「チェンナイ・エクスプレス」というインド映画は、祖父の遺灰をヴァラナシのガンガーと南インドのラーメシュワラムの2ヶ所に流そうとするのが話の発端で、これはヴァラナシとラーメシュワラムが、インドにおける北と南の二大聖地であり、両方で遺灰を撒けば絶大な功徳があると信じられているからだ。
大ヒットしたこの映画の出来不出来については、インド映画通の方々のサイトがたくさんあるから強いては触れないが、映画にも出て来る美しい聖地ラーメシュワラムは、インドの叙事詩「ラーマーヤナ」において、ラーマの猿軍が、魔王ラーヴァナの住むランカ島に届く岩の橋を掛けた場所として知られていて、今もスリランカとの間の海上には、点々と浮かぶ岩の連なりを見ることが出来る。
こうした天然の奇勝を見て、人間の神話的想像力が喚起されることは珍しくなく、日本でも和歌山県の南端の串本町に橋杭岩という名勝があり、こちらは点々と海上に浮ぶ岩の由来が、弘法大師に付会されていて、その伝説は、お大師さんが沖合いの島まで橋を掛けようとしたが邪魔が入って果たせず、橋杭だけが残ったというもの。
丹後の天橋立も同様で、イザナギノミコトが高天原に昇るために掛けた梯子が倒れて天橋立になったということが「丹後国風土記」に見え、後の「三国伝記」になると、文殊菩薩信仰が付会して、さらに伝説は複雑化して行くが、昔の人の想像力というのは本当に面白い。
ところで余談ながら、「チェンナイ・エクスプレス」の日本語字幕では、「ラッシー」というセリフが「バターミルク」になっていて、単に「ラッシー」でも、十分に今の日本人には通じるのにと思うし、「カシミールとカーニャクマリ」というのは、日本語で言えば、「北は北海道から南は沖縄まで」みたいな意味なのだから、いくら挿入曲の歌詞だとは言え、「北極と南極」と訳すのは、ちょっと意訳にも程があると思いますが、インド映画通の皆さまは、如何お考えでいらっしゃいますでしょうか?
⇒(追記)と思って調べてみたら、たくさんの方がこの映画の字幕の不備を、カシミールとカーニャクマリのことも含めて、既にたくさん書いておられました…。
※ホームページ「アジアのお坊さん」本編も是非ご覧ください!!
※お知らせ※
タイの高僧プッタタート比丘の著作の
三橋ヴィプラティッサ比丘による日本語訳CD、
アーナパーナサティ瞑想の解説書「観息正念」、
アーナパーナサティ瞑想の解説書「観息正念」、
並びに仏教の要諦の解説書「仏教人生読本」を入手ご希望の方は
タイ プッタタート比丘 「仏教人生読本」「観息正念」改訂CDーR版 頒布のお知らせをご参照下さい。
タイ プッタタート比丘 「仏教人生読本」「観息正念」改訂CDーR版 頒布のお知らせをご参照下さい。