[七曲り荘日記]
●巻頭連載[第134回]
「我らの時代の墓碑銘を描く画家――その淫蕩する光線」
「アー写」
佐藤ブライアン勝彦●作品&文
●佐藤ブライアン勝彦(1968~)。リーゼントは昔っから。
今週、アー写(アーティスト写真)用に写真を撮ってもらった。
カラーとモノクロがあるんだけど、モノクロがこれ。
「これさぁ、昭和の任侠映画に出演してる人ですか? どうみても絵を描く人に見えない。もう志賀勝か勝新じゃんw」
って話になり盛り上がった。
これが曽根さんが言ってた「東北70年代ヤンキー顔」かと。
客観的に見て、これでスーツ着てたら怖すぎでしょ。
サングラスかけるのやめます。
[今週のブライアンのお勧めロカビリー/ジョニー・バーネット・トリオ]
●1952年から57年まで活動したアメリカのロカビリーバンド。
●10代前半に初めて聞いたのは有名な「you're sixteen」なんだけど、後にガツンとやられたのは、
音といい、声といい最高すぎた。
●もちろん、レコードで聞いた方がいいんだけど、
https://youtu.be/vrdcJ4-39Bo?
●志賀勝(1942~2020)。川谷拓三や室田日出男らと「ピラニア軍団」(京撮大部屋切られ役)を結成し、深作欣二監督『仁義なき戦い』シリーズで跳ねた、役柄は「せこい」が、玄人うけする渋い俳優。
6月20日(木)鬼子母神は曇り。
午後になって、ようやく荷造りを始める。
3時半、押し入れの上段のもの(ほとんどが衣類)を箱詰めし、廊下を挟んだ右対面の空き部屋(201号室)へ運ぶ。
その数、段ボール箱5箱。
大きなポリ袋のゴミが2袋(これはそのあとゴミ置き場へ)
これだけで、ふらふらになっているときに、前田プロフェッサーよりメールがある。
「今日の朗読用の詩はプリントアウトしなくていいの?」
えっ?
ありゃ、今日が20日か!
明日だとばかり勘違いしていたのだ。
慌てて、書いていた短い詩を3つ、バラけさせ繋げ、ひとつの詩に仕立て、前田くんへメールした。
この間、25分。
いつもより短い詩だが、長いのばかりだいぶ続いていたから、今回は、前田くんの演奏を表に、私は裏に回ろう(気持ちだけ)。
まあ、この時点で、今日1日分の、電池を使い果たしていたのだが――。
――どうにか倒れずに部屋へ帰ってきたのが11時近く。
ばったりと布団に倒れ、寝たままパジャマに着かえる。
配信途中で完全に電池が切れ、最後の詩の朗読は、低血糖症状もあり、よく噛まずに読めたなと自分を褒めてやりたいほどの体たらく。
しかし、前田プロフェッサーの演奏は良かった。
(ひとりでシンセ、ディジュリドゥ、ブロック状の打楽器を演奏)
●当日の写真。左から死体写真家の釣崎清隆、これでシラフの私、セルフポートレートの写真家ツージー、身体改造ジャーナリストのケロッピー前田。私はこの写真を撮ったあと、皆を置いてよろよろと、ゴキブリのように街路へ這い出た。
クスリを飲み消灯。
眠りに落ちる前に、新宿駅の副都心線改札で、突如、頭に浮かんだアイデアを思い返す。
「MIXXPOPのように、おれの詩にも、1編の中に、まったく違う語りや、違う色の情景を挟みこめばいいんじゃないか?」
今日読んだ詩がそうだった。
前半と後半が、違う口調の違う内容となっていたのだ。
それが、自分でもけっこういいなと、帰る途中でつらつらと思い返していた。
これまで書いた長めの詩でも、なんとなく別の語りを挟むようになっていたじゃないか。
「いや、なぜ、お前が2年半もMIXXPOPにこだわっているんだ? そのスタイルが詩にも使えると考えたからじゃないのか?」
なるほど、そうか。
なんとなくじゃなく、意識的に「MIXXPOEM」というスタイルにチャレンジしてみればいいじゃないか。
そう決めると、たちまち眠りに落ちた。
6月21日(金)鬼子母神は雨。
今日も雨か。
それもけっこう強い。
便所の小窓から眺める隣家のアジサイも、青紫色の花びらで雨をはじいている。
用を足してから、ざっと便所掃除をする。
共同の便器を磨くのも、あと数日か。
死が近くなると人は便器を汚しても気づかない。
