2022年よりバンド名をキーマカリーズからアルファベット表記へと改めたKiima Kariis。そのメンバーである、よしあきさん(ドラム、リーダー)とゴツローさん(ギター)に先日、配信された楽曲「逸脱」を中心にお話を伺った。
-まずバンド名の表記をキーマカリーズからKiima Kariisに変更されましたが、これはどういったことで?

ゴツロー∶前に名前を変えたのが2020年だったと思うんですけど、それほど深い意味も無くて、飽きたからバンド名そのものか、表記を変えたいと、だいせいと話してて。

よしあき∶本来の綴りであるKeema CurrysではなくKiima Kariisとしたのは、Kosakai Kazukiさんと同じイニシャルにしたくてそうしました。
(小堺一機 1956年1月3日生まれ 関根勤とのラジオ番組コサキン・シリーズで知られる)

ゴツロー∶BEASTIE BOYSがBAD BRAINSに憧れてBBにした的な。

よしあき∶なので略称は「K2」でお願いします。

-分かりました!以下K2という事で。字面的にも良いし、バンド名をコロコロ変えていくのは面白いですね!

ゴツロー∶小文字のiが2つ続くのは、そうすると北欧のハードコアパンクぽいからとだいせいから提案があってこうなったんです。

よしあき∶具体的な元ネタあったよね。

-Riistetytですかね?フィンランドの。

ゴツロー∶今、だいせいに確認したらRiistetytで間違いないようです。

-小堺一機とRiistetytの融合ってめちゃセンスいいですよ!!

よしあき∶ただ、わざわざ「改名しました」って発表するのも野暮なので、ライブをしていなかった期間にタイミングを見計らってしれっと変えたところはあります。

ゴツロー∶分かる人には分かるようにお尻からステートメントは出してたんですけどね。

-カタカナ表記を変更したのは、ドメスティックな立ち位置から少し方向転換していくのかとも思ったのですが。

ゴツロー∶イギリスのポストパンク、ゴシックの退廃感というのは今のK2の流れとして確かにありますね。

-新しいメンバー写真もモノクロということもあってデカダンスな趣で。
ゴツロー∶私だけデカダンスというより刑事風。つまり、あぶない刑事ダンスです。
(「あぶない刑事」1986年より放送されたドラマシリーズ)

よしあき∶山の中で寒かったのでかなり厚着してるんですよ。それでゴシック、ポストパンクっぽさ出てたのかも。

ゴツロー∶よしあきがマトリックスのモーフィアスみたいで惚れ直しました。

-最新曲「逸脱」もゴスに移行する過程のような雰囲気ありますね。今後、そっち方向に行くかは分かりませんが。

ゴツロー∶DEAD CAN DANCEの1stが衝撃だったんですよね。出音のギターの無機質な感じは自分でもやりたいと思って、その要素を取り入れようとはしました。

よしあき∶ゴツローのTwitterのアイコンはDEAD CAN DANCEのジャケットです。
(ゴツローさんのTwitterより)

-この頃のDEAD CAN DANCEはまだバンドサウンド的ですよね。

ゴツロー∶そうですね。まだバンドっぽいやつです。DEAD CAN DANCEは歌詞がどこの言葉でもない異言スタイルもかっこよくて。

-そして「逸脱」のドラムですが、呪術的なニューウェーブ、特に「What's THIS For...! 」辺りのKILLING JOKEを彷彿しました。

よしあき∶勿論、それは大きいです。が、ニューウェーブより、井上和香さんの動画を観て、ズボンのチャック付近をウェーブさせた事の方がドラムプレイに反映されてると思います。

ゴツロー∶KILLING JOKEも重要なのですが、ギタリスト的にはBAUHAUSも大きいですね。今後の方向性としてBAUHAUSは間違いなくキーワード。

-今回も楽曲制作のイニシアチブはよしあきさんが取られたんですか?

よしあき∶正直、この曲を思いついた時の事を完全に忘れてるんですけど、何となく速くて遅いポストパンク風みたいなのを目指してた気がします。

-確かに直線的でない不思議なテンポ感があります。

ゴツロー∶この曲のきっかけってベアーズでやった3人編成のライブじゃない?DONN名義の。

よしあき∶知らん。黙ってろ。レコーディングはスネアの口径変えたり、調節したぐらいで前回と大きく変わってないですね。

-ミックスに立ち会ったのは、ゴツローさんなんですよね?

ゴツロー∶ミックスは楽しかったですね!音にかなりいじってるのが出てると思います。

よしあき∶大まかな考えはケント・デリカット風の口調で伝えましたけど、細かいところはゴツローに任せてます。

ゴツロー∶だいせい・よしあきに意見を貰いつつ、それをまとめて僕とミキサーの江添さんでやりとりするという感じでした。江添さんには結構今までで一番めんどくさく要望を聞いてもらえて感謝です。

よしあき∶お口も臭かったと思うよ。

ゴツロー∶そう言えばミックスに関してベースの強力くんはノータッチでしたね。
(強力さんはK2に加入する前はベースを弾いたことがなかったという)

-強力さんはレコーディングの時どうでした?苦労されてました?

