「火刑法廷」「謎のクィン氏」併読のこと | アジアのお坊さん 番外編

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ジョン・ディクスン・カーの名作「火刑法廷」を読んだのは中学生くらいの頃で、残念ながらトリックも、そしてあの有名な結末も、何かの本で読んで知ってから読んでいるので、大きな印象は残らなかった。

 

この度、何十年かぶりに新訳で読んでみたら案外読みやすく、そして評価通りよく出来ていて、要はカーの見事なストーリー・テリングを、中学生の私が読みこなせなかったのだろうと思う。

 

一方の「謎のクィン氏」はアガサ・クリスティーの有名な短編集。ほぼこの短編集にしか登場しないのに、ハーリー・クィン氏という不思議な存在の探偵のことは、旧版の「アガサ・クリスティー読本」などを読んでいたので中学生の頃からよく知っていた。

 

しかし、なぜか一度も読んだことがなく、実は今回が初読。これが実にミス・マープル物の名短編集「火曜クラブ」並みに面白かった。

 

私が特に気に入ったのは「世界の果て」。ただし、この短編集も中学生の時に読んでいたら、ここまで印象には残らなかっただろう。初読の分際で偉そうなことは言えないが、プロットとテーマが渾然一体となった滋味溢れるこの作風は、見事の一語に尽きる。

 

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