この七曲り荘で(私の例も含め)学んだことだ。
昨日の疲れがひどく、昼近くまで起き上がることができなかった。
が、せめてひと箱だけでも詰めようと、段ボール箱をガムテープでつくる。
その後、結局、押し入れの下段のすべてを箱詰めした。
段ボール箱大小5箱(すでに段ボールに入っていたのもあったため)
大きなポリ袋のゴミ1袋。
ゴミ以外を201号室に運ぶ。
[遅い昼食兼夕食]
●赤海老& 小ぶりな筒イカ&アサリのトマトスープ・パスタ(ニンニク、ゴルゴンゾーラ、バジルソース、ワイン、トマトの缶詰)
●グレープフルーツ
●ミルクティー
パスタはネジネジのショートパスタが余っていた。
赤海老とアサリは、おとつい半額だったので買ったのだが、昨夜は疲労でとても調理できず、もうダメかな? と諦めていたが、どうにかもってくれた。
(馴染みのスーパーは他店と比べ見切りが4日! ほど早い)
ゴルゴンゾーラ・チーズ(業務用が千円ほどで買い置きしてある)をたっぷり入れてみたところ、なかなか不思議な風味となり旨かった。
(クリームシチューにゴルゴンゾーラを入れるのがピスケン流)
ワインの小瓶を1本、余すのもなんなので使い切り、だからスープ・パスタとなったのである。
当然、具もスープも余り、タッパーに入れ冷蔵庫へ。
NETFLIXに北野武監督『首』が上がっていたので観る。
構想30年の割りに、ずいぶんと雑なつくりの映画――特に編集がぐだぐだ――だったが、こうして部屋で寝ころびながら観るぶんには面白かった。
なにせ、たけしがつくる「戦国BLコメディー」だもの。
(西島秀俊と大森南朋がよかった)
これは仲間(野郎)と酒を呑みながら、あれこれ突っ込みつつ観れば、そうとう楽しいんじゃないかな。
ちなみに北野映画の私のベスト1は『3-4X10月』だ。
昨日の疲労と今日の箱詰めの疲労で、クスリを飲むと、たちまち眠りに落ちた。
その寸前まで、詩のスタイルについて考えながら。
[NMIXXつれづれ草]
●アイドルを自負しているくせに、ステージでこんな顔を平気でするNMIXXリーダー、メインヴォーカルのヘウォン(21)。特に日本ではオタク人気が凄い。アイドルをしていなかったら教師になっただろうという、生まれつきの「メンター(指導者)」気質。
●同様に、メインヴォーカルの長女リリー(21)はカウンセラー、3女ソリュンは保母さんと答えたから、NMIXXの上3人は皆メンター気質というのが面白い。ちなみに他の3人は皆アーティスト気質というのもファンからすれば当然か。
●「Soñar (Breaker)」(ソニャールとはスペイン語で夢)のステージのソリュン(20)。このときのスタイリングが好き。ソリュンのクールさを引き立て似合っていると思う。ベリーショート好きのオレとしては、ソリュンのそれを見てみたい。シルヴィア・クリステル並のエロスを期待する。
●なんかのブランドの発表会に出席させられたヘウォンとソリュン。こういうフリフリを着せたら、たちまちアイドルに化ける2人だ。
●先日、日本のテレビ(NHK系のどこかのなにか)にNMIXXが単体で紹介された(2部構成で2部目は来週)。
冒頭、MIXXPOPの説明で、いきなりデビュー時のソリュンの言葉が流れた。
「私たちの曲を一度も聴いたことがない人はいるかもしれない。だけど、一度だけしか聴いたことのない人はいない」
(翻訳なんで言葉が固いのは御勘弁を)
つまり、1度聴けばハマると言いたいわけだ。高校3年生のソリュンはレトリックを使い、紹介コピーとして使えるよう狙ったのである。
●我が推しは、メンバー内で唯一の「内向的」メンバーとして売り出されたが、いざというときはレトリックを操り、舞台では「メイン・ヴィジュアル」を恥ずかしげもなく演じる「度胸少女」なのであった。デビューして2年4カ月、KPOP1のヴィジュアルとして、KPOPファン以外にも認知されたが、その歌唱力の高さもようやく知られ始め、そろそろ彼女の「異常性」が気づかれ始めたことを私はことほぎたい。
6月22日(土)鬼子母神は晴れ。
午前7時に目覚めるが、また眼を閉じ、寝たまま色々と考える。
