アイリッシュのミステリを、中学生から高校生くらいにかけてよく読んだ。
カーやクリスティー、ブラウン神父シリーズといった海外ミステリをひとしきり読んだ後、そうした本格ミステリとはまた違った魅力の、サスペンス味溢れるウイリアム・アイリッシュの短編集に、まず夢中になったことを思い出す。
続いて読んだ何作かの長編については、最初に読んだ「幻の女」は名作の噂に違わず、大変に感銘を受けたし、さらに「夜は千の目を持つ」は、「幻の女」以上に素晴らしいと思ったが、その他の作品は「暁の死線」も含めて、美文調の書き出しだけが格好良いものの、肝心の物語にさほど引き込まれず、印象が薄いままだった。
きっと子供には大人向けの小説部分が難しすぎたのだろうけれど、今回、「暁の死線」の改訂版が創元推理文庫から出たので読んでみたら、正にその小説的な部分が、今の自分にはとても面白かった。
後々に読み返したことは一度もなく、全くストーリーを覚えていなかったのだが、今回読んだら書き出しの文章が虚ろな美文ではなく、物語の結末とも首尾が一貫していて素晴らしく、読んでいてとても気持ちが良かった。
「死線」や「暁」という単語が子供だった私に馴染みがなく、タイトル名が好印象でなかった覚えもあるのだが、ちなみに江戸川乱歩はその随筆の中で「Deadline at dawn」という原題を「夜明けの締め切り」と訳している。格好良くはないが、この方が確かに意味はよく分かる。
戦後、その乱歩がことあるごとに紹介に努めたため、大変に人気のあったアイリッシュ作品、当時からいろんな人が訳しているが、今回の創元の新版「暁の死線」は、近頃流行りの新訳ではなく、稲葉明雄の旧訳がそのまま使われていて、とても読み心地が良かった。
※各段落の頭文字を繋ぐと「あ・か・つ・き・の・し・せん」となるように工夫してみました。
おしまい。
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