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アマチュア無線の裏側で

1970から1980年代の忘れがたい記憶から

トリオの受信機、9R-59Dは高周波1段・中間周波2段増幅(高1中2)で、IFは中波ラジオと同じ455kHzのシングルスーパーです。一応は上限30MHzまで4バンドですが、この構成ではSSB通信機としては7メガ帯までしか実用性はありません。

 

理由として、周波数が高くなるほど安定度とイメージ比が悪くなり、ダイアル目盛が詰まってきて同調操作も周波数読み取りも難しくなるというのが大きなところです。同一バンド内における感度差は重要な事の割にその調整の難をあまり解説されませんが、キットであろうと自作する上では妥協も必要とされる最後の関門です。結局これらを総合すると、7メガ帯と同じバンド・ポジションに属する14メガ帯でも使い物にはなりません。7メガ帯でさえも回路と動作を知らずに扱えるものではなく、まず正確な周波数を知ることさえ初心者には困難だと思います。

 

トリオもハイバンドが無理なのは承知なので、9R-59Dの前身である9R-59の時代に外付けでブリセレクター兼クリスタルコンバーター(3.5メガ帯に出力)のSM-5を発売しており、これは9R-59D の時代になってもパネルを換えてSM-5Dとして引き継がれました。それに関する9R-59Dの取説上の説明は次の通りです。

(9R-59Dは)とくにコンバータを使用しないでも十分にアマチュア局用受信機として動作しますが、さらに安定な通信を望む場合にはコンバータを使用します

本当に「十分に」ですかねぇ。AMの時代で空もガラガラだったら、無理して多少は使ったかも知れませんが。とにかくSSB時代が到来してもメーカーとしては自己否定できない苦しさがここには見て取れるではありませんか。

 

1970年頃はまだまだお役所の事務も手作業の時代でした。当時の私の従事者免許証も無線局免許状も全部「手書き&ゴム印」で記入されています。従事者免許の名前と生年月日は申請書に記入したままの自筆でしたが、無線局免許の免許人や常置場所などは電監側による手書きです。私はこのような手作業であった事務形態が原因らしき、いくつかの出来事を見てきています。

 

まず、申請とは仔細が微妙に違っていることがありました。これは市販のオールバンド機による申請には「電波の形式・周波数」の組み合わせに何となく定型が存在するためか、自作機など内容の不規則な申請にも手拍子でゴム印を捺してしまうと起こりそうな結果です。

 

次に、Q符号は最初からコールサインには存在しませんが、割当てを避ける略号はそれらだけではありません。コールブックの速報で一旦は「OSO」が掲載され、後に消えたのを見たことがあります。さすがに許可した方も、またされた方もそのコールサインはマズいと思ったのでしょう。気が付かれにくかったのは、SOSが全世界共通であるのとは違い、OSOは国内規則によるものだからかも知れません。

 

私の身近で結構悲惨だったのはJH△〇〇X局のケースで、この局が最初に受領した免許状では末尾が「Z」だったのです。誤りが判明したのは、本物のJH△〇〇Z局も同時期にJARLに入会申請を出したからだとか聞きました。何が悲惨だったかと言うと、QSLカードを印刷済だったこと。そこで何をやったか。「X」と「Z」は字画に似たところがあるのに着目して「Z」の一部を砂消しゴムで削り、ペンで斜め画を書き加えたのです。今はDXCC申請もオンラインで全部済むのか私も知りませんが、少なくともカード現物の検査なら完全にアウトの変造物でした。見た目にはとても良く出来ていましたけれども。

 

高出力の違法CB運用に多く流用されたのは八重洲のアマチュア無線機でした。まだトリオは管球式の時代に、TS-500やTX-310にはあったモードスイッチのAMポジションをTS-510以降は無くしたのに対し、八重洲は多くの機器にそれがあったからです。FT-401では最初は無かったものをマイナーチェンジで追加までしています。後は送信改造するなりAMフィルターを入れるなり何なりですが、特に人気が高かったのはFT-101(Zを除く)シリーズでした。

 

ある時、秋葉原のハムショップに行くとカウンター上で店員がFT-101(ファンの無い初期型)のファイナル・ケージを開けており、終段の6JS6には見事に穴が開いていました。客は「AMで100ワット出るように調整してくれ」と言っていましたが、まぁ何が原因でそうなったか容易に想像はつきます。真空管は高温になるとプレート脇の腹の部分が最初にガラスの軟化点温度を超え、大気圧で外から内側に穿孔するのですが、まさにその状態でした。ちなみに真正の送信管であれば硼珪酸ガラスなどを使用しており、民生用とはコストも耐熱性も違います。

