初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)/早川書房

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 みなさんこんばんは。

 最近教養のためと思ってクラシックなんぞをiPodで聞いている私ですが、昔の作曲家さんのヅラってよくよく考えると非常に興味深い形をしていますよね。そもそもまずそれなんでかぶろうと思ったの??っていう疑問が頭から離れません。ハゲ隠すなら小粋な帽子でいいんじゃない??っていう。それとも何か別の理由があるのかしら。あれ、オーダーするときなんていってオーダーするのかしら。「ちょっとバッハのアレよりボリュームある感じで。うん、巻き毛は5段」とかってカスタマイズすんのかしら。いらないだろ。それ。

 さて、本日の本はロバート・B・パーカー『初秋』です。

 スペンサーシリーズと呼ばれる人気ハードボイルドものの一作。解説を読んでみますと、もう男の中の男!という感じのハードボイルド探偵にも関わらず、ハメットといった典型的な探偵とはまた一味違った特徴があるそうな。ハードボイルとといやぁ酒とタバコと女に目が無く、不規則な生活で、無口……というかっこいいんだけれどもネガティブというイメージを伴います。しかし、このスペンサー。体は鍛えるわ、めちゃくちゃおしゃべりだわ(彼女に演説しまくり。これ彼女嫌じゃないのかなww)、料理はするわ、お節介だわでものすごい健全な生活を送っています。それが、彼の思う男道を全うするために必要なことだからなのでしょう。

 今回彼のところに舞い込んできたのは旦那に息子のポールを誘拐されたので取り戻してほしいという奥様・パティからのご依頼。しかし、スペンサーはポールの父親も母親も、どちらもポールを愛してはおらず、お互いを不快な思いにさせるためだけに子供を取り合っていることに気づきます。その証拠にポールはろくなものも食べさせてもらっておらず、日がな一日テレビを見ることしかせず、無気力・無感動な生活を余儀なくされていました。
 お節介なスペンサーはひとまずポールを引き取ることを考えます。しかし、スーザンとの家庭生活のことや、探偵としての危険な生活のことを考えるとポールを養子として引き取ることなどは考えられません。そこで、スペンサーはポールに自立して生きることと、その方法を教えることにしたのでした……。

以下ネタバレ

 私は20代前半のころ、ポールと同じように無気力無感動だった時期があって、同じように毎日テレビを見ては、まっすぐに座っていられるだけの筋力も無く、自分がこうなってしまったのはすべて周りの人間のせいだと青臭いことを考えていました。そんなときにこの小説に出会えていたらなぁと思わず思ってしまいました。
 やりたいことが無いのなら徹底的に体力づくりをさせるというスペンサーの教育方針は大賛成です。体力が無ければやりたいことができてもできないし、そもそもやろうとする気力がわきません。習慣教育で有名な今村暁さんがやっておられる個人塾は、無気力・無関心な不登校な子が多かったらしいのですが、そこでもまずさせることは勉強ではなく腕立て伏せなどの体力づくりだったようです。
 運動が苦手な人からしたら「脳みそ筋肉かよwww」と思うかもしれませんが、これって本当に大事なことだなと思います。心の弱い人は筋肉を鍛えて自分を強く見せるともいいますし、心の不安を解消するには、肉体の改造はとても良い手法なのだと思います。

 日に焼けて、たくましく成長したラストシーンのポールには、かつてのひょろっこくて生気を感じないガキの面影はありませんでした。ポールの「なにも自分のものにすることができなかった」という言葉に対するスペンサーの一言は、まさしく名言であります。

 大人になるということは自分の心と体を鍛えて、自分の責任で自分の人生を生きることなのだということを教えてくれたすばらしい作品でした。高校生におススメしたい本ですね。
笑う科学 イグ・ノーベル賞 (PHPサイエンス・ワールド新書)/PHP研究所

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 引きこもりをこじらせて対人スキルに多分に難のある管理人です。

 先日、初対面の方とランチを一緒に食べる機会があったのですが、緊張しすぎて出てきたバターをチーズと間違えてパクリといってしまいました。もうね、コミュニケーションスキルとかの問題じゃない。そういう星の元に生まれてきたんだなと思いました。ケンシロウが北斗神拳を継ぐ運命なら私はバターを食べる運命なんだわ。

