来そうな景色だねえ。」とそのお婆ちゃんが言うので、それがとても可愛らしく思えて笑った。二人で笑った