下の写真は、タイのピサヌロークにある映画館で、2015年10月16日に撮影したもの。

「อาบัติ アーバッティ」というタイトルの、お坊さんが出て来る映画なのだが、映画における僧侶の扱いに問題があるとされて、検閲を受けたらしい。検閲後、タイトルの英語表記が「arbat」から「arpat」に変更になって、10月16日に公開されたという経緯を、映画のプロデューサーである Prachya Pinkaew(プラッチャヤー・ピンゲーオ) 氏が、「Bangkok Post」誌で語っている。下の写真は、現地で入手した2015年10月18日付けの「Bangkok Post」日曜版。


「マッハ!!!!!!!!」「チョコレート・ファイター」などの監督としても知られるプラッチャヤー氏は、このインタビューの中で、タイにおけるその他の僧侶や僧院を扱った映画についても触れていて、お坊さんミステリ映画の秀作「Mindfulness and Murder」にも言及している。
「Mindfulness and Murder」について、このブログで書いた時にも参考にさせて頂いた「タイ映画ライブラリ」というサイトに、今回の「อาบัติ」の詳しい情報も記載されていて、その中に、この映画のタイトルについて、おおよそ以下のような記述がある(長くなるので、失礼を承知で要約させて頂きましたが、よろしければ是非、元の全文をご参照下さい)。
…『アーパット(Arpat)』はパーリ語、タイ語では『アーバット(Arbat)を使う』との説明が製作者サイドのFacebookにありました。
また、タイ語の「อาบัติ(Arbat)」は「アーバット」と発音しますが、パーリ語の「อาปัติ(Arpat)」は「アーパッティ」と発音するようです。
ということは、現在のこの作品の正式なタイトルの発音は、「アーパッティ(Apatti)」ということになるのでしょうか?…
ちなみに、比丘に関する罪をパーリ語で「アーパッティ apatti 」と言うのだが、この言葉については「新・佛教辞典 第三版」(誠信書房)201頁の「罪悪」の項にも説明がある。
タイ語ではパーリ語や外国語の濁音が半濁音に変化するので、「アーパッティ」が「アーバッティ」になるから、多分、検閲の前と後の映画を区別するために英語表記を変えたのかも知れない。
ちなみに上の画像ではタイ語表記は「อาบัติ(Arbat)」になっているので、撮影時に映画館に来ていた通りすがりのタイ人の青年にタイトルを発音してもらったら、間違いなく「アーバッティ」だった。
⇒2020年5月20日追記
平松秀樹氏という研究者の方の論文「タイのヒット映画に見る地域性と時代性」(2017年3月付)の中にも、「2015年4位の「Arpat(อาปัต)」も同工異曲であろうか。こちらは検閲を受けて内容の一部をカットし、さらに「アーバット」(破戒)が「アーパット」と改題された。」とあるのだが、上に述べた通り、これらの経緯にタイ語、パーリ語、日本語(カタカナ)の発音と表記の問題が絡み合い、事態は非常にややこしい。
※2020年5月20日投稿の「その後のアジアお坊さん映画」もご覧ください。