BLACK SNAKE MOAN (2006)
【MOAN】とは~苦痛・悲しみのうめき(声)
この一見 センセーショナルなポスター・デザインを見た時は、
(変態サミュエルおやじがリッチちゃんを監禁するんやな)とエロい映画を想像しましたがww
実際には、魂の救済を描いたような、宗教色も濃い内容になっていて
想像とは全く違う作品。
だから、余韻も静かで、自分も救われたような気持ちになれました。
家のスグ近くで倒れていたレイ(クリスティーナ・リッチ)を助けたラザラス(サミュエル・L・ジャクソン)。
病院に連れて行くお金もないので家で看病。
鎖につないだのは、レイが夢遊病者のように徘徊して危険だから。
レイの心の痛みを感じ取ったラザラスは、彼女を救うために敢えて鎖につないだままでおく。
ビジュアルイメージはエロくても、
映画の中のラザラスとレイのあいだにはそんな雰囲気は全くなく、
パッと見 異常なシチュエーションも、
物語として見れば自然な流れとして受け入れることができます。
まるで 父親が娘を心配するような、
そこにはある種 無償の愛のような形が見えて、
セックス依存症でビッチなイメージしかなかったレイの表情もだんだん変わってくる。
それにしても、前半をほぼ半裸の状態で演じ切ったリッチはやっぱり凄い女優!!
こんな役を受ける根性のあるハリウッドの若手トップ女優は他に思い浮かばないというか、
こんな役はリッチしかできないと思う。
人が犯した罪は、それを犯した人間が悔いれば許されるものなのか?
もしそうなら、
傷つけられた人間の救いはどうなるのか?
この世の中には確実に【悪】は存在し、それは無くなることがない。
その【悪】の罪が許されたとしたら、
そいつに傷付けられた人間の救済はどうなるのか―?
いや、その罪が裁かれすらしない現実があったとしたら…。
その救いはおそらく自分の内に見つけるしかないのかもしれない。
いや、本当に信頼できる人間がそばに居てくれたら、そこに救いがあるんだと思う。
【悪】の方にはこだわらず、自分を愛してくれる目の前の【善】なる人間の方だけ見るようにしたらいい。
世間一般的には どいしようもない女なのに、
自分も深く傷付いているラザラスにはレイの痛みが理解できる。
だから、いつもなら説教臭い(笑)サミュエル親父がどこまでも優しいのがいい。
汚い言葉しか吐いてなかったようなレイが見せたこの表情―
人は、本当に信頼できる人間がそばにいたら こんなにも幸せになれるのか?
いや、幸せなんて甘いものとは限らない。 みんな傷を持っているから…。
でも、お互いの傷を理解し合い、
その傷をお互いの愛で癒すことができたら―。
傷を舐め合うとかいうことじゃなくて、
本当に純粋に相手のことを愛することができたら、
相手の問題も全て受け入れることができるはず。
誰の心の中にも、黒ヘビのうめきのようなものはあると思う…。
この映画を観たら、
自分にも鎖のように巻き付いていた黒ヘビのうめきから解放されたような気持ちになれます。
それがほんのひと時だったとしても、
それは間違いなく この映画が持つ癒しの力なんだと思います。