よくお手伝いに行くお寺に最近新しく入られた、それほど年配ではないくらいの年齢の女性職員の方が、「蚊は叩いてもいいんでしょうか?」と、私ではない在家の一般職員さんに尋ねておられた。
職員さんが困惑して、駄目ということでもないけれど、みたいに言葉を濁しておられる横から珍しく割り込んだ私は、えらい! そのお年でそんな質問をすること自体がえらい! と褒めさせて頂いた。
そしてついでに、私は蚊を叩かないけれど、ここは自分のお寺ではないので、そこまでなかなか職員の皆さまに指導できないんですということも、付け加えさせて頂いた。その職員さんに聞かせる意味合いも込めながら。
ちなみに、私がタイのお寺で修行していた時には、単純に蚊や他の虫を殺してはいけないと教えられた。蚊や蟻が体に登って来たら、虫を息で吹いたり、指で弾いたりして、やり過ごしたものだ。
タイのお寺に住んで間もなく、腕を這う蟻を弾き損ねて、殺してしまったことがある。何としても戒律を守らなければならないとあくせくしていた修行し始めの私が慌てていると、10才ぐらいの小僧さんが、わざとしたことでないのなら、拝んでおきなさい、合掌(ワイ)しておきなさいと言ってくれた。
だから、「蚊を叩いてもいいんでしょうか?」と聞いて下さったそのお気持ちは、とても大切なことだと思う。
おしまい。
※「ホームページ アジアのお坊さん 本編」もご覧ください