さて、前回より話題にしているテレビにも改めて説明が必要な時代になってしまいましたが、アメリカと共通化されたNTSC規格でラスター・スキャンによりブラウン管(CRT)に画像表示するという、2011年の地デジ化完了で廃止されたアナログ方式の物で、それも真空管時代の機器を対象にしています。
ラスターで描画するためにはスキャン回路は垂直と水平両方に必要ですが、垂直側は16A8(6BM8の16V版)とか18GV8といったmT型のビーム管でも賄えても、水平方向は周波数がはるかに髙く(と言っても15.75kHz)低インピーダンスを駆動するので大出力の素子が必要です。ところがそのレベルのパワーを扱うには、どうしてもプレート電圧が高くなりがちで普通なら高価で大型な耐圧部品が必要となり、絶縁対策も厳重な実装になってしまいます。工業機器ならその手の設計こそ常道ですが、そのようなコストの掛かる内容ではテレビは家庭に普及しません。
しかし同じパワーなら少しでも低電圧・大電流で稼ぐ方が安価に仕上がるので、それが価格を抑えなくてはならないテレビ受像機が大型化するに従い、水平出力管が次々と新規開発された理由でした。球自体が安価、かつ、バリコンなどの部品も高耐圧が不要ならばハムの送信用にも渡りに船で、元々が高周波向けの管種ではありませんがHF帯の増幅なら何とかなったのです。
余談その2 水平出力の15.75kHzは送信機のごとき大出力ですから、フライバック・トランスやら偏向コイルやらを振動させて大きな音響となって漏れていました。しかし一応は可聴域内とは言え、当時は誰も気にしないでテレビ視聴していたのです。つまり、その程度の周波数のモスキート音を流すくらいでは若者の溜り場からの追い払いがロクにできるわけがありません。
余談その3 水平走査信号は鋸歯状に近い上に大電力ですから、高調波も15.75kHz間隔で一杯出ます。特にローバンドでは邪魔で、大事な場面ではテレビをオフにするのも当たり前でした。特にこの雑音を「バズ音」と呼ぶ事が多かったのですが、「ブザー」とかネット用語の「バズる」のbuzzと同じなので本当は「バズ」だけで充分ですし、意味ももっと広範です。