先週に続き、また東京芸術劇場です。
地下のシアターウエストで、二兎社の『パートタイマー・秋子』を観てきました。
テレビ画面で見てもお美しい方ですが、生の沢口靖子さん、うっとり見とれるほどおキレイでした…。
月並みな表現ですが、お人形さんみたい…。
…で、その沢口靖子さんが演じる、お人形さんのような美貌のセレブマダムが、夫の失業によって、スーパーマーケットで働くことになる、というお芝居です。
ところが職場は、理想を掲げる科捜研とは大違いのブラックなスーパーマーケットでして、在庫管理はデタラメで、売れ残り精肉の賞味期限は改ざんするし、スタッフはレジを通さず商品を持ち帰るし、さて、その現実に、ヒロインの秋子さんはどう対処するのか…?
科捜研のマリコさんのように、万引きした品物から巧みに推理を働かせて、万引き老人の素性を明らかにしちゃう!なんて場面もありましたが、やはり新米パートである秋子さんは、職場でのさまざまな不正には目をつむるしかないのです。
だって、失業中の夫に代わって、生活費を稼がなくてはならないのですから…。
エーッ! マリコさん! それでいいの?
と、観客のほとんどは思ったでしょうね。
だって、沢口靖子さんの演技って、科捜研のマリコさんと変わらないんだもの…。
でも、それが、作・演出の永井愛さんが目論んでいたことなのかも…。
二兎社が提供するお芝居は、「自ら考える姿勢を演劇の場から発信し、観客自身を当事者にする『考えるエンターテイメント』」(二兎社HPより)なのです。

これまでいくつか作品を観てきましたが、どれも、今を生きている普通の人々が、時代の流れに振り回される現実を面白おかしく描いており、アハハと笑っちゃうんだけど、何だか心にザラッと触れてくるものがありました。
笑っている自分もまた、この同じ時代を生きていると思い知らされるお芝居なのです。
その、二兎社のお芝居に、正義の人!科捜研のマリコさんがやってきて、バッサリと現実の困難を解決したりはしませんのよ。
正義は無力…。
マリコ、いえ、パートタイマー秋子さんは現実を受け入れます。
「ここで生きてみるわ」とつぶやいて、芝居の幕はおりました。