2022年よりバンド名をキーマカリーズからアルファベット表記へと改めたKiima Kariis。そのメンバーである、よしあきさん(ドラム、リーダー)とゴツローさん(ギター)に先日、配信された楽曲「逸脱」を中心にお話を伺った。
-まずバンド名の表記をキーマカリーズからKiima Kariisに変更されましたが、これはどういったことで?

ゴツロー∶前に名前を変えたのが2020年だったと思うんですけど、それほど深い意味も無くて、飽きたからバンド名そのものか、表記を変えたいと、だいせいと話してて。

よしあき∶本来の綴りであるKeema CurrysではなくKiima Kariisとしたのは、Kosakai Kazukiさんと同じイニシャルにしたくてそうしました。
(小堺一機 1956年1月3日生まれ 関根勤とのラジオ番組コサキン・シリーズで知られる)

ゴツロー∶BEASTIE BOYSがBAD BRAINSに憧れてBBにした的な。

よしあき∶なので略称は「K2」でお願いします。

-分かりました!以下K2という事で。字面的にも良いし、バンド名をコロコロ変えていくのは面白いですね!

ゴツロー∶小文字のiが2つ続くのは、そうすると北欧のハードコアパンクぽいからとだいせいから提案があってこうなったんです。

よしあき∶具体的な元ネタあったよね。

-Riistetytですかね?フィンランドの。

ゴツロー∶今、だいせいに確認したらRiistetytで間違いないようです。

-小堺一機とRiistetytの融合ってめちゃセンスいいですよ!!

よしあき∶ただ、わざわざ「改名しました」って発表するのも野暮なので、ライブをしていなかった期間にタイミングを見計らってしれっと変えたところはあります。

ゴツロー∶分かる人には分かるようにお尻からステートメントは出してたんですけどね。

-カタカナ表記を変更したのは、ドメスティックな立ち位置から少し方向転換していくのかとも思ったのですが。

ゴツロー∶イギリスのポストパンク、ゴシックの退廃感というのは今のK2の流れとして確かにありますね。

-新しいメンバー写真もモノクロということもあってデカダンスな趣で。
ゴツロー∶私だけデカダンスというより刑事風。つまり、あぶない刑事ダンスです。
(「あぶない刑事」1986年より放送されたドラマシリーズ)

よしあき∶山の中で寒かったのでかなり厚着してるんですよ。それでゴシック、ポストパンクっぽさ出てたのかも。

ゴツロー∶よしあきがマトリックスのモーフィアスみたいで惚れ直しました。

-最新曲「逸脱」もゴスに移行する過程のような雰囲気ありますね。今後、そっち方向に行くかは分かりませんが。

ゴツロー∶DEAD CAN DANCEの1stが衝撃だったんですよね。出音のギターの無機質な感じは自分でもやりたいと思って、その要素を取り入れようとはしました。

よしあき∶ゴツローのTwitterのアイコンはDEAD CAN DANCEのジャケットです。
(ゴツローさんのTwitterより)

-この頃のDEAD CAN DANCEはまだバンドサウンド的ですよね。

ゴツロー∶そうですね。まだバンドっぽいやつです。DEAD CAN DANCEは歌詞がどこの言葉でもない異言スタイルもかっこよくて。

-そして「逸脱」のドラムですが、呪術的なニューウェーブ、特に「What's THIS For...! 」辺りのKILLING JOKEを彷彿しました。

よしあき∶勿論、それは大きいです。が、ニューウェーブより、井上和香さんの動画を観て、ズボンのチャック付近をウェーブさせた事の方がドラムプレイに反映されてると思います。

ゴツロー∶KILLING JOKEも重要なのですが、ギタリスト的にはBAUHAUSも大きいですね。今後の方向性としてBAUHAUSは間違いなくキーワード。

-今回も楽曲制作のイニシアチブはよしあきさんが取られたんですか?