 

どこか一つの10mバンドポジションを転用すれば周波数の近い11mバンド化はできますが、八重洲の機器はこの点でも流用しやすく、独立の11mかAUXポジションが大概あります。管球式の場合、一般論を言えばタンクコイル回りの都合からAUXポジションがあつても任意の周波数に送信改造は出来ない、つまり受信バンド追加専用の場合があります。しかし八重洲の11mやAUXポジションは送信改造が比較的容易な事が多いのです。

 

私が全半導体式のFT-301を新品で購入したときのことです。AMユニットとAMフィルターのオプション設定にAUXという名の11mバンドポジション付きと、そもそもな仕様ですが、バンドスイッチ回りを見ると怪しげな線が2本出ており、切断し放しのままチューブで束ねてありました。実は、その2本を短絡すると11mバンドで送信可能になるのです。新品つまり工場出荷状態なわけで、これは見て驚きました。

アマチュア無線技士の電気通信術といえばモールスの電信しか存在したことはないので、当ブログではその前提で書いてきましたが、プロの通信士の試験には電話による送話の試験もあります。

欧文は国際的な「フォネティック・コード」、和文では「和文通話表」により問題文を一文字ずつ口頭で送話するものですが、和文の試験の方は2001年に廃止されています。また、昔は欧文和文ともに受話もあったのですが、モールス電信の試験のケースと同様に送受信のうち簡単な方が簡略化で廃止された形です。

 

「電気通信術」の一種といえば大げさですが、その実態はハムが交信中にコールサインや名前の確認でやり取りしているまさに「あれ」です。もっとも、趣味の世界だけで適当に見よう見まねで覚えていると、ついつい標準にないコードが身についてしまう可能性があり、J = Japan とか T = Tokyo は特別ありがちな例で要注意、かつ癖になってしまうとなかなか直せません。

 

和文通話表の方では、使われている用語が全般に古いことが問題になるかも知れません。防災の日の訓練の折に耳にしたのですが、消防署員?の人が「み」を伝えようとして一瞬言葉に詰まり、しかる後に「ミカンのミ」と言っていました。「三笠」という言葉はもう一般には通じないので、それだけに覚えにくいのでしょう。

 

アメリカの事務所で働いていた時のこと、電話で綴りの面倒な単語や略語を伝える際にフォネティック・コードを使ってみました。"foxtrot" は "fox" 、"zulu" は "zero"にするなどアドリブで少し変えたものの、通信とは関係ない一般人相手でも違和感なく通るものです。しかしある時 "yankee" を言った途端に電話の向こうの女性が笑い出したことがありました。そんな単語が来るとは思わなかった、という感じでしたので、欧文フォネティック・コードで受ける印象も色々のようです。

電波利用料の制度が発足し、アマチュアも納入を義務付けられたたのは一体いつのことだったか、と思って調べたら1993年でした。その当時の私は僻地に単身で赴任しており、なかなか無線にかかわれる生活ではなかったので、その前後の事情をあまり知りません。ただ、徴収側も突然の強行とは行きませんからその必要性、および想定用途についても事前情報が流されていたのは何となく目に入っていて、その中には違法局の取り締まり強化も含まれていました。

 

その導入の是非についてハムの世界では、「違法な運用が減ってお空が綺麗になるのなら構わないか」という肯定的な意見はあったものの、「余計に出すものはビタ一文御免」、とか「ハムの納めた額相当はハムバンドのために」という論調はどこにもなかったような気がします。いくら新規財源の発生であるにしても、黙っていたら不要不急であるアマチュア無線の世界に回されるわけがない、と考えるのが普通の判断だと思うのですが。

 

この時、アマチュア無線界はうまく言いくるめられたのだと私は思っています。それが可能だった背景としては、有力なロビィスト団体が存在しないから(むしろ御用団体だったり?)。それに、違法局対策も予定にありと発表して肯定論に繋げることも、アマチュア無線界を表立って議論が始まらないうちに早々と適当にとりまとめることも、それら全部が計画内だったのではないか、と私は裏側をそこまで考えますけどね。

しかし、正直私はその当時を良くウォッチしていませんから憶測に過ぎません。詳しい方が居られたら是非どこかで当時のハムたちの行動について解説して下さい。

今回は通信用のヘッドホン・トリオHS-4とそれに関連する話です。

 

トリオのヘッドホンには元々ステレオ用のHS-3というHi-Fi製品がありました。これに対し、ハムショップのルートで売られていたHS-4はそのHS-3と見た目は瓜二つですが、プラグがモノラル仕様で通信用として作り分けられたもので、私も9R-59Dと同じ頃に購入しています。ハム用として当時のベストセラーだったこのHS-4ですが、スピーカーユニットが専用の物だったのか、LC回路でも入っているのか、とにかくHi-Fi用とは違う「音作り」がされていました。

