昔はオシロスコープは全くの生産財で、趣味用に手の出せる価格ではありませんでした。ところがトリオが安価な測定器シリーズを1970年に発売し、その一つのCO-1303Dは実売3万円台のオシロで、私は中学の理科室でこれに触れました。
CO-1303Dは強制同期なので時間軸の測定はできませんし、帯域5MHzでは大して速くもないロジック出力でも矩形波らしく見えませんが、波形が見えれば大違いです。直接偏向端子を使えば広帯域の観測もできますが、条件次第なので帯域は仕様にはありません。しかし「ハム向けの宣伝に限っては」144MHzも観測可能と書かれました。大振幅が必要なので、ほぼ送信機のモニター専用ですが、後にハム専用のCO-1303Gも発売されています。
ところで「電子展望」誌に横井与次郎氏の「技術と奇術、技師と詐欺師」という投稿があったはずで、中でも忘れがたいのは「ブラウン管の丸いのがオシロスコープで四角いのがシンクロスコープ」というインチキ話です。本当は「シンクロスコープ」はトリガ掃引式オシロの岩崎通信機の商標として有名ですが、東芝や日立もシンクロスコープだったので、何か提携関係があったのでしょう。一方、丸いブラウン管とは非常に旧式とか廉価版のイメージで、CO-1303Dも丸型75φでした。
さて1971年だったと思います。まさに「英語にシンクロスコープという言葉はないらしい」と教えてくれた先輩に連れられ、旧通産省・電総研の見学で見たのは、500MHz、4現象というオシロでした。今にして思えばTektronix 7000型です。桁外れの仕様のほかで驚いたのは2点で、まずは蛍光体が青色発光だったこと。それまで緑発光しか知らず、青は怪しく美しく見えました。もう一つが500万円と聞いた価格です。もう高いとかいう次元ではなく、卓上に乗るサイズの量産品にそんな価格が存在する事自体が信じられなかったのです。それがトヨタ・カローラが60万円くらい、1ドル360円、という時代でした。