ゴツロー∶強力くんは極度の緊張症なので録音時、いつもよりだいぶピッキングが弱かったんですよ。

-確かにラフミックスの段階で聴かせてもらった時、ベースが弱い印象を持ちました。

ゴツロー∶はい。ベースの音が正直一番苦労したかもしれないです。ただ音量を上げるだけじゃバランス合うわけじゃないっていうか。結局、録り音の質にかかってるなっていうのを身をもって知れたのは勉強になりました。

-ボーカルは、今までだいせいさんのあの独特の節を持てあましていたように思うのですが、今回のは完成形とは言いませんが、かなりハマってますよ。かっこいい。
(左からボーカルのだいせいさん、ギターのゴツローさん、ドラムのよしあきさん)

ゴツロー∶1009!正直、ずっと声を聞いていると分からなくなってくるんですよね。だから、客観性を持つために定期的に録音物を作るというのはあるなと思いました。今後もそうしていきたいですね。

-ボーカル録り中のだいせいさんを見て、よしあきさんは爆笑されたそうですね。

よしあき∶自分に理性があると思い込んで歌ってたので笑ってしまいました。

ゴツロー∶歌詞で、御託を並べる人たちへの苛立ちを表現しつつ、自分が一番説教臭いっていう。

よしあき∶SNSの縮図ですね。

ゴツロー∶完全なるブーメランになってます!

よしあき∶ボーカルの彼曰く「これはオタクとニートの曲」。

ゴツロー∶Adoの「うっせぇわ」へのアンサーソングでもあるので、歌詞はアクリル板へ両手を使って書いてたそうですよ。
(Ado!?)

-ギターはどうでしたか?

ゴツロー∶エフェクターはライブの時にめんどくさいんで、極力持ち歩いて無いんですけど、録音の時はなるべく色々試した方が良いよなって家にあるやつ一式持ち込みました。結局使わないのも結構ありましたが。

-ゴツローさんとは夏とお正月に合宿という形で色々お話させてもらいましたが、レコーディングとライブは別物という意識がより強くなってきてますよね。
(2022年の正月合宿より)

ゴツロー∶分けて捉える考えが強まったのは、性的サービスを含むマッサージ店で尻なぞりを体験して以降だと思います。

よしあき∶でもお気に入りの人が突然退店したんやろ。

ゴツロー∶ところが!最近、その女性の居所を突き止めたんですよ!!それが日々の生活の中で今一番盛り上がっているところです。

-合宿の時にゴツローさんが「面白い方向に転がるのなら自分はギターじゃなくても構わない」と言ってたのは驚きと共に感動しました。楽器出来る人ってその出来ることが足枷になって音楽性の幅を狭めているのではないかと思っていたので。
(2021年の夏合宿より)

ゴツロー∶そうですね!ライブは普通に今までの編成で楽しいんですけど、音源制作でその編成にこだわる必要は無いかなって思ってて。ギターも弾かなくていいし、シンセや川合俊一なんかも使っていきたい。

-という事は、ゴツローさんがここ最近よく聴かれているBLACKEST EVER BLACKやPASSION、MODERN LOVEといったレーベルの音像が反映されることもありそうですね。

ゴツロー∶そのモチベーションは高まってます。難しくてあんまりうまいこと言えないんですが、今の私のモードである「無機的でありたい」というのはその辺がインスパイア元ですね。

よしあき∶僕はシューゲイズじゃないですけど「霧」みたいな感じで作っていきたいですね。ミニマルなドラムで、必要な部分だけ聴こえたらいいと。

ゴツロー∶「霧」はあるかも。

よしあき∶K2の曲というのは、工程として自分のドラムから作るんで、どこまで削ぎ落として、どこまで伝わるかわからないですけど。

ゴツロー∶ピート・ナムルックのFAXも最近のお気に入りで、あれも「霧」感ありますね。車を買って、車内で音楽を聴くことが増えたんですが、そういう音楽とコサキンのラジオが一番自分の性に合ってると思うことが多いです。

-ピート・ナムルックはリリース量多くて集めるの大変じゃないですか。

ゴツロー∶リリース量多いですよね!全貌把握できないです。まさに霧の中を彷徨ってるような。

-ライブについてですが、スタンディングより座って観てもらいたいと言ってましたよね。ライブハウスというのにもこだわりなく。

ゴツロー∶INCAPACITANTSが山奥でやってるのあるじゃないですか。ああいうのやりたいんですよ。

よしあき∶あのINCAPACITANTSは全員が反応してないのも含めて良いです。

ゴツロー∶なので、よしあきは超大型発電機の購入資金を準備しているところなんですよ。

よしあき∶これは結構、本気です。

ゴツロー∶K2流のレイブやります。

-そういった独自の活動視野を持つK2から見て、同世代で似た感覚を持った人っていますか?

