閻魔大王「火の車持って迎えに行け」
赤鬼「火の車はガス会社に貸したままになっとりまんねやが」
大王「あれまだ返さんのかいな、あれ。早う行って取り返しといで。火の車が欲しかったら噺家の家へ行け言うて……。ぎょうさん回ってるさかいな」
ー 桂米朝「地獄八景亡者戯」(ちくま文庫版より)
人間の足というのはよく出来ているなあと思うのだが、本当に何も考えていなくても、体力さえあればどこまでも自分を運んでくれる。托鉢行脚の旅に限らず、なるべく歩けるものは歩いて行きたいと思うのだけれど、世の中にはついそこまで行くにも車でなければ行けない人の、何と多いことだろうか。
それだけならまだしもながら、乗りたい車に執着し、他人と自分の車を比べてみたりする。この年になっても自分はまだこんな車なのに、自分より若い人があんな車にとか何とか、もうこの年になったら、後はあの世からお迎えが来るのを待つばかりで、月並みな言い方ではあるが、あの世に金や車は持って行けないのだからと思って詠んだ拙い一句、
行く末に 格差はなくて 火の車
おしまい。
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