四旬節に罪人だらけのお芝居を観た件 | 笛吹きの備忘録

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おばあさんのモノワスレ対策ブログです。
アマチュア楽団でフルートを吹いています。
お芝居が大好き!

2月22日から四旬節に入りました。 

キリスト教ではイースター(復活祭)の前の40日間を四旬節というのです。

去年は、ちゃんとブログに書いてましたよ。


四旬節のテーマは節制と回心です。
神徒たちは自身の信仰生活を振り返り、何か一つ我慢するとか、ちょっと苦しいことを自分に課してみたりします。
…にもかかわらず、私は大好きな観劇に出掛けてしまいましたとさ…。

渋谷Bunkamuraコクーンシアターで、『アンナ・カレーニナ』です。

主演は宮沢りえさん♪♪♪
きれいでした…。

トルストイの長編(新潮文庫で上中下の3冊ですぞ!)を、3時間25分のお芝居にするのだし、主演は宮沢りえさんなら、これはエピソードをアンナに絞った脚本だろうと思っていたら、いえいえ、ほぼ全ストーリーでしたよ。
でも細かい説明がないし、展開速いし、原作を知らないと、えっ?今の、どーゆーこと? となりそうです。
個々のエピソードがサクサクと積み上げられ、クライマックスに進んでいきます。繰り広げられるドラマは、すべて人間の欲のぶつかり合い!
客席に向かってホンネを吐きつつ、向き合っては、相手の望むように(あるいは自分に都合の良いように)愛の会話をつなげようとする男と女、しかし、愛も赦しもすれ違うばかり…。

裏切り、嫉妬、疑心、さまざまな罪を登場人物たちが告解のように語ります。
放蕩の末に無惨な死を迎えるニコライは、十字架上のイエスのような衣装を着けていました。
キティが献身的に看取ります、マグダラのマリアのように…。
愛することにも、愛されることにも絶望したアンナは神に救いを求めるかのようにつぶやきます「モルヒネを!」と、そして鉄道自殺…。
最も大きな罪である自殺です。

舞台には、オモチャの木馬やドールハウス、顔のないマトリョーシュカが雑然と置かれ、場面転換は役者たちが椅子の配置を変えることで示されますが、すべてのエピソードが、散らかった子ども部屋で起きていることは変わりません。
すべては、父である神によって俯瞰されているイメージなのだと、私には思えました。

ラストシーンでは、リョーヴィンとキティが子ども部屋の後方、丘のように高くなったところに立っていました。
しっかりと向き合い、そして、激しく罵り合います。
客席にホンネをつぶやくことも、カッコつけて愛を語ることもしません。
ありのままの自分を見せ合い、求め合い、それが愛だと気付きます。

そして、幕…。

はぁ~、重たい…。

※舞台写真はシアターコクーンHPから、お借りしました。