 本日の本は志村幸雄さん『笑う科学 イグ・ノーベル賞』です。

 イグ・ノーベル賞というノーベル賞をパロった賞があるのを皆さんご存知でしょうか。日本人も何人も受賞してますし、大々的に報道もされるのできっと知っている方が多いのではないかと思います。本書はそのイグ・ノーベル賞の精神と、飽くなき探求欲と、人と科学とのあり方についてユーモアセンスを交えながら楽しく知ることができる本となっています。

 イグ・ノーベル賞は「まず人を笑わせ、そして考えさせる」研究が受賞対象となるようです。最近のもので言うと牛糞からバニリン(バニラのいい香り)を抽出した研究が話題になりましたよね。ほかにも犬とお話できる夢をかなえたバウリンガルや、カラオケなんかが有名でしょうか。どの研究も「えwwなにそれww」という笑いを含んだ着眼点と、科学に裏打ちされた考えさせる内容を兼ね備えていると思います。

 読んでいて面白いなと思ったのが研究というものを「良い・悪い」「使える・使えない」という二極化して考えることに対して警鐘を鳴らしているというところです。事業仕分けで科学予算を削るということが一昔前に話題になりましたが、研究には膨大な費用がかかるため「お金にならなさそうな研究は意味が無い、するな」と考えるのは至極当然なことだと思います。しかし本来の科学ってそんなもんじゃないよね、と。面白くて、驚かされて、些細なことだけど興味深いことを科学していたら評価されるべきだよね、という精神にいたく感動しました。

 もちろん「水に記憶力がある」といったオカルトじみた根拠のない研究もあったようです。もっともこの人はその研究成果ではなく「しつこく主張しつづけたで賞」みたいなものをもらっています。

 笑える小説を書くのは実は泣ける小説を書くのより難しいという言葉を聴いたことがありますが、人を笑わせる実験をするには自分がその対象を面白がる力がないと難しいのだと思います。一級のユーモアセンスと、不屈の探究心を持った研究者の皆さんはとても輝いて見えました。
 
のはなしし/宝島社

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 伊集院光さんといえば、クイズ番組の常連。誰も知らないようなマニアックな知識を披露したり、ものすごいひらめきで答えを導き出したり、可愛いイラストを書いてみたり、多才で博識なインテリ芸能人というイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。

 しかし、彼の真価はそんないい子ちゃんぶったクイズ王ではなく、下ネタ童貞大歓迎の『深夜の馬鹿力』ラジオパーソナリティにおいて発揮されるのであります。もちろんこの本も例外ではなく、う○この話、ラブホテルの話(もちろんそれだけじゃないんだよ!)で私達を楽しませてくれます。本作は『のはなし』シリーズの第4弾。

 「あ」から「ん」の言葉で始まる各エッセイは一つ一つが2~3ページと短いのですが、これが面白いのなんのって!!電車で読んじゃいけませんよ!!私は笑いの沸点が低いほうだと思いますが、声を上げて笑ってしまいました……。

 私は野球の知識が皆無なので野球のお話だけはちょっと良く分からなかったのですが、そのほかはどれもこれも面白いです。好きなのは「脳波」の話。カレーライスとウルトラマンを思い浮かべることで右に曲がったり左に曲がったりするロボットのお話。そんな落ちがあったとはwww人間の脳って面白いなぁww
 あとは「種田山頭火」の話。17文字にも満たない句?であんなに情景が広がるのはものすごいな!と関心。それと「好きなアニメ」の話。これあるある!!自分がなんとなく好きだな~と思っていたものを突き詰めていくと同じ監督さんだったり同じ原作者さんだったりするする!!伊集院さんのはそれのマックスレベルのすごさ!あと奥さんが超絶対人スキルを所有していて伊集院さんだけが犬と遊んでいるお話もなんだかよくわかる。

 クスッと笑って、ちょっとぞっとして、ああ!と膝を打って、とても幸せな読書体験でございました。読み終えちゃうのがもったいない!せかすと原稿をかけなくなるとおっしゃっていましたが、是非また書いていただきたいものです。