労災を使った事故 | ピロの屋本館@ロサンゼルス

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天使の女王の町Los Angelesでの生活記録

先月の終わり、
仕事中に怪我をしたんです。
 
 
エンバーミングで使う薬品が
ひっくり返って
かかってしまった。
 
 
エンバーミングで使用する薬品の
主要となるのは
フォルムアルデヒド
と呼ばれるもので、
常温では無色の気体。
 
 
フォルムアルデヒド
と言っても馴染みが
あまりないかも知れませんが、
その成分が37%以上
水に溶けたものを、
フォルマリンと呼びます。
これならわかるかな?
 
 
エンバーミング薬品には
フォルムアルデヒドの他にも
まだ様々な危険な薬品が
混ざっているものもあったりするし、
それらの薬品を、
エンバーミングタンクに
移して混ぜて、
さらに水を加えて作ります。
 
 
で、あの日、
マシーンの上にある棚から
いくつか使用する
薬品ボトルを取って、
それをマシーンに注いでいたんです。
 
 
その時、ふと手が滑って、
フタが開いた薬品のボトルを
落としてしまった。
 
 
タンクが置いてある
カウンターの上に落ちたボトルは、
その弾みで中に入っていた薬品が
バシャッと思い切り、しかも
結構な量が顔にかかり、
左目を直撃した。
 
 
ウソでしょっっダッシュ
やったよっっピリピリ
 
 
これは私が
その瞬間に思ったこと。
 
 
薬品がかかってから
ほんの2,3秒後、
左目に激痛が走り始めた。
 
 
マズイ!!!
 
 
すでに左目は
激痛で開かないんだけど、
右目までが左目の痛さで
なかなか開けられない。
 
 
Prep Roomには必ず、
シャワーと目を洗う場所が
あるのですが、私の場所から
そのステーションまでは、
20歩くらいは歩く。
 
 
 
 
何しろ目が痛くて開かないので、
私は咄嗟に、
エンバーミングテーブルの上の
ホースを取って、
左目にぶっかけた。
 
 
エンバーミングの最中は、
基本的にはホースで水を
流しっぱなしにする。
 
 
そうしてない人もいるけど、
私はやや潔癖の気がある
ということもあり、
常に水は流している。
 
 
なので今回は
それが幸いした。
 
 
痛い。とにかく痛くて、
途中で呼吸が荒くなってきた。
 
 

少し経ったころ、別の従業員が

私の異変に気付き、

アイステーションの水を出したから

そこに行った方がいいと言った。

 

 

 

 

私がそこに行って

目を洗っていたら

マネージャーのダニがやってきた。

 

 

『大丈夫か?10分は連続で

洗わないとだめだ』

 

 

ダニはそう言って

一旦どこかへ行った。

 

 

私はまだ痛かったけど、

ある程度流してから、

自分のステーションに戻り、

片目をつぶりながら

エンバーミングの準備に戻った。

 

 

するとそこで、

ドアからダニが入ってきて、

1枚の紙をかかげて言った。

 

 

『ピロ~!ストップだ。

エンバーミングを中止して、

今すぐ病院へ行け』

 
 
紙はダニの上のマネージャー、
メアリーからだった。
 
 
仕事中の怪我なので、
メアリーのサイン入りの
労災の書類を持って、
一番近くの職業医療センターへ
ダニと向かった。
 
 
診察室でナースに、
『薬品がかかってから
洗い流し始めるまで、
どれくらい時間経った?』
と聞かれた。
 
 
『10秒以内には
流し始めたと思います』
と言ったら、
『それはまた、素晴らしく
早かったね!』
と言われた。
 
 
やっぱり自分のステーションで
洗い始めたのは
正解だったようだ。
 
 
それからすぐに、
ナース2人がかりで
目の中にコンタクトのような
プラスティックを入れ、
洗浄が始まった。
 
 
痛い、、、というわけでは
なかったけど、
水を流す時に圧がかかるので、
ちょっとその鈍痛的なものが
不快だった。
 
 
それが15分行われた後、
ドクターが来て
目の中に染色液を入れ、
また一旦流し、
それから機材を使って
眼球チェック。
 
 
すると少しだけ
ダメージがあるということで、
今からすぐに、
目の専門医がいる
UCアーバインの
ERに行くようにと言われた。
 
 
ダニに連絡して
その旨を伝えると、
すぐにエメルを迎えに行かせる
言ってエメルが来てくれた。
 
 
職場に戻り、一旦ダニと
メアリーのオフィスへ行って
状況説明をし、
私はすぐにERへと向かった。
 
 
結局病院を出たのは
夜10時だった。
 
 
こっちでは、
薬は別場所の薬局で受け取るので、
病院ではもらえない。
 
 
左目は、散々洗浄されたり、
染色液を入れては流してなどを
1日何度もやったので、
必要な油分がない感じで、
ただでさえ痛いのに、
かなりドライで
瞬きすらも辛い状態。
 
 
薬局も、夜の10時過ぎには
閉まっているので、
その日は薬なしで帰宅。
 
 
痛みは少しはおさまったけど、
やはり無痛とは程遠く、
それでも夜は目さえ閉じれば
瞬きせず済んだ分、
少しは楽だった。
 
 
結局ベッドに横になれたのは
夜も1時過ぎ。
 
 
そして翌日、
普通に仕事へ行った。
 
 
もちろん皆からは、
『来んじゃないよ!!!』
と怒られた。
 
 
でもそう言われるだろうと、
事故にあった時から
想定はしていたので、
私はERに行く前にメアリーに、
『明日仕事来ていい?』
と聞いといた。
 
 
メアリーは、
『ん~、もちろん、
仕事できるって
あなたが思うならいいわよ』
と言ってくれた。
 
 
なぜそこまで
仕事に拘るのか?
 