ゴツロー∶moreru!ホラーを感じます。めちゃくちゃかっこいいと思う。メンバーの人たちも面白いし。

よしあき∶TOMATO KETCHUP BOYSとか。

ゴツロー∶武知くんとは正月合宿で江ノ島ドライブに行って…。

-その時、私が武知さんが注文した、しらす丼を自分のと勘違いして食べてしまいました。

よしあき∶切腹もんですね。
(TOMATO KETCHUP BOYSのドラムを担当している武知さん)

ゴツロー∶北海道のCARTHIEFSCHOOLもいいですよ。また一緒にライブしたい。

-最後に、配信用のジャケット画像を昔の8cmCDを意識した縦型にしたのはなぜなのでしょう?

ゴツロー∶配信サービスでも、シングル曲が短冊ジャケのままリリースされていて。だいせい曰く広末涼子とかいうしょうもない奴のがそうらしいんですけど。それで良いんじゃないかとなりました。

よしあき∶なので、これを盤としてリリースする時は8cmで出す事になるでしょう!

-Hi,how are you?の伝説のシングルのようにですね!

ゴツロー∶名盤!

よしあき∶必聴盤!
(Hi,how are you?のシングル「バンホーテン」は当時としては珍しい8cmシングルとしてリリースされ、その心意気は吉田豪さんからも称賛された)

-今日はインタビューありがとうございました!

ゴツロー∶2020年後半くらいからアルバム制作に向けて曲は作っていたんですけど、なんとなく頓挫して…。でも今年中には形にしたいと思ってますので震えて待っててください。

よしあき∶出してくれるレーベルも待ってます!そんなわけで…。

二人∶パッホーン!!


2021年1月1日に6枚目のアルバム「High School, how are you?」をリリースするHi,how are you?の原田さんに2020年を振り返ってもらいました。
(2月21日DER PLANのライブが行われた東京ドイツ文化会館にて、ピエール瀧と)

まずはこの記事のBGMとして最新アルバムからこちらを

【1月】
原田∶年明けてすぐ「恋の賽銭泥棒」の配信リリースがあったのですが、その日の夜、景気づけに都内の某洋食屋にご飯を食べに行ったら寺門ジモンも来てて、たまたまカウンターで真隣になったんですよ。

-やな年始ですね。世の中的にはセンター試験が今年をもって廃止になりました。

原田∶当時一応受けましたよ。既に大学受かってたんですけどね。でも担任に無理やり受けさせられて試験中半分くらい寝てました。クラスメイトからはかなり白い目で見られてましたけどね。ダハハハ!

-とんねるずのサブスク解禁もこの月です。

原田∶これは大きい出来事ですよ。これを機にとんねるずの有名曲を一通り聴いてみたのですが、ディスコ、ファンカラティーナもどきな曲が多くて、曲作りのヒントを得られました。芋づるでKID CREOLE & THE COCONUTSを聴いてみたり。

-ZE RECORDSだと他にどういうのが好きですか?

原田∶THE WAITRESSESは好きですね。ZEの二面性はかなり面白いですよね。

-意外な所でSHAMPOOがTHE WAITRESSESのカバーやってるんですよ。

原田∶それは知らなかったです!ZEはソロの女性も印象的な人が多い。CRISTINAはコロナで亡くなっちゃいましたね。

-エッ!そうなんですか!!

原田∶話をとんねるずに戻すと10月にリリースした「逢魔がドキドキ」では「ガラガラヘビがやってくる」のノリさんの〆を引用したりと今思い返せばこの時の解禁の余波でしたね、あれは。

【2月】
-Hi,how are you?としては8日の武蔵野公会堂でのコンサートは外せないです。

原田∶20代の走馬灯的なイベントにはなったかなと。ホールコンサートにおけるステージングという課題も見えましたしね。それで武蔵野公会堂後、ステージアクションにバリエーションを付けたいと思ってヌンチャクを始めたんですよ。

-ワンマンとしてはHi,how are you?史上最高の動員を記録。

原田∶そうですね。アンケート用紙を配ったんですが、自分達を支持してくれる人達の嗜好が知れて面白かったです。僕やリーダーと同世代が多いのも分かりましたし。「うちの子にかぎって…」が好きな人もいましたよ。あと目立ったデータとしてはCANが好きな人が多かったかな。
(この日のコンサートには著名人も多く訪れた)