よしあき∶正直、この曲を思いついた時の事を完全に忘れてるんですけど、何となく速くて遅いポストパンク風みたいなのを目指してた気がします。

-確かに直線的でない不思議なテンポ感があります。

ゴツロー∶この曲のきっかけってベアーズでやった3人編成のライブじゃない?DONN名義の。

よしあき∶知らん。黙ってろ。レコーディングはスネアの口径変えたり、調節したぐらいで前回と大きく変わってないですね。

-ミックスに立ち会ったのは、ゴツローさんなんですよね?

ゴツロー∶ミックスは楽しかったですね!音にかなりいじってるのが出てると思います。

よしあき∶大まかな考えはケント・デリカット風の口調で伝えましたけど、細かいところはゴツローに任せてます。

ゴツロー∶だいせい・よしあきに意見を貰いつつ、それをまとめて僕とミキサーの江添さんでやりとりするという感じでした。江添さんには結構今までで一番めんどくさく要望を聞いてもらえて感謝です。

よしあき∶お口も臭かったと思うよ。

ゴツロー∶そう言えばミックスに関してベースの強力くんはノータッチでしたね。
(強力さんはK2に加入する前はベースを弾いたことがなかったという)

-強力さんはレコーディングの時どうでした?苦労されてました?

ゴツロー∶強力くんは極度の緊張症なので録音時、いつもよりだいぶピッキングが弱かったんですよ。

-確かにラフミックスの段階で聴かせてもらった時、ベースが弱い印象を持ちました。

ゴツロー∶はい。ベースの音が正直一番苦労したかもしれないです。ただ音量を上げるだけじゃバランス合うわけじゃないっていうか。結局、録り音の質にかかってるなっていうのを身をもって知れたのは勉強になりました。

-ボーカルは、今までだいせいさんのあの独特の節を持てあましていたように思うのですが、今回のは完成形とは言いませんが、かなりハマってますよ。かっこいい。
(左からボーカルのだいせいさん、ギターのゴツローさん、ドラムのよしあきさん)

ゴツロー∶1009!正直、ずっと声を聞いていると分からなくなってくるんですよね。だから、客観性を持つために定期的に録音物を作るというのはあるなと思いました。今後もそうしていきたいですね。

-ボーカル録り中のだいせいさんを見て、よしあきさんは爆笑されたそうですね。

よしあき∶自分に理性があると思い込んで歌ってたので笑ってしまいました。

ゴツロー∶歌詞で、御託を並べる人たちへの苛立ちを表現しつつ、自分が一番説教臭いっていう。

よしあき∶SNSの縮図ですね。

ゴツロー∶完全なるブーメランになってます!

よしあき∶ボーカルの彼曰く「これはオタクとニートの曲」。

ゴツロー∶Adoの「うっせぇわ」へのアンサーソングでもあるので、歌詞はアクリル板へ両手を使って書いてたそうですよ。
(Ado!?)

-ギターはどうでしたか?

ゴツロー∶エフェクターはライブの時にめんどくさいんで、極力持ち歩いて無いんですけど、録音の時はなるべく色々試した方が良いよなって家にあるやつ一式持ち込みました。結局使わないのも結構ありましたが。

-ゴツローさんとは夏とお正月に合宿という形で色々お話させてもらいましたが、レコーディングとライブは別物という意識がより強くなってきてますよね。
(2022年の正月合宿より)

ゴツロー∶分けて捉える考えが強まったのは、性的サービスを含むマッサージ店で尻なぞりを体験して以降だと思います。

よしあき∶でもお気に入りの人が突然退店したんやろ。

ゴツロー∶ところが!最近、その女性の居所を突き止めたんですよ!!それが日々の生活の中で今一番盛り上がっているところです。

-合宿の時にゴツローさんが「面白い方向に転がるのなら自分はギターじゃなくても構わない」と言ってたのは驚きと共に感動しました。楽器出来る人ってその出来ることが足枷になって音楽性の幅を狭めているのではないかと思っていたので。
(2021年の夏合宿より)