通信機の場合、AFの帯域は広い方が良いのか、制限した方が良いのかについては昔から対立意見があります。前者は「聞こえる音の全てに情報がある」とする考え方。後者は「高音はノイズばかり、低音は電源ハムを拾い、了解度が上がらない割に耳が疲れるだけ」という見方が主流でした。

 

さて、技術系の投稿で多作、かつ音への拘りを感じた著者といえばJA4PC 高原氏が思いつきます。氏はもちろん通信用でもヘッドホンはHi-Fi用が良いのではないか、という意見だったので、私もそれを読んだのを契機にHS-4とTechnicsのHi-Fi用との聞き比べ、AFフィルターの適用などをしばらく試してみました。

その結果ですが、今に至るも正直分かりません。試した環境が不足なのか、聴き方が悪いのか、とにかく帯域が広かろうが上下カットされていようが、「聞こえる信号は結局、どちらでも聞こえる」としか言いようがないのです。ただ、狭く制限された音域だけを聴いていると「悪い音に耳が慣れる」ような不気味さを感じたので、Hi-Fiの方が安心はできました。

 

その後のHS-4ですが、板バネが強く、また私の頭は大きいので長時間の装着は耳が痛く苦しいので、実際には余り使うことなく終わり、今は完全にインナーイヤー型のHi-Fi用イヤフォンだけを使っています。

ある時、古書店でハム用機器の製作集を開くと、「ラジオの製作」誌で見慣れた著者名による6146パラレルだったか?数十W規模の「リニヤアンブ」の製作記事がありました。しかし内容を見た途端いきなり疑問符で、変調器が繋がっているのです。その実態は10W機をドライバに使うAM/CW用のプレート変調終段回路で、著者も編集も「リニヤアンブ」を単に高出力用の意味と取っていたわけです。


また、あるCQ誌の製作記事に出て来た「トリガ同調」、なるものが初心者の私には意味不明。とりあえず記憶に残しておいたら後日「スタガ同調」のつもりだと気付きました。

ワンターン・ランプというものがあります。一回巻(ワンターン)のコイルに繋いだ豆電球のことで、動作中の送信機タンク・コイルに近付けるとトランスとなって電球は光る、という自作実験用の小道具です。それを「中国人の発明らしい」と真面目な投稿の中で書いた人がいましたが、それってワンタン=雲吞、で誰かに一杯喰わされただけではないでしょうか。

しかし、一番程度が低いと思ったのは、

 

「トランシーブ操作のできるのがトランシーバー。ただしVHF機では単にトランスミッター足すレシーバーを意味する場合がある」

 

という説明でした。今さらですが、transmitterとreceiverの合成による造語のtransceiverの方がずっと昔から存在する単語です。「transceive operationという表現があるので、それの可能な機器がtransceiverだろう」と考えるのは、「typewriterという名詞があるからにはtypewriteという動詞(そんなものはない)があるだろう」と推測するに等しく、これはback formationと呼ばれる種類の間違いです。とにかく当時のハムの水準に照らして、お金を取る出版物に許されるレベルの誤りではなかったのです。一般誌では、ダイオードは一方向にしか電気を流さないから「半」導体という説明も見たことがありましたが、それとは対象とする読者層が違います。

 

上記のような例を昔話、として笑いでは終わりません。今は意味が怪しいと思ったら検索などの手段を用いて自分で確認すべきこと、に読書術の常識が移っただけです。

「キングソロモンの法則」とは、JA1KS 栗山晴二氏が1960年代に50MHzの伝播の観察から提唱したもので、スポラディックE層の発生にはもっと低空の大気圏の気象現象も関係しているのではないか? というものです。当時も仮説が示されたわけではないので、正確に言えば法則でも似非科学でもなく、個人の持った疑念です。

私個人としては。恐らく栗山氏がこれを唱えるまでに観察した期間より遥かにに長いこと50MHzを聴いてきたと思いますが、この「法則」を裏付けるような経験はありません。

 

全ての発見は観察から始まりますから、その段階ではとにかく数が重要です。しかしその後にいつまでも有力な仮説が立たない、あるいは第三者の報告がないとなればその観察はとりあえず「間違い」として脇に除け、次の課題に取り組むのが科学です。

「キングソロモンの法則」は仮説も第三者報告も遥か昔に尽きている話題だと私は考えています。

 