-2月はニューロティカのあっちゃんの実家である八王子のお菓子屋、藤屋にも行きました。

原田∶感激でしたね!本当に普通に店に立ってて。貴重なお話も聞かせていただきましたし。山形に戻ってから改めてニューロティカの映像観たんですよ。そしたら、さっきの話とリンクしますが、あっちゃんがステージの端から端まで駆け回ってるんですよ。自分の進むべき道の先人だという事を強く感じました。
(藤屋の店先でニューロティカのボーカリスト井上篤さんと。写真も快く応じてくれ、オマケにお勧めのラーメン屋まで教えてくれました)

-あとはやはりDER PLANの来日公演ですか。

原田∶現時点で観に行った最後のライブですね。会場にいた有名人たちに圧倒されました。

-原田さんはピエール瀧が居る事にすぐ気付きましたよね。

原田∶姿を現した瞬間に分かりました。ライブ前にピエール瀧は会場外で何人かと居たのですが、ある時その一角から笑い声が聞こえたんですよ。で、パッと見たらパトカーが通ってて、瀧が逮捕ジョーク飛ばしたんだなって。

-翌日はDER PLANが出演するDOMMUNEにも行きました。

原田∶DOMMUNE会場で見れたのは面白かったですね!!!!!!!宇川さん「ヤバいでしょ」連発でヤバかったです!!!!!!そして、よく言われる様に音が抜群に良かった!!!!!!!
(22日SUPER DOMMUNEにて、DER PLANのメンバーと)

-コロナ禍が激化し始め、DER PLANの公演はギリギリ行われましたが、行く予定だった24日横浜ベイホールでのPIXIES来日公演は中止に。

原田∶PIXIESは残念でした。一通り好きな曲は聴けるだろうなと思っていたので。あのとき最初にクラスターが起きた客船が横浜に定着していたんですよね。

-PIXIESで特に思い入れある作品は?

原田∶やはり「DOOLITTTLE」ですね。あれの「Mr.GRIEVES」が好きです。PIXIESは幾何学的な構成の曲が幾つかあって。「DIG FOR FIRE」とか。

-ニール・ヤングのカバー「WINTERLONG」もお好きでしたよね。

原田∶はい、はい。そうですね!この間、ファミマでその曲かかってました。

【3月】
-TB-303のクローン機であるTD-3がBEHRINGERから日本発売されたのがこの月です。

原田∶これはHi,how are you?においてかなりデカイですよ。本格的にリズムマシンやシンセを買い始めるきっかけになりましたからね。ヤフオクやメルカリに張り付いていると意外に3万円以内で買えるものが沢山あるんですよ。結果的に現在6台くらい手元に。
(「EXPERIMENTAL AUDIO RESEARCHのジャケット風に。機材ジャケはそそりますね。」原田さん談)

-自分でシンセに触れるようになって聴き方に変化はありましたか?

原田∶HARDFLOORや808STATEの凄さが分かりました。シンセに触れば似たような音が出るわけですが、ああいう楽曲になる抜き差しの妙というか、理解は深まったかな。

-逆にシカゴハウスとかビックリするくらい簡単に作られてるのも分かりますよね。

原田∶ダハハハ!マフィアの音楽!プリセットそのまま応用ですもんね。それでいてちゃんと実験的なのが凄い!
(原田さんはシカゴのTRAX RECORDSやDANCEMANIAに強いRAW VIBEを感じるという)

-808STATEって結構アルバムによってタイプ違いません?特に1st「NEWBUILD」とそれ以降とか。どの時期のが好みですか?

原田∶1stのアシッド全開のが好みです。TR-808を使ってるのは1stだけみたいな話ありますよね。

【4月】
原田∶「恋の四月バカ」を配信で出しました。この曲はプリンスの「KISS」×ヒルビリーバップスというイメージですね。そこに若干のK2風味を加えて。

-K2というのは吉川晃司ですね。

原田∶いえ、小堺一機さんです。「セーラー服通り」「痛快!OL通り」辺りの小堺さんのドタバタ感を上手く出したいんですよね。
-なるほど。同じく今作に大きな影響を与えた人物では大林宣彦監督が10日に亡くなられました。

原田∶影響受けまくりです。亡くなる半年前に山形で大林監督のトーク講演を観れたんですよ。あれ良かったなあ。音楽と映画の親和性について熱心に語っていたのが印象的で。「HOUSE」が海外で評価が高いのも納得です。

-大林宣彦の小林聡美という希代の才人を世に送り出した功績は計り知れないと思います。

原田∶チャンスは自分で掴むのよ!
(小林聡美は大林監督の「転校生」出演後「痛快!OL通り」や「ラジオびんびん物語」などでコメディエンヌとしての才能を遺憾無く発揮した)

【5月】
-世の中は先月から引き続いて緊急事態宣言真っ只中でしたが…。

原田∶山形もやはり自主的に閉めてる店多かったですね。僕も12連休とかだったんで、ひたすら石坂浩二版の金田一耕助を観てました。

-この期間はCD屋もやってなくて、音楽と繋がってる人と会う事もなかったので、この頃聴いてたのは他者からの影響が少ない純度の高い「自分が好きな音楽」だったと私は感じてるのですが、原田さんはどうでしょう?

