タイの坊主ミステリ映画…Mindfulness and Murder | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

以前、ホームページ「アジアのお坊さん」本編「アジアのお坊さん映画 1」の中で、タイ映画にはしばしばお坊さんが登場するが、お坊さん映画と言って良いような作品が少ないと書いた後、2008年の「アラハン・サンマー」に至って、ようやくタイにもお坊さん映画と言える作品が出来たという意味のことを、「アジアのお坊さん映画 2」の中で書かせて頂きました。
 
さて、下の写真は、今回、購入した「ルアンピー・テン」というお坊さん映画の1と2がセットになったVCD。その後、現在までにシリーズが4作目まで作られている人気作品だそうです。
 
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「ルアンピー・テン」 (2005年)
「ルアンピー・テン 2」 (2008年)
「ルアンピー・テン 3」 (2010年)
「いたずらテンの空飛ぶ袈裟」 (2011年・タイ語タイトル เท่งโหน่งจีวรบิน)⇒下記参照
 
「ルアンピー・テン」は、「テン和尚」という意味で、ちなみに若めの僧侶を指すこの「ルアンピー」というタイ語を、私はいつもは「ルンピー」と表記するので、この映画のことも「ルンピー・テン」と書きたいところなのですが、日本語のいくつかのタイ映画サイトでは、執筆者の皆さまが大抵「ルアンピー」と表記しておられるので、この映画に関しては、敢えて皆さまの表記に準じておきました。
 
4作目の「いたずらテンの空飛ぶ袈裟」という日本語タイトルは、私の訳なので、もしも間違いがあれば、どなたかご教示くださいませ。ちなみに「袈裟」を指す「チーオン」(จีวร)というのは黄衣のことで、サンスクリット語、パーリ語の「チーヴァラ」のタイ語訛りです。
⇒「テーンとノーン 空飛ぶ僧衣」というのが正しい訳だそうです。「タイ映画ライブラリー テーンとノーン」というサイトが、詳しく紹介して下さっています。
 
さて、ここでやっと本題。「ルアンピー・テン」シリーズを遥かに凌ぐお坊さん映画を見つけました。見つけたと言っても、2011年に製作された映画なので、これも「ルアンピー・テン」シリーズ同様、日本語のタイ映画サイトで何人もの方たちが既に書いておられるのですが、私は今回、タイで初めて見させて頂きました。
 
英語タイトルは、「Mindfulness and Murder」。「mindfulness」とはテーラワーダ仏教用語の「sati=気づき」を指す英語ですから、訳せば「気づきと殺し」、「気づき殺人事件」といったところでしょうか。タイの僧院内でお坊さんが殺されるミステリ映画で、探偵もお坊さんなら、容疑者も全てお坊さん。まるで修道院内の連続殺人を修道僧が探偵する、ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」のタイ仏教版です。
 
賛否両論の有りそうな、結末における犯人の動機も含めて、内容が「薔薇の名前」の深みに達しているとは言いませんが、映画のトーンも「ルアンピー・テン」を始めとするタイ映画によくあるコメディ・タッチとは打って変わった重厚さです。
 
監督や原作などの細かい情報については、「タイ映画ライブラリー」という日本語のサイトが、詳しく解説して下さっているので、大変、参考になります。
 
何はともあれ、仏教が国民に根付き、一時出家経験者の多いタイのこと、「ルアンピー・テン」のような映画はもちろん、端役にお坊さんが出て来る程度の映画であっても、日本映画などより遥かに仏教僧の姿が正しく描かれているのが、タイ映画の特徴です。
 
この「Mindfulness and Murder」においても、「ヨーム」「ニーモン」「アヌモタナー」「チャルンポーン」といった、タイのお坊さんがよく口にする言葉が自然に使われていて、とても楽しめました。間違いなくこれは、「アラハン・サンマー」以降の、タイにおける素晴らしいお坊さん映画の傑作です。

  ご覧下さい!!

※色々と間違いがたくさんあったのを、2017年1月21日に、「タイのお坊さん映画」という記事を投稿した機会に、「タイ映画ライブラリー」を参考に修正させて頂きました。
謹んでお礼とお詫びを申し上げます。