どうにもからだが起き上がれない。
実は、ここ1週間ほど前から同じ状態がつづいており、昼までこうして考えごとをしながら、うつらうつらとしている。
●戦後の自由詩がむずかしくなったのは、それまでの「叙情性」を捨て、よりミニマムに、よりハードコア(読者からすれば意味不明)になったためだ。
●田村隆一の「詩とは感情を隠すアート・フォームだ」という言葉が、若き詩人たちの指針となったせいだろう。
●しかし、そのせいで、戦後の自由詩は若者に愛されなくなった。
●その代わりにシンガーソングライターの歌詞が、若者たちの胸をヒットした。
●歌詞とは定型詩だ。
●なぜなら、リズムやテンポ、小節やコードやメロディ、なにより時間に縛られているからだ。
●定型詩は強い。和歌や俳句に慣れ親しんできた日本人には特に理解しやすい。
●ここ半世紀に日本で詩集がヒットしたのは、俵万智の歌集『サラダ記念日』しかないものな。
●彼女の場合、短歌という日本独特の定型詩に、現代口語を盛ったところが新鮮だった。
(むろん俵万智は若年の頃から、いにしえの和歌にも造詣が深い)
●その中身は1500年ほど前から変わらずつづく叙情詩、恋歌(こいか)であった。
●自由詩は自由詩でありながら「定型を模索する」アート・フォームである。
●誰だって書いてみればわかるだろう、自然と形がきまり調整されるのを。
●「詩とは書きながら教わるものである」
●定型を模索するも、上の言葉も、やはり田村隆一に教わったものだ。
「ミニマムでハードコアな連と連の間に、まったく語りの違う抒情詩が挟まったスタイル、それが自由詩でありながら定型性をあわせもつMIXXPOEMとなるのではなかろうか?」
まあ、ゆるい「カットバック」ともいえるな。
とはいえ、がちがちに使えば、また詩がこむずかしくなる。
やはり、ゆる~く、なるたけ自然な意識とフォームを心がけよう。
[遅い朝食兼昼食]
●昨夜の残りの海鮮トマトスープ・パスタ(ただしパスタは普通の細長いやつ)
●ミルクティー
落ち着いてから、久しぶりに漫画を読む。
詩集の編集者のりっちゃんが、6年ほど前に貸してくれた、山田参助『あれよ星屑』全7巻だ。
5年前に読んだきり、押し入れの本にまぎれ、今回整理するまで忘れていたのだが、1巻を手にとって読み始めたら、一気に7巻を読み終えてしまった。
●(株)KADOKAWA発行
そういえば、やはり5年ほど前の「鬼子母神御会式」の「みちくさ市」関係者の呑み会に、作者の山田さんが顔を出しており、挨拶をしたようなしないような。
(関係者の友人だったようだ)
話は、戦後の闇市編と、戦中(中国戦線)編が、交互に描かれてゆく。
最終巻最後のページに、かなりの数の参考文献&資料が並んでいるが、絵とキャラクターは、バロン吉元の『柔侠伝』と、たなか亜希夫作画&狩撫麻礼原作『迷走王ボーダー』に、かなり影響を受けているのは間違いない。
どちらも大好きな作品で、『迷走王ボーダー』は『漫画アクション』連載時にリアルタイムで読んでおり、当時は主人公の「蜂須賀」と、私(20代前半)が似ていると(その貧乏ぶりが)、よく後輩たちから蜂須賀呼ばわりされていたものだ。
ただし、
マジで『迷走王ボーダー』の「思想」もどきにはまっているバカに、その後よく出くわし、閉口させられたり、脅しを受けたりしたもんで、そのタイトルを口にするのは避けてきたが。
[今週の曽根のお勧め作品/バロン吉元『柔侠伝』torch comics]
●明治~大正期の日本と中国大陸を舞台にした、三代に渡る主人公たちの傑作ピカレスク・ロマン(分厚い上下巻)。
バロンは天才的絵師で、その後の漫画家への影響は大きい。ユーモアとシリアスのバランスに長け、また主人公の無邪気さとカッコよさ、ヒロインの可愛さと強さが同時に表現され、キャラクター造形の見事さはやはり漫画史に残るものだ。
●作品は、当時の苛烈な世相をユーモアでくるみながらもリアルに描き、歴史に名を残すものたちや資本家に対し、特高に拷問を受ける赤や、様々な下層民、武道家、女郎、兵隊、侠客、大陸の馬賊、等々がギャグを挟みながらも露骨に語られる。
