[深雪荘日記]
●[連載第199回]
「我らの世代を看取る我らの世代の墓碑銘」
「」
佐藤ブライアン勝彦●作品&文章
届き次第、
アップします。
●表紙代わりのジウ(20)の写真。デビュー時は16歳。まさに花が咲いたヴィジュアルとして、SNSでバズっている。
●まさに大ヒット中のシングル「ブルー・ヴァレンタイン」。現在も韓国チャート4つで1位をとる「オール・キル」状態がつづいている。これぞ最新型のガール・ポップスだ。
10月29日(水)鬼子母神は曇り。
午後6時30分、いつもより30分遅れて深雪荘を出る。
「とんでもなく寒い」
今夜は毎月恒例の『BURST公開会議』だ。
目指すは阿佐ヶ谷タバサ。
体調は最悪。
おとつい昨日の気温が25度前後、今日の最高気温は16度。
「いまは10度くらいか?」
心底から「ストレッチャーで運ばれたい」と思った。
部屋を出るギリギリまで、片眼のラッパーことダースレイダー氏のYouTubeトークを聴いていた。
あまりの体調の悪さに、どうしても足が玄関まで進まなかった。
万年布団にあぐらをかき、苦痛に顔をしかめたままだ。
けど、彼はえらいな。
私よりひどい体調のはずなのに、愚痴らしき言葉は一つも発せず、気候変動に対しての意識改革を、こちらの理と情へと訴えかけてくる。
「オレも、せめて行かなきゃ」
そこで、ようやくのろのろと立ち上がった。
[今週の曽根のお勧め作品/スピルバーグ監督『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』2002年]
●現在YouTubeで無料視聴中。
●ディカプリオ演じる10代の天才詐欺師と、トム・ハンクス演じるFBI捜査官とのコミカルな鬼ごっこ。しかし実は、実在する人物とその事件をモデルとした作品だ。
●ディカプリオの父をクリストファー・ウォーケン、義父をマーティン・シーン、トム・ハンクスも含め、3大いい親父そろいぶみの「父と息子」の愛情映画でもある。
●主人公が少しめそめそぎみだが、そこはディカプリオゆえに明るさは担保されているし、出てくる女子たちが皆可愛い「60年代金髪おバカ」で、サービスもいっぱい。
●なにより、役者の顔ぶれはもちろん、監督がスピルバーグなのだから面白くないわけがない。ちなみに私はディカプリオが好きなのだが、ディカプリオ映画としては五指に入ると思う。
今日のお題は「BURST2003~2004年について」だった。
つまり、私からユージへ編集長が渡り、廃刊するまでの2年間についてである。
具合の悪さと、あの「悪夢の2年間」が重なって、最初から「しょっぱい話」になり、前田くんから叱られる。
ダースレイダーさんとは大違いだ。
どうにかトークの時間が終わり、〆の朗読までこぎつけた。
ここんところずっと寝たきりみたいなもんだったため、新作詩が間に合わず、前に書いたものを少し手直しし、前田くんの吹くディジュリドゥをバックに朗読した。
これが、ほぼ完成稿になるだろう。
[火舌詩集Ⅱ「BALLS」用作品 20251029]
「血より濃い涙が流れている」
巷に雨が降るように
今夜も男たちの胸には
血より濃い涙が降っている
それは悲しみの涙でも、悦びの涙でもない
太古の民の血脈が途絶え、田へ引く水脈が涸れても
今夜も男たちの胸には
血より濃い涙が流れている
それはかの女の流す涙
遠い街の片隅で
両の足首まで血を流しながら
ディエゴの手が窓の夜露をぬぐうと
シャッターの下りた酒場の裏扉がノックされる
「黒ビールを大きいので」
J型の長いカウンターにぽつぽつと座る
保険証のない男たちはむっつりと
ジャムを煮る音を聴きながら
臭い酢漬けの豚足を齧っている
ここは運命からの隠れ場所
神の代わりに賽は振られ
匙を投げた男たちが息を吹き返す
女子どものいない男だけの世界は
喫煙やマッシュルームの雲さえ許される
未来から孤立した世界
戦前も戦中も戦後もいつだって
男たちの魂を救ったのは
カフェインとニコチンとアルコール
決して晴天や処方箋や男娼だけじゃない
三種の神器と胡桃二つ分の暴力を握りしめながら
今夜も男たちはむっつりと、ジャムを煮る音を聴いている
後悔とは薄暗がりに佇む毛皮の死霊だ
壁に吊るされたコートが仕事探しに出かけても
毛皮の死霊はパイントグラスの黒ビールを舐めつづける
厄介ごとを棚上げにしたまま、夜明け前には死んでゆく男たち
その胸には今夜も、血より濃い涙が流れている
血は水よりも濃いけれど
純潔を誇る病んだ血族の毛細血管は、ゴンドワナ大陸の隅々まで伸び
十二歳の少年兵士の静脈をクリスタルのメスで傷つける
アジアの片隅で末端価格の男たちは、十二歳の少女を殴りつづけ
ペットボトルの水でこぶしの血を洗う
