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笛吹きの備忘録

おばあさんのモノワスレ対策ブログです。
アマチュア楽団でフルートを吹いています。
お芝居が大好き!

二兎社の『こんばんは、父さん』を観てきました。

私、二兎社主宰の永井 愛さんが作る社会派コメディが好きなのね。重いテーマなのに、笑っちゃうし、観終わってズシンとくるけど、どこかに光も灯ってるんですよ。
 
劇場は、所沢ミューズ、先日、避難訓練をしたところです。
ミューズには目的別に三つのホールがあり、演劇は、主に馬蹄型のマーキーホールで行われます。
シェクスピア劇場みたいな素敵なホールでしょ♪
徒歩圏内に、こんな良い芝居小屋があるのですが、観たいと思う作品が地方公演で所沢に回ってくることは滅多にありませぬ…。
足腰弱っても、介護タクシーで観劇する気満々なんだけどなー
 
さて、『こんばんは、父さん』は、昨年末、六本木の俳優座劇場で20日間公演したあと、地方公演で全国を回っていて、その一つが埼玉の所沢でした。
そう! 1日限りの地方公演なんですよ。絶対に観るぞ!と、ミューズメンバーズ先行発売初日10時にアクセス、なかなかの良席チケットを取ったのでした。
 
この作品は12年ぶりの再演です。
2012年の初演キャストは平幹二朗さん、佐々木蔵之介さん、溝端淳平さんで、再演キャストは、風間杜夫さん、萩原聖人さん、竪山隼太さんです。
初演チームはギラギラ、再演チームは飄々、というのが私の抱いたイメージなんですが、時代を鋭く切り取って劇作してきた永井愛さんが、今回、再演に込めた思いは、このキャスティングに表れているのでは…?
 
 
まずは、父さん役の風間杜夫さんです。
集団就職から身を起こして、町工場の経営に成功し、ものづくり一途で日本経済を支え、バブル期には派手な暮らしも経験しましたが、景気悪化を乗り切れずに倒産、妻子も従業員も見捨てて雲隠れし、今は、闇金の取立て屋から逃げる日々を送っているオヤジです。
風間杜夫さんの落ちぶれ具合が程よくて、投げやりのようなテキトーなような、絶望的状況なのに呑気そうで、いろいろあった昭和を生きてくると、こんな感じになるのかも…と思わせます。
 
息子役は萩原聖人さんです。
ものづくりに誇りを持つ父に憧れ、工業系の進学を希望してたのに、父に反対され、言われるまま一流大学で経営を学び、一流会社に就職、順風満帆のはずが、エビ養殖ビジネスの詐欺に引っ掛かって、借金を抱え退職、そして離婚、今は、ホームレス状態…。
萩原聖人さんは影の薄い役がハマりますね。回想で、羽振りのいい時代を演じるのですが、そこはちょっと無理があったような…。
でもね、物語の終盤で、子どものころ、父のものづくりの姿をじっと見つめていたことを思い出し、その階段に座ったときの背中が痛々しくて、そっと手をおきたかったです…。
 
そして、闇金取立て屋の竪山隼太さんが熱演でしたね。
言葉も行動も軽薄な若者なのに、取立てのためなら努力を惜しまない。昨今の、闇バイトで強盗を働いてしまう若者も、こんな感じなのかなーと納得しちゃいました。
 

初演から12年が経ち、「がんばろう日本」の掛け声はいつの間にか聞かれなくなり、世の中は、みんなで力を合わせたってどうにもならない困難に溢れています。

でも、もう一度「こんばんは、お父さん」と呼びかけずにはいられない。すぐに逃げる、責任をとらない、問題をずらす、そんなお父さんたち、こんばんは…ってね。

 

ポスターには、青い地球を背景に「壊されないうちに、来てください」とありました。

永井愛さんは、だれに希望を託しているのでしょう。

ちなみに、観客は、ほぼ高齢者でした…。