ところで、当ブログで私の書いてきた話題には1970年代のものでも完全に忘れられたり、検索も全くヒットしない案件が多くあると思います。しかし「キングソロモンの法則」は、それらより古いにもかかわらず、なぜか現在に至るまで未検討の課題のように繰り返し蒸し返されるのです。

私が思うにこれは、「栗山晴二」・「JA1KS」・「キングソロモン」というイニシャル合わせ・語呂合わせの印象付けが極めて強く、何か字面や発音の似た言葉を見るたびに思い出してしまうのではないか?(これも観察から仮説です)と感じます。

もしそういうことであれば、これは広告宣伝とかプロパガンダ作戦の極めて有力な参考になるでしょう。

私は中学生の頃から少しばかり登山を楽しんでおり、山頂から6m機の井上FDAM-3とかトリオTR-1100で出たこともあります。しかし登ること自体が目的かつ安全重視の山行ならば、携行するのは必ずCB機でした。それはニッケル水素電池など無い時代の上記の機器が単1とか単2電池仕様で大きく重く難儀・・だったのは本当ですが、それが主な理由ではなありません。

CBが登山向きだった理由は、27MHzなのでVHFよりは見通し距離外で有利なこともありますが、山岳警備隊も必ず持っていたからです。しかし後にCBは制度だけは残っても製造の方が絶えてしまい、今では山中から27MHz帯で助けてくれと叫んでも、誰もそんな周波数は聞いていません。

 

CB機メーカーは私の頃にはソニーと松下の2社に大体集約されており、買い替えもした結果今も手元に残るのは8ch 500mW機(フル仕様)と、2ch 100mW機です。フル仕様機は常用には大きい上に、単3電池で500mWは長時間の運用に不安なのが欠点です。資格は不要ですが簡易無線局の免許は必要な時代で、購入すると申請書と送付用の封筒まで同梱されていました。

 

アマチュア無線は簡単に従事者免許が得られる割には高出力が許可されますし、何より機器が安価なので(これ顕著)、アウトドアでの連絡手段として着目されてきました。JG1QFW 植村直己氏とか、JR3JJE 堀江謙一氏が有名ですし、アメリカに渡った宇宙飛行士たちも皆、Wのコールサインを得ています。

しかし山に登ると以前は無免許らしき運用が結構聞こえてきたもので、これには登山用品ショップが緊急用の名目で仲介していたという噂がありました。確かに非常通信だけは誰にでも許されていますし、当時は送信可能な機材でも実際に電波を出すまでは取り締まられなかったので、あり得た話だと思います。

 

さて、その後は携帯電話の普及により、CBの代替になる通信手段が残されなかったにも関わらず(まさか衛星携帯とか・・・)、もはやトランシーバー携行という用心は忘れられました。今の登山者はスマホが通じなければ「通じるところまで移動」を第一に考えるのです。

セパレートの送受信機ではメーターのスケールは簡単なもので済みましたが、トランシーバーに発展したのを契機にメーターも多機能化し、いつの間にやらテスターのような風貌になってしまいました。それでもメーカーはどうせ特注する部品なので一向に構いませんが、自作ではメーターの目盛を作るのは難しい問題です。

 

電流・電圧値くらいで済むならば、元のスケール板にインスタント・レタリングを貼って数字を書き加えるのが普通のやり方で、場合によっては溶剤で印字を消せる物もありました。しかしSメーターとか測定器では非直線目盛は当たり前なので、これは文字だけ工夫しても済みません。

そこで何だか昔も似たようなことがあったな、と思ったのは、それこそ「子供の科学」誌の野川清三郎氏の製作記事やら科学教材社キットの受信機類です。それらは全て主同調にはリニア目盛のバーニア・ダイヤルを使っていたので、そのままでは周波数直読にはできず、較正表を作って読むしかなかったのが何となく似ています。

 

そこでCQ誌に製作記事を投稿した某氏、編集部に「無理を言って」カラーページに目盛板を掲載させてしまい、これを寸法の合う市販のメーターに貼ればOK、という画期的なことを実行しました。個人がバソコンもブリンタもCADも何も持っていない時代ならではの出来事です。しかしその目盛板、一番目立つ場所に "CQ ham radio" と印刷されていたのです。オイオイ、そこは誰もが(機能とかコールサインとか)フリーに記入したくなる場所だろうと。出版側による「手間が掛かったんだぞ」、との版権や自己主張も必要なのは理解しますが、わざわざ嫌われるような場所でやるんですかね、と思ったものです。

 

今ならCADが使える人は丸ごと作ってしまうでしょうが、ひとつ注意をするならば、カラー化の誘惑に負けずに有彩色を使わないことです。特に一番使いたくなるであろう赤は最も褪色が速く、これは顔料系でも信用なりません。