原田∶聴きたいものを細かい部分までじっくり聴いてました。BOBBY CONN、BILL NELSON辺りですね。ULTRAMARINEも上半期はよく聴きました。特別何も聴きたくない時にも流しっぱなしにしてた感じで。

-給付金出たのもこの時期でしたっけ?

原田∶結局すぐ使わず、徐々にシンセとか買うのに使ったかな。

【6月】
原田∶Hi,how are you?的には武蔵野公会堂のがDVDになったり、それのリリースイベントが中止になって、その埋め合わせ的に配信やったり。

-武蔵野公会堂のコンサートを収めたDVD「I'm fine thank you!」のリリースイベントではSaToAとTomato Ketchup Boysの出演も決まっていましたが、無期延期という形になってしまいました。

原田∶はい。面白い試みも幾つか考えてたんですけどね。飛沫対策として演者と客席の間にアクリル板を置いて。歌いながらそのアクリル板に両手で絵を描いたりとか。
(!?)

-その「I'm fine thank you!」ですが、一つのライブをパッケージしたDVDはなかなか売れにくいような気もするんですよ。セールス的にはどうでしたか?

原田∶それがですね、バカ売れしたんですよ。通販で遠方の方が沢山買ってくれて。嬉しかったですね~。

-おお!映像として改めて武蔵野公会堂での演奏観てみてどうでした?

原田∶もうちょっと「見せる」事を考えなくてはと思いました。ですから、次は金髪にしてタップダンスやろうかなと考えてるんですよ。

-たけしですか!

原田∶いえ、小堺一機さんです。

-ああ~。昔よくタップやってましたね。
原田∶YOUTUBEにヌンチャクの技を紹介してくれてる、ヤスチンマオさんのチャンネルがあって。それもステージに取り入れる為によく観てます。あとは井上和香さんの動画を観て自分自身のヌンチャクを大暴れさせたり。

【7月】
原田∶今年一番面白かった映画「ヘヴィトリップ」を観たのが7月かな。オービスでアー写を撮るシーンがあって劇場で爆笑しました。

-映画はよく観に行かれますか?

原田∶ですね。ただ観た映画の半券を一応取っておくんですが、流石に今年の4,5月のは一枚も出てこなかったです。今、確認してみたところ。
(京都時代の原田さんの部屋より。このような映画を観て楽曲制作のインスピレーションを得ているという)

【8月】
原田∶この曲聴いてもらっていいですか?

-これは柳沢慎吾のシングル「ピエロ」のB面「BE MY GIRL」ですよね。コサキンソングとしても知られ、Hi,how are you?も一時期レパートリーにしてた。

原田∶はい。この「ピエロ/BE MY GIRL」のリリースが1985年8月1日で35周年なんですよ。

-へぇ~。確かに80年代真ん中くらいの音。

原田∶そう!そこなんですよ!今回取り上げたのは35周年というだけではなくてですね、柳沢慎吾「BE MY GIRL」にみられる「微妙にエレクトロニックなポップス」というのが我々の最新作「High School,how are you?」のコンセプトだからなんですよ。

-「High School,how are you?」の中にある歌謡曲テイストは柳沢慎吾が軸でしたか!

原田∶ええ。その時代を通過していない者なりに80年代を意識した作品になっているかと思うのですが、どうでしょう?ニャンギラスやCCBも表面的ではありますが参考にしてます。

【9月】
-この月はTERRY RILEYが佐渡で公演を行っています。

原田∶TERRY RILEYが日本に住んでるの驚きでしたよね~。日本在住、過去住んでたミュージシャンって結構多いですからそういった人達の住み心地インタビューとかまとめたもの読んでみたいですね。MORGAN FISHER、VELVET CRUSHの人、JIM O'ROURKE、TOY DOLLSのOLGAなど。

-原田さんはこの時期、RAYMOND SCOTTやBRUCE HAACKにハマってましたね。

原田∶そうですね!「自分で電子楽器を作り出せる」「子供を対象にした音楽」という二点でその二人に興味が湧いて。

-Hi,how are you?でもそういう展開になっていけば面白そう。

原田∶あと9月でどうしても語りたいのあるんですけどいいですか?

