「お坊さまと鉄砲」は、監督も出演者も本物のお坊さんであるブータン映画「ザ・カップ 夢のアンテナ」以来久々のブータン製お坊さん映画だ。
監督のパオ・チョニン・ドルジ氏は「ザ・カップ」の監督であるケンツェ・ノルブ氏に師事した方だそうだが、僧院のお坊さんたちがワールド・カップを見たくて奔走する1999年制作の「ザ・カップ」と、ブータン国家におけるインターネット導入やテレビの普及、国王の退位と民主制への移行に伴い初の「選挙」が行われることになった2006年当時のブータンを舞台にした「お坊さまと鉄砲」(製作は2023年)を見比べると、ブータン社会の変遷と、それとは反対に変わらずブータン社会に一貫している事柄が、よく理解できるように思う。
ブータンならではのお国柄と美しい自然、ブッダの教えと民主主義の大切さを、のどかで、かつ奇妙な筋書きで描く「お坊さまと鉄砲」の素晴らしさは既に多くの方が触れておられるところなので、お坊さん目線で印象に残った点だけを述べさせて頂くことにする。
何よりも先ずプロパンガス1本を担いで山を登るお坊さんの描写に、その修行生活の在り様が込められているのがとてもいい。
また、同じお坊さんが大金を目の前にして「使い道がない」と口にする場面も素晴らしい。ごく普通の人格を持ったお坊さんが、ごく普通にそんな暮らしをしていて、自分もそう在らねばならないなあと、つくづく羨ましく感じさせて頂いた。
久々のお坊さん映画の傑作だ。
※ブータン、タイ、日本、韓国その他のお坊さん映画については、「ホームページ アジアのお坊さん映画」もご覧ください。
※ホームページ以降の最新情報は「その後のアジアのお坊さん映画」もご覧ください。
※私事ながら、日本寺の駐在同期の日本人のお坊さんの中にチベット仏教系僧侶の読経ができる方がいて、よく私に実演して下さったことを、映画の勤行シーンを見て、懐かしく思い出しました。