●女郎屋に売られた寒村の若い女が、東京行きの電中で、突然、通路にしゃがみこんで小便をするシーンが忘れられない。人買いから綺麗な着物を着せられたその女は、白痴なのだ。
その後、戦後の赤線の女たちの半分以上が知的障碍者であったデータを読んで、田舎では金よりも厄介払いというケースのほうが多かったことを知る。
●上京して40年以上、都内で見かける女のホームレスは全員が全員知的障碍者だ。
[夕食]
●塩鮭かま3片バター・ソテー(塩胡椒小麦粉、大蒜、唐辛子)
●付け合わせのインゲンひと束バター焼き
●納豆(ネギ)
●海苔
●小茄子の漬物
●ごはん
●煎茶
塩鮭のかま3片も小茄子の漬物も半額品。
(半額の赤海老等を買った日にこれらも)
塩鮭のかま4片のパックも半額だったので冷蔵庫にしまってある。
(氷近くにしまってあるから、まだ2日ほど大丈夫だろう)
常のごとく、塩鮭ソテーはインゲンと共に半分残し、明日の朝食用に冷蔵庫へ。
おやすみなさい。
連日の荷造りで(たったこれだけの作業で)体調は最悪、刺痛神経症がひどい。
(それでも、1日5錠まで減らしたオピオイド鎮痛薬は5錠を死守)
その上、病人は日々痛みと気持ち悪さにずっと耐えているため、切れやすい。
健康人は病人の気持ちがわからないから、すぐこっちの地雷を踏みやがる。
ついさっきも、ダチからの電話の途中で切れた。
まあ、相手も自分のショバに、ちょっとでも足を踏み入れると反射的、ビックリ箱並に切れる野郎だからお互い様だが。
病体も理由だが、切れるのは老齢や現在のポジション(私の場合生活保護受給者)のせいもある。
無意識に感情が失禁するのだ。
そもそも酒を喰らっては毎夜「感情失禁」を繰り返してきた40年であったが、酒を止めてもこうじゃ、この先が思いやられる。
来月には還暦だぞオレ。
感情失禁用のオムツはないのかしら?
やれやれ。
なんてハルキストじゃないのだから、ことは深刻だ。
やはり、この先ひとと滅多に付きあわないようにしよう。
で、さっさとおさらばすることだ。
良い夢を。
[処女詩集販売中]
『火舌(かぜつ)詩集 Ⅰ ハードボイルド・ムーン』
著者:曽根 賢(PISSKEN)
ドローイング:佐藤ブライアン勝彦
判型A5/平綴じ/96ページ
部数:300部
税込み価格1320円
さて、販売方法だが、以下の2つの書店で、通信販売、また店頭発売します。
2書店のサイトを検索してもらって注文してください。
ネット注文できない私のようなひとは、誰かに頼んで注文しましょう。
※詩集には私のサインが入っています。
「タコシェ」
http://tacoche.comには、遊離型テストステロン値が11.8 pg/m注意(ボーダーライン)、8.5pg/ml以下の場合は明らかに
(シングル小説もセカンド&サードも注文できます)
「模索舎」
「阿佐ヶ谷ネオ書房」
※書店販売のみ
尚、くどいようだが、この処女詩集は、あくまで『火舌詩集』のⅠであって、今後あと2冊を発行します。
3冊合わせて『火舌詩集』となるので、ぜひコンプリートしましょう。
※「火舌」とは中国語で、火事の際、窓から吹き出し、壁を舐める炎をいう。
[サード&セカンド・シングル通販中]
●A面「PISS(INTO)MY HEROES」
●B面「七曲荘二〇三号室」
●セカンドシングルのジャケット。被写体は細菌学者の志賀潔。撮影は土門拳。
●アドレス:budroll.shelvis.sy3@gmail.com
――以上へ以下のことをメールしてから、お金を振り込んでください。
◎郵便番号と住所
◎名前(口座のカタカナ読み振りも)
◎電話番号
◎サード、セカンドのどれを希望するか
(ファーストは売り切れ)
●1,600円(発送代込み)
●振込先――ゆうちょ銀行
◎BUDROLL(バドロール)
◎普通口座:店番908
◎口座番号:5133817
『キャンプ日和』(河出書房新社)
キャンプ小説&エッセイのアンソロジー。トリに曽根 賢の短編「二つの心臓を持つ川の縁で」が掲載されています。
『点線面』5号(ポンプラボ)
曽根 賢の特集と、論評風の新作エッセイが載ってます。詳しいことはネットで検索してください。