百年前の詩人がせせら笑う
「現在の我々の文明が、最も老年のものであることを認めなければいけない。
百年後の我々の文明は、百年分老いているのだ」
ロンドンが退屈に燃えた五十年後
冷たい雨の降る新宿は、今夜も退屈に鍋で煮られている
時代の頭数の男たちは、小便横町で肉豆腐をつつき
皇族の婿養子へ贈るビキニ・キルの7インチに七味をこぼす
時代にプライドなどないように
今夜も男たちの胸には
血より濃い涙が流れている
それはかの女の流す涙
遠い街の片隅で
丸い腹を裂かれながら
暮らしのために男たちが自分を売った夜
道端で独りの女が死んだ
まだ舌足らずのまま
たるんだ電線が風に鳴り、あなたの耳に女の言葉を伝える
だから男よ、針の眼をせいぜい見開き
お前ひとり分の愛を今日の仕事に尽くせ
不当な人肉抵当裁判に屈せず
血より濃い1ポンドの肉を夕餉に捧げよ
ひとりの女の月の実りのために
ずぶ濡れの家路が濁流にのまれるまえに
血より濃い涙に満たされ、溶けあい
カンブリア紀のスープとなる日まで
今夜も、男たちの胸には
血より濃い涙が流れている
読み上げてすぐ、記念写真を撮られ、客で来てくれた瀧坪くんカップルを残し、帰る。
40分後、深雪荘へ着く。
昨夜の残りの納豆汁に、ネギと卵とごはんをいれ、熱いおじやをスプーンですする。
今日、初めての食事である。
おやすみなさい。
亡き永沢光雄は晩年、抗がん剤に顔をむくませながらも、ギネスにはまり、一緒に呑めば、私と一緒に漫才(※)をしたりと、決して苦しさを見せなかった。
(※)下咽頭癌で声帯を切除したため声は無く、私のボケに、ホワイトボードでつっこむという新機軸漫才であった。
それでも、一度だけ、薬の苦痛について訊いたところ、
「毎日が地獄だよ」
と、おどけたが、半分本当だったろう。
オレも、せめて人前では笑わなきゃな。
それが大人のたしなみだもの。
若いころは「最後に笑えればいい」なんてうそぶいたもんだが、そんな余裕はもはやない。
あなたの前では笑顔でいたい。
KPOPアイドルを見習って。
あなたも笑顔を忘れずに。
よい夢を。
●裏表紙代わりのソリュン(21)。この髪型はソリュンの希望で、初のスタイルだが、めちゃくちゃ可愛い。今回の「ブルー・ヴァレンタイン」もソリュンにピッタリの曲で、初のチャート1位独走に「ザ・アイドル」の自信が笑顔に磨きをかけている。
NMIXX「 ADORE U」Track Video
●フルアルバム『ブルー・ヴァレンタイン』より、「ADORE U」のスペシャルMV。彼女たち自身で撮った映像のコラージュ。曲はシューゲイザー系のギターをバックに軽やかに、かつ力強く歌い上げるパワーポップ。
●初のフルアルバム『Blue Valentine』が[ビルボード200]に177位で初チャートインした。タイトル曲「Blue Valentine」も現在、国内チャート4つを1位のまま2週間無双中である。これは今年でいえば、BLACKPINKの「JAMP」と並ぶ記録である。
●先日とうとうキュジンが白状したように、彼女たちの現在目標はグラミーとコーチェラだ。ゆえに今回のビルボード177位は、最初の足掛かりとして上出来である。
●なにせ、国内チャート1位を獲るまで3年8カ月もかけたチームだ。しかし、来月から初のコンサート海外ツアー(※)が始まる。くどいが、まさに「機は熟した」のである。
●NMIXX専門のプロデュース・チームSQU4D(スクワッド)は、トップから40名ほどのスタッフがほぼ女性である。彼女たちの愛情ある丁寧なプロデュース力こそ、KPOP業界で「新しい」のだ。いや、たぶん世界中のポップス史を見渡しても、それは「新しい」と思う。
●彼女たち40人は、NMIXX6人の歌唱力、パフォーマンス、ヴィジュアルが世界レベルになるまで、じっくり待ったのだから。
●それにしても、今回の本国チャート1位独走で、一気に世界が開けたのは間違いない。とうとう、ようやく、NMIXXはブレイクスルーを果たしたのだ。これから5曲連続で1位を獲ることだろう。。
NMIXX「Reality Hurts」Track Video
●「ADORE U」に引きつづき、本日(11/3)YouTubeにアップされたアルバムのい収録曲。ダフトパンク系のクラブ・ミュージックだが、MVはもっと彼女たちのヴィジュアルを全開にしたものとなっている。
●しかしまあLAで、タイトル曲のMVばかりじゃなく、これまで撮っていたとは驚きだ。タイトル曲とは別の、衣装とメイクとロケ現場なのだから、ほんとNMIXXもSQU4Dも働きものだし、金の使い方が素晴らしい。

































