笑う科学 イグ・ノーベル賞 (PHPサイエンス・ワールド新書)/PHP研究所

¥864
Amazon.co.jp

 引きこもりをこじらせて対人スキルに多分に難のある管理人です。

 先日、初対面の方とランチを一緒に食べる機会があったのですが、緊張しすぎて出てきたバターをチーズと間違えてパクリといってしまいました。もうね、コミュニケーションスキルとかの問題じゃない。そういう星の元に生まれてきたんだなと思いました。ケンシロウが北斗神拳を継ぐ運命なら私はバターを食べる運命なんだわ。

 本日の本は志村幸雄さん『笑う科学 イグ・ノーベル賞』です。

 イグ・ノーベル賞というノーベル賞をパロった賞があるのを皆さんご存知でしょうか。日本人も何人も受賞してますし、大々的に報道もされるのできっと知っている方が多いのではないかと思います。本書はそのイグ・ノーベル賞の精神と、飽くなき探求欲と、人と科学とのあり方についてユーモアセンスを交えながら楽しく知ることができる本となっています。

 イグ・ノーベル賞は「まず人を笑わせ、そして考えさせる」研究が受賞対象となるようです。最近のもので言うと牛糞からバニリン(バニラのいい香り)を抽出した研究が話題になりましたよね。ほかにも犬とお話できる夢をかなえたバウリンガルや、カラオケなんかが有名でしょうか。どの研究も「えwwなにそれww」という笑いを含んだ着眼点と、科学に裏打ちされた考えさせる内容を兼ね備えていると思います。

 読んでいて面白いなと思ったのが研究というものを「良い・悪い」「使える・使えない」という二極化して考えることに対して警鐘を鳴らしているというところです。事業仕分けで科学予算を削るということが一昔前に話題になりましたが、研究には膨大な費用がかかるため「お金にならなさそうな研究は意味が無い、するな」と考えるのは至極当然なことだと思います。しかし本来の科学ってそんなもんじゃないよね、と。面白くて、驚かされて、些細なことだけど興味深いことを科学していたら評価されるべきだよね、という精神にいたく感動しました。

 もちろん「水に記憶力がある」といったオカルトじみた根拠のない研究もあったようです。もっともこの人はその研究成果ではなく「しつこく主張しつづけたで賞」みたいなものをもらっています。

 笑える小説を書くのは実は泣ける小説を書くのより難しいという言葉を聴いたことがありますが、人を笑わせる実験をするには自分がその対象を面白がる力がないと難しいのだと思います。一級のユーモアセンスと、不屈の探究心を持った研究者の皆さんはとても輝いて見えました。