 
それは目標があるから。
 
 
最低でも最初の1年は、
無遅刻、無欠勤で
いきたいのである。
 
 
左目開かなくとも
右目があれば仕事はできる。
 
 
エンバーミングでは、
メスやら注射器やら針やら、
そして危険な薬品などが
周りに溢れているので
できなくとも、
通常の洋服着せとか
ヘアメイクなら全然できるし。
 
 
結局仕事には行ったんだけど、
その日もまた、
近所の職業医療センターへ
行かねばならなかったので、
途中で早退した。
 
 
病院が終わったのが4時半頃で、
もちろん直帰して
よかったんだけど、
やり残した仕事があったんで、
一旦職場に戻ったのが
5時10分前。
 
 
もちろん皆から、
『またあんたは、こんな時間に
戻って来んじゃないよ!!』
怒られた。
 
 
そしてダニにも
『ピロ~!ゴーホーム!!』
と言われ、
仕事をさせてもらえなかった。
 
 
それが金曜日だったので、
土日はさすがに
自宅でゆっくり過ごした。
 
 
その後、
翌週にももう1度
近所の病院でアポイントがあったので
仕事を早退して行った。
 
 
職場に戻ると怒られるので、
直帰するよと
ダニにTextして帰宅した。
 
 
それからもう1度、
今度はERに行ったUCの方で
アポイントがあったので行った。
 
 
その時も出発前ダニに、
『間違っても戻ってくんな』
口をすっぱくして
言われたので直帰した。
 
 
結局痛みが完全になくなったのは、
怪我から3,4日
経ってからだったかな。。。
 
 
その間も左目は真っ赤で、
黒目から内側にかかったらしく、
本当に少しずづ
充血が消えていった。
 
 
そして痛みが無くなると
同時くらいから、
今度は痒みに変わった。
 
 
最初の1週間は
抗生物質入りの
オイントメントを処方され、
6時間おきに使用。
 
 
その後は
液体の目薬を処方され、
今でも使用している。
 
 
最後にもう1回、今月27日に
USの方で予約があるので、
それでダメージが消えていたら
これで通院も終わりとなると思う。
 
 
ということですが、
ところで、、、
 
 
見習いエンバーマーが言った。
 
 
『私も前に、
ティッシュービルダーが、
ほんの少しだけ
皮膚に飛んだことが
あったんだけど、
みるみる痛くなってきて、
赤くなって肌が荒れて
大変だったことがあったの。
それが、大量に目にかかったとか、
どれだけ激痛だったか。。。』
 
 
あのぽわぽわしてる
エメルも言った。
 
 
『私も以前、
ドライウォッシュがちょびっと
目にかかった事があったの。
本当にほんの少し。
でも激痛だったわ』
 
 
ティッシュービルダーとは、
メタノールが入っていて
人体に有害な化学物質。
それも酢酸とかフォルマリンの
合成原料です。
 
 
明記している通り、
ライセンスがあるエンバーマーのみ
使用できるもの。
 
 
それからエメルがかかった
ドライウォッシュとは、
アセトンが含まれていて、
殆どの油脂を溶かせるもの。
 
 
除光液とかは
アセトンを含んでいますよね。
 
 
そして冒頭述べた通り、
私がぶちまけたのは
エンバーミングケミカルの
フォルムアルデヒド(笑)。
 
 
これらどれも危険と言えども、
エンバーミング薬品は
マズイ笑
本当にマズイ笑
 
 
それにあれは、エンバーミングの
タンクに入れる前のボトル液体、
つまり、薄める前のもの。
 
 
痛くないはずがなく、
以来私は、
エンバーミング時にはもちろん、
見習いがかかった
ティッシュービルダー、
エメルがかかった
ドライウォッシュを使用する際にも、
ゴーグルを必ずつけている。
 
 
今までもずっと、
エンバーミングの際には
ゴーグルつけてたんです。
でもその使用方法は
主にカチューシャとして笑
 
 
髪が邪魔であせる
 
 
現在は、
エンバーミングの時には、
フェイスシールドをつけて
顔面をプロテクトし、
ゴーグルは相変わらず
カチューシャです笑い泣き
 
 
 
というわけで、
職場で起った事故の怪我
だったので、
労災を使わせて頂き、
病院へ行っている間も
ずっとお給料が払われてます。
 
 
お陰で先週頂いたお給料は、
結構な金額でしたお金お金お金
 
 
嬉しいような、
申し訳ないような
複雑な思いですが、
それでもあの激痛を考えると
割に合わないので、
もう職場での怪我は
勘弁だなぁ~と思ってますてへぺろ
 
 
 
ではでは皆さま、
良い週末を飛び出すハート