先月の初めに岐阜県関市の円空館を拝観させて頂いたら、木食戒(もくじきかい)の内容というものが掲げてあった。
私は木食戒と言えば単に穀断ちを守るくらいのものかと思っていたのだが、他にもたくさんの詳しい条項が記載してある上に、その条項に作歌や作仏までが含まれていたので調べてみたら、どうやら五来重(ごらいしげる)の「修験道の歴史と旅」という著作に、それが書かれているらしい。
早速、図書館でその本を見てみたら、以下のように書かれていた。
1 遊行回国と斗擻行道
2 木食行と断食行
3 勧進
4 作仏
5 作歌
6 加持祈祷
7 窟籠りと禅定
8 苦行と懺悔滅罪
9 島渡りと辺路修行
10 念仏・密教・法華経の併修
11 一心観
12 即身成仏観
13 入定と捨身
だが、しかし、よく読んでみたらその記述の前に「私は木食戒というものの内容を、とくに近世の木食行者の行動の共通点から推定したが、それは次のようなものである」と書いてある。
つまり上の条項は、あくまでも五来の推定に過ぎないのであって、その内容は戒律と言うよりも、木食行者の修行内容なのだから、この13項目を守るべく、彼らが戒を受けた訳では、ないのではなかろうか。
尤も、その前後にそれらを木食戒の内容だと推定した詳細な論考もなされているし、1993年に亡くなった五来重の膨大な修験道研究の業績を、些かも否定するつもりは私にはないのだけれど、上の13項目を木食戒だとして定着させてしまうことには、ちょっと問題があると思う。

※但し、この円空館の展示内容や学芸員の方の解説は大変に素晴らしいものでした。
おしまい。
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