百合子です
今日は一日すっと雨でしたねー
梅雨時期かと思うぐらい湿度がヤバい
前回はこちらでしたね
続きかきます
離婚裁判始まる
「百合子さん、旦那さんに先手打たれましたね。」
K弁護士が開口一番でそう言い放った。
K弁護士の事務所に夫からFAXが届いたのだ。
夫が子の引き渡しと監護者指定申立を取り下げてから、妙におとなしかった。
この間、離婚調停と面会交流調停の期日はあったが、以前のようなオレオレ主張は影を潜めていた。
嵐の前の静けさのようで、それはそれで気味が悪かった。
師走に入り、世間はすっかりクリスマスムードに入った。
デパートに入ればジングルベルの音楽がなり、町はあちこちイルミネーションが飾られ華やいていた。
つい先日夫が子供と早めのクリスマスを過ごしたいというのでFPICを通さず、夫の自宅に子供を行かせたばかりだった。
なんだかんだで、子供は定期的に父親に会えるのが楽しいようだ。
今まで私も意地を張っていたが、子供が平等に両親と会えるように、面会を増やした方がいいのかもしれないと、この頃思うようになってきた。
面会を終えて夫が子供を私の自宅に送り届けた時、夫は私に「オレは離婚する気はないんだ。今でも3人で暮らしたいと思っているから」と。
私にすっと手紙を渡し、名残惜しそうに帰っていった。
手紙を開けると、そこには私に対する謝罪と今まで家を支えてきたことへの感謝の気持ちが述べられていた。
最後に「戻ってきて欲しい。百合子さんを愛しているんだ。」と締めくくられていた。
夫から手紙をもらったのは初めてだった。
離婚調停中とは言え、少し嬉しかった。
あれからまだ4日ぐらいしか経っていない。
今日K弁護士の元に、夫から「離婚訴訟申立」がFAXで送られてきた。
つまり、「オレは離婚するからよろしく!」ってことだ。
しかも、私が子供を連れ去ったとして、精神的苦痛による慰謝料600万請求というおまけ付きだ。
先日のセリフは、手紙は一体なんだったのだ……。
人間って4日間で考えが180度変わるものなのか?
私が唖然としていると、K弁護士が「まあ、百合子さんも離婚したいならいいんじゃないですか?」と苦笑いしながら言った。
言うことがコロコロ変わるのも、モラハラの特徴だ。
常に自分にいいようにことを運ぼうとするから、その場その場でいうことが違ってくる。
わかってはいたのに、それでも夫の手紙に少し心が揺れた自分がいた。
本当に3人で仲良く暮らせたら……。
つい叶わない夢を見てしまうのだ。
それも夫のFAXで目が覚めた。
3人で暮らしたい、百合子を愛していると言ったその口で、離婚して親権と慰謝料をよこせと言う夫。
ああ、そうだった。
これが夫の常套手段だった。
甘い匂いで誘っておいて、食いついたら沼の底に引きずり込む魔物のようだ。
別居してもう半年経っていたのに、未だに夫の甘い罠に引っ掛かりそうになる自分が情けない。
帰りの電車で仲良さそうに手を繋ぐ家族をみて、涙が出そうになるのを必死に堪えた。
町中に響くクリスマスの音楽に背を向け、私は離婚訴訟の準備にとりかかった。