-どうぞ、どうぞ。

原田∶僕が敬愛していた俳優の斎藤洋介さんが亡くなられたんですよ。残念でした。晩年に振り込め詐欺の被害に遭われたのも相当なインパクトでしたが、サスペンスや刑事ものでの演技が好きで。

-バラエティ対応力も高い方でしたし。

原田∶そこで9月にマルベル堂でアー写撮りをした際に敬意を表して斎藤洋介風のも撮ったんです。いいでしょ?
(「マルベル堂でのアー写撮影はとても楽しかったですね。とにかくカメラマン兼店長の武田さんが気さくな方で、接客から撮影からプロの仕事を目の当たりにしました。言われたとおりに首を傾けたらちゃんとブロマイド風になってて。」原田さん談)

【10月】
-Hi,how are you?初のソノシート「逢魔がドキドキ」リリース!後藤さんによるジャケットも素晴らしいです。

原田∶あれ、いいですよね!僕の自宅で、暗幕張って照明たいて撮影しました。後藤さんは普段から一緒に個室付浴場へ行ったりしてるので、ツーカーですね。意図を汲み取ってくれるのでいい出来になりました。

-曲も妙に残る節で。

原田∶エーストーンのリズムボックスを使ったのが新しい試みでした。「THE SPECIALSの2ndみたいなの」というのはずっと頭にあって。今後もこのタイプの曲は増えてくと思います。

-時事的には記録的ヒットとなった劇場版「鬼滅の刃」の公開がこの月ですが。

原田∶映画も観てないですし、原作も読んだ事ないんですよね。面白いんだろうとは思うのですが、絵のタッチがあまり好みじゃなくて。その点で入り込めてないですね。
(京都時代の原田さんの部屋より。このような絵のタッチが好みのようだ)

【11月】
原田∶この月は高橋留美子の紫綬褒章でしょう!めでたいですよね。高橋留美子作品って年中行事や神仏習合の盛り込み方が上手いんですよ。流石だなと思います。「High School,how are you?」は1月から12月までのカレンダー式アルバムになってまして、その辺の季節感はかなり参考にさせてもらってます。あとラムがインベーダーという設定で、そこに鬼や雷神の要素を足してるのって天才じゃない?
(因みに「カレンダー式にしてはどうか?」というのは私の提案でして、こちらの「らんま1/2 歌暦」がヒントになっています)

-Hi,how are you?が参加したサニーデイ・サービスのリミックス盤のリリースも11月です。

原田∶あれは光栄でしたよ~。と同時にもっと宅録に適した環境を自部屋で整えようと思いましたね。来年は宅録で一枚出したいという野望もあります。

【12月】
-水島新司の引退宣言にはSNSが「お疲れ様」という言葉で溢れ返りました。

原田∶水島作品はあんまり通ってなくて、ドカベンを幼少期にケーブルテレビで見てたくらいの薄い印象しかないんですよ。でも新潟に出張で行った時に主要キャラのブロンズ像を前にしたらテンション上がっちゃいましたけど。
(日本ではSxOxBの次に好きだという赤痢の「PUSH PUSH BABY」と共に)

-Hi,how are you?的には12月14日に仲村トオルがデビュー35周年を迎えたのも大きいのではないでしょうか。(仲村トオルのデビュー作「ビーバップハイスクール」は1985年12月14日公開)

原田∶それは勿論過ぎです!文脈的にトオルさん無しでHi,how are you?は語れません!!トオルさんのエビオスのCMも2020年ベストCMでしょう。トオルさんに関する色んな文献を読んでみると、凄くストイックなんですよね。そして、チャレンジ精神とユーモア。その辺は偉大な先輩を見てきてるからなのでしょうね。

-偉大な先輩というのは「あぶない刑事」で共演した舘ひろしと柴田恭兵の事ですね。

原田∶いえ、小堺一機さんです。

-そっか!仲村トオルと小堺一機は専修大学の先輩・後輩でしたね。
原田∶やっぱりね、Hi,how are you?として今までも、これからも、ずっと大切にしているのは再生ボタンを押した時に「なにがでるかな?」という感覚なんです。ですから2021年のHi,how are you?は「なにがでるかな?ハイハワユー?」をキャッチコピーに音楽界を騒がせますよ~。パッホーン!!



Hi,how are you? 6th Full Album

“High School, how are you?” 

2021年1月1日
CD & ストリーミング発売!

1月.恋の賽銭泥棒
2月.恋の豆鉄砲
3月.恋の三色団子
4月.恋の四月バカ
5月.恋のボリ・スヴィアン
6月.恋のりびんぐゲーム
7月.夏風デート
8月.りんご飴
9月.Autumn pagent
10月.逢魔がドキドキ
11月.明日泥棒
12月.あわゆき 

【CD】
TETRA-1031 /¥2021+tax
TETRA RECORDS

サルバドール・ダリは天才か?ただの変人か?
時計じかけのオレンジよりトップガンの方が面白いか?
ハイハワユーは最高か?最悪か?
ハイハワユーを誤解するのはとても危険な事だ 
先日、キーマカリーズのゴツローさんから「キーマカリーズとチチワシネマ時代に出したHap pep titsを振り返る内容の記事を作れないか」という主旨のメールをいただきまして、あのアルバム発表後に音楽性が大きく変貌を遂げた今、それをやるのは面白いと私も判断し、キーマカリーズのメンバー自身に2018年にリリースされた1stアルバム(当時はキーマカリーズとチチワシネマ)Hap pep titsを語ってもらいました。
(左からボーカルのだいせいさん、ドラムのよしあきさん、ギターのゴツローさん)

