浄土真宗の僧侶でもある学者の方が開発しておられる、ブッダの教えを基に悩みに答えるAI「ブッダボットプラス」に関しては以前からさして深い意義も感じていなかったところ、仏教国家として独自の道を歩むブータンが「ブッダボットプラス」を国ぐるみで導入するというニュースを聞いて、こちらには少々驚いた。
日本テーラワーダ仏教協会のスマナサーラ長老なら何とお考えだろうかと思って検索したら、「道徳ロボット AI時代に欠かせない「幸せに生きる脳」の育て方」という本が見つかった。
同書の該当箇所に当たってみたところ、そちらは「ブッダボットプラス」を開発したのとは別の、AIに「道徳エンジン」を搭載する試みをされている学者さんとの対談だったのだが、当然ながらスマナサーラ長老はAIよりも仏法を遥かに優位に位置付けているのが、よく感じられた。
ただ、その著作は2018年の発行だったので、それ以降の現在に至るAIの進歩にはすさまじいものがあるけれど、おそらく長老のお考えはさして変わっておられないだろうと思う。
ちなみに世の中にはAI礼讃主義者か或いは反対に底の浅いAI反対派の学者さんたちが多い中で、しっかりとAI社会に警鐘を鳴らしている「サピエンス全史」「ホモ・デウス」「NEXUS」などの著者ユヴァル・ノア・ハラリ氏のことを、歯に衣着せぬスマナサーラ長老が「道徳ロボット」の中で「頭がいい」と評価しているのが、印象に残った。
ところで、2024年のタイドラマ「イツカ、ミライハ(อนาฅต Tomorrow And I)」という、4エピソードから成るオムニバスSFドラマの内の第3話「信心もハイテク化(ศาสดาต้า Buddha Data)」は、AI時代の仏教を描いた傑作なので、AIと仏教の関係を考えるに当たっては、必見の作品だ。
いずれにしてもお坊さんや仏教徒は、仏法というものはAIの進歩を含めたこの世のすべての事象を包含して解決し得る科学的で明解な真理なのだという確固とした信念を、常に胸に刻んでいたいものだと思う。
おしまい。
※「ホームページ アジアのお坊さん 本編」もご覧ください。