ゴツロー∶そうですね!ライブは普通に今までの編成で楽しいんですけど、音源制作でその編成にこだわる必要は無いかなって思ってて。ギターも弾かなくていいし、シンセや川合俊一なんかも使っていきたい。

-という事は、ゴツローさんがここ最近よく聴かれているBLACKEST EVER BLACKやPASSION、MODERN LOVEといったレーベルの音像が反映されることもありそうですね。

ゴツロー∶そのモチベーションは高まってます。難しくてあんまりうまいこと言えないんですが、今の私のモードである「無機的でありたい」というのはその辺がインスパイア元ですね。

よしあき∶僕はシューゲイズじゃないですけど「霧」みたいな感じで作っていきたいですね。ミニマルなドラムで、必要な部分だけ聴こえたらいいと。

ゴツロー∶「霧」はあるかも。

よしあき∶K2の曲というのは、工程として自分のドラムから作るんで、どこまで削ぎ落として、どこまで伝わるかわからないですけど。

ゴツロー∶ピート・ナムルックのFAXも最近のお気に入りで、あれも「霧」感ありますね。車を買って、車内で音楽を聴くことが増えたんですが、そういう音楽とコサキンのラジオが一番自分の性に合ってると思うことが多いです。

-ピート・ナムルックはリリース量多くて集めるの大変じゃないですか。

ゴツロー∶リリース量多いですよね!全貌把握できないです。まさに霧の中を彷徨ってるような。

-ライブについてですが、スタンディングより座って観てもらいたいと言ってましたよね。ライブハウスというのにもこだわりなく。

ゴツロー∶INCAPACITANTSが山奥でやってるのあるじゃないですか。ああいうのやりたいんですよ。

よしあき∶あのINCAPACITANTSは全員が反応してないのも含めて良いです。

ゴツロー∶なので、よしあきは超大型発電機の購入資金を準備しているところなんですよ。

よしあき∶これは結構、本気です。

ゴツロー∶K2流のレイブやります。

-そういった独自の活動視野を持つK2から見て、同世代で似た感覚を持った人っていますか?

ゴツロー∶moreru!ホラーを感じます。めちゃくちゃかっこいいと思う。メンバーの人たちも面白いし。

よしあき∶TOMATO KETCHUP BOYSとか。

ゴツロー∶武知くんとは正月合宿で江ノ島ドライブに行って…。

-その時、私が武知さんが注文した、しらす丼を自分のと勘違いして食べてしまいました。

よしあき∶切腹もんですね。
(TOMATO KETCHUP BOYSのドラムを担当している武知さん)

ゴツロー∶北海道のCARTHIEFSCHOOLもいいですよ。また一緒にライブしたい。

-最後に、配信用のジャケット画像を昔の8cmCDを意識した縦型にしたのはなぜなのでしょう?

ゴツロー∶配信サービスでも、シングル曲が短冊ジャケのままリリースされていて。だいせい曰く広末涼子とかいうしょうもない奴のがそうらしいんですけど。それで良いんじゃないかとなりました。

よしあき∶なので、これを盤としてリリースする時は8cmで出す事になるでしょう!

-Hi,how are you?の伝説のシングルのようにですね!

ゴツロー∶名盤!

よしあき∶必聴盤!
(Hi,how are you?のシングル「バンホーテン」は当時としては珍しい8cmシングルとしてリリースされ、その心意気は吉田豪さんからも称賛された)

-今日はインタビューありがとうございました!

ゴツロー∶2020年後半くらいからアルバム制作に向けて曲は作っていたんですけど、なんとなく頓挫して…。でも今年中には形にしたいと思ってますので震えて待っててください。

よしあき∶出してくれるレーベルも待ってます!そんなわけで…。

二人∶パッホーン!!