1.暮らし

ゴツロー:最初のとこのコードはベアーズのコンピに入ってるコロナとかいう曲と同じです。Cコードの押さえ方のままずらして弾くところが。

だいせい:めっちゃ色の濃い夕日を思い出します。

ゴツロー:ミックスの時、よしあきがスネアにゲートリバーブをかけるの執拗に拘っていた記憶が…。

よしあき:スネアへのリバーブはスティーヴ・リリーホワイト関連の作品を聴いてたからです。その影響下である本田美奈子とかも。

だいせい:エモい曲作るって言って作ったよな。2010年代ぐらいのエモバンドは意識してるよな?

ゴツロー:アルバムでは一曲目ですけど、ライブだとこの曲を最後に持ってきて終わるのハマってましたね!

だいせい:あと速くない曲作ろうと意識的に試みたんも初めてちゃうかったけな。一応展開あるし「1分は超えたやろ、よしゃー!」みたいに思って聴いたら59秒とかやって、お尻からマーヴィン・ゲイの悲しげなソウルが聞こえてきました。
(レコーディング風景)

2.LOST PARADISE

よしあき:無駄のないハードコアってのを意識して作った曲ですね。結果的に後半はポップになってますが。

ゴツロー:これ聴き直したらかっこいいすよね!ハードコアパンクの真ん中いってると思います。大学入って1番最初に作った曲。まだ3人の時。

だいせい:最近、強力君が入って4人組になったけどそれまではずっと3人でやってたんです。

3.あのね

よしあき:この曲知らないです。

だいせい:自分も知らないです。

ゴツロー:これのベースはVIVA KAPPAのタクミさんだったと思います。今聴いてもやはりピッキング凄いですね。それ以外は何の思い入れも無いかも。

4.YOUR GLORY DAYS

ゴツロー:結構古い曲ですけど、聴き直したらかっこよかったです。コード2個押していうのも潔い。ドラムの入り方も最高だと思います。

よしあき:ゴツローが丁寧にほぐしてくれたのでツルっと入りました!

ゴツロー:コード2個の着想はHi,how are you?の「プール開き」からです。

よしあき:完全にHi,how are you?ですね!
(この事をHi,how are you?原田さんに伝えたところ「嘈杂的沉默 !」との返答をいただきました)

5.VIVISICK

ゴツロー:最初のギター、エフェクター踏むのをミスって忘れてクリーンのまま弾いてます。速いところから歪んでます。ダハハハ!

だいせい:この曲好きです!

ゴツロー:GRIMPLEのカバーですが、ライブでは1番の盛り上がり曲。フロアで何本もの拳がぶち上がります。上半身のも下半身のも。

よしあき:他のカバー候補の曲、なんでしたっけ?

ゴツロー:えーなんかあったっけ?
(「この曲もベースはタクミさんだったと思います。相変わらずベースやばい!」ゴツローさん談)

6.ビーサン

ゴツロー:今では考えられないような曲のひとつ。最後の異臭漂うギターソロが聴きどころです!

だいせい:あそこ聴いてて耳真っ赤になる。

ゴツロー:西荻的なん恥ずかしいな。恐らく他のメンバーもこれに関しては異存はないのではないでしょうか。

よしあき:逆に最後の異臭ギターソロしかない気もする。この曲は。

7.水風呂

ゴツロー:この曲も全く思い入れ無い。短すぎや。

だいせい:アッという間。

ゴツロー:ちょっと待って!お尻の中からインチキおじさん出てきた!!

よしあき:ボワッと?

ゴツロー:ボワッと!

8.ぴゅあしゃい

だいせい:折り返し地点でHi,how are you?の原田さんに曲を入れてもらいました。

よしあき:後に代表曲になるのを入れてくれたんですよね。

ゴツロー:そうそう。学校行く途中の電車でアイツにメールで頼んだら、個室付浴場の待合室に居たみたいなんですけど二つ返事ですぐ送ってくれて。

よしあき:素敵な曲です。

ゴツロー:音質がいい。この曲を入れる為にアルバム作ったみたいなとこあります。
(Hi,how are you?原田さんはキーマカリーズと最も関わりの深い人物と言えるであろう)

9.二日連続で遊んだ

ゴツロー:ぴゅあしゃいからの流れも相まって、アルバムの後半が始まるのにふさわしい曲。この曲もLOST PARADISE同様に自分がハードコアパンクで好きな部分を集めてやってたと思います。しょぼいけど。

