アジアの坊主割引 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

お坊さんでない方はご存知ないと思うが、観光寺院などで拝観料を設定しているお寺であっても、お坊さんからは拝観料を取らないことが多い。

在家からお坊さんになった私は、初めてこのことを知った時には驚いたものだが、その後、アジアで修行するようになって、海外でも仏教寺院の場合は、これと似たような事情だということが分かった。

その辺りの事情を「ホームページ アジアのお坊さん 本編」において、「坊主割引」というタイトルの下、一章を設けさせて頂いた。もちろん「割引」とか「無料」という言葉は適切ではないのだが、お坊さんが拝観料を払わずにお寺に入れる、という事情を、とりあえず「坊主割引」と呼ぶことにした。

ここでちょっと、私がお坊さんになってから見聞きした坊割事情を、いくつか列挙してみようと思う。

・お坊さんになりたての小僧修行の頃、先輩の小僧さんたちと一緒にお寺の御用で遠方に外出して、その途中、とある有名観光寺院をお参りしようということになった。そのお寺で拝観料は要らないと言われ、先輩たちもまだ未熟で坊主割引のことを知らず、みんなで「いけません、いけません、ちゃんとお納めさせて頂きます」などと大騒ぎして、受付の方を困らせた。これが私の坊割初体験だ。

・大きな寺院の拝観受付での話。私が作務衣姿で声を掛けたら、職員の女性は私がお坊さんであれば拝観料を取らないつもりで、それを確認するために、たった一言、「僧侶ですか?」と仰った。自分で言うのも何だけれど、お寺の職員(それも超巨大寺院の受付)であるならば、例えば「失礼ですが、ご僧侶でいらっしゃいますか?」とでも言うべきではなかろうかと思ったものだ。

・ちなみに京都のとある禅宗の本山を拝観させて頂いた時は、受付の雲水さんが、「和尚さんでいらっしゃいますね?」と仰った。さすがだ。

・上記2例のようにわざわざ相手から確認されるのは、私が作務衣姿だった場合だ。作務衣というのは在家の方、すなわちお坊さんでない一般人の方でも着ることを許されているし、そういう方で頭を丸めている方だって、いなくはないからだ。

・法衣を着ていた場合であっても、「どちらのお寺様ですか?」「何宗のご住職ですか?」などと聞かれることがあるが、これが確認のためのマニュアルなのか、或いはただの興味や世間話で聞いておられるのか、私には分からない。

・尤も、我々同業者から見ると、立ち居振る舞いや物腰から、一般の方とお坊さんの区別を見分けることは、そんなに難しいことではない。やっぱりお坊さんになってすぐの頃、まだお坊さん姿で娑婆に出ることに慣れていなくて、普通の服に下(ズボン部分)だけは作務衣で、でも持ち物は頭陀袋、みたいな中途半端な格好でよそのお寺を拝観に行ったら、ご住職らしき立派なお坊さまが、お寺の方ですね? どうぞ結構ですからお入り下さいと仰って下さったので、変装しているつもりの私は大層驚いたものだ。

・普通は在家の方と一緒にお坊さんがお寺の拝観に来られた時は、お坊さんの分だけ拝観料を取らず、他の人の分の拝観料を納めてもらうのが一般的だが、中には連れているメンバー全員ごと、どうぞお通り下さいと言って下さるお寺さんもあって、有難いことだと思う。

以上、お坊さんでないとご存じなかろう日本のお寺の坊主割引事情、他にも書けばきりがないがこれくらいにして置いて、さて、表題に掲げた「アジアの坊主割引」については、先ほども触れた「ホームページ アジアのお坊さん 坊主割引」やタイのお坊さんのバス代が要らないことを紹介した、「ホームページ アジアのお坊さん お供養」などを、参照して頂ければ幸いだ。

で、そこにも書いたことだけれど、寺に参る以上はお供養をして当然だし、寺院の維持費としてなにがしかの金額を納める規定になっていたとしても一向に差し支えないが、サンガ(仏教教団)というものが宗派や国を超えて共通なのだとすれば、やはり僧侶は自由に世界中の仏教寺院に出入りできるのが、望ましいのではなかろうか。

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                    おしまい。


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