よしあき:軽快なカウントから、ベースの歪みとギターの音の感じで、グルーヴ感ゼロなのがよいです。

ゴツロー:他の曲もですけど、今聴くと恥ずかしくて弾けないフレーズとかもバンバン弾いてますね。そこがごっつええねん。

だいせい:高1のとき、共演した社員'sってバンドが「ええねん」のカバーやってました。

10.ヤンキータワー

だいせい:2日連続で遊んだ~ヤンキータワー~YOU TALK, I LISTENはちょっとメドレーみたいな感じになってます。


ゴツロー:ラストの爆発音はよしあきのアイデア。

よしあき:コサキンの爆発オチですね。
(小堺一機と関根勤の二人からは多大な影響を受けたという)

11.YOU TALK, I LISTEN

ゴツロー:爆発で呆気にとられて、間髪入れずに始まるのがかっこいい!音も何か凄い!

だいせい:この頃ってどうやって曲作ってたっけ?

よしあき:好きなドラムのフレーズ、パターンを詰め込む感じやった。

ゴツロー:ギター触りたてなんでコードとかめちゃくちゃすね。あとボツになった曲のフレーズを太ももの間に入れたりもしてました。

よしあき:着衣で立ち素股ええよな。

12.共勃ち

ゴツロー:これも間奏に西荻的異臭ギター入ってます。これライブでやるの恥ずかった。タイトルも最悪ですね。

よしあき:これほんまに2018年の音源か?

ゴツロー:リズムをずらしてどうにかしてダサくない弾き方を模索してましたが、最後の最後まで無理でした。

よしあき:良いフレーズを思いついても構成力が欠損してるので、どうしても異臭フレーズが混ざってしまいますね。

ゴツロー:異臭でやりくりしてた時期ですね。めっちゃ恥ずいですよね。もっと早くに気づくべきだった。
(俺たちずっと友達だから)

13.ロードトリップ(fa fa fa fa fa)

ゴツロー:聴き直したらグッとくるかなと思ったんですけど、そうでもなかったですね。


だいせい:これがアルバムの中で一番長い曲。


ゴツロー:まあキーマカリーズの曲のロジックが明確化するきっかけになった曲だとは思います。前半に速い展開をいくつか繋げてちょっと落ちて、最後8ビートで走り抜けるみたいな。letter sent lateとかコロナとかいう曲は完全にそう。


14.先輩のおっぱい

だいせい:代表曲ですね!

ゴツロー:私の神曲!元気よくワンツーって言う所が最高!!!!

よしあき:ずっとやっていきたい曲。結局、この先輩ってのは誰だったんでしょう?

15.YOUTH, ATTACK, CENTER

ゴツロー:YAC!!かっこいいですよね!

だいせい:今日、この歌詞を頭で流しながら歩いてたわ。コインランドリーに服盗みに行く時。

ゴツロー:歌詞ええよな。

よしあき:カタルシスを詰め込みましたね。

ゴツロー:楽器全然合ってないんですけど、それの割に統一感出てる。

よしあき:これは今セットリストに入れてもいいと思う。LOST PARADISEと。
(レコーディングは京都市東山青少年活動センターで行われた)

だいせい:アルバム全体の総評としてはどやろ?

よしあき:作品として残すのは良いことだったとして、色々影響受けた上で体現できてない曲ばかりですね。パンクとして作ったアルバムなんで、いま聴いて良いと思うフレーズは自分の好きなパンクの根底であると再認識できました。

だいせい:確かに!影響をまだ出せてない!めっちゃ聴いてたし、観てたんやけどな。ミックスとかに関してもこれがやりたいとか理想みたいなんもなかったけど、できひんなりに精一杯取り組みました。

ゴツロー:逆に体現出来なかった故のイビツさも感じます。バグった曲ばっかりですよね。顔つきとか何もかもバグってた。

だいせい:何やってるか自分でも分かってへんくて、録音通して聴いてからやっと理解できたところはある。

よしあき:速い曲だとだいせいの滑舌が追いついてなくて、それなのに声は際立たせたいって感じだったので。それが思ってるよりかっこよくならなくて、違う方向に進む決断をするきっかけになったレコーディングだったかな。

ゴツロー:やな。そういう演奏やコンセプトを整理させていく意識みたいなの持ち出したのは、たしかに1st以降ですね。曲の作り方が確立されたのも同じ時期。そういう過程を考えると流れとしては当然だったと思います。

だいせい:歌詞は後から恥ずくなるってのも分かっててやってたところは結構ある。「自分に嘘はつかん、素のまま」みたいなんは今でもですけど大事にしてます。

ゴツロー:なので歌詞とかは今も歌いたいとかはあるみたいですよ。

だいせい:歌いたい!

ゴツロー:そんなわけで…。

全員:パッホーン!