2021年1月1日に6枚目のアルバム「High School, how are you?」をリリースするHi,how are you?の原田さんに2020年を振り返ってもらいました。
(2月21日DER PLANのライブが行われた東京ドイツ文化会館にて、ピエール瀧と)

まずはこの記事のBGMとして最新アルバムからこちらを

【1月】
原田∶年明けてすぐ「恋の賽銭泥棒」の配信リリースがあったのですが、その日の夜、景気づけに都内の某洋食屋にご飯を食べに行ったら寺門ジモンも来てて、たまたまカウンターで真隣になったんですよ。

-やな年始ですね。世の中的にはセンター試験が今年をもって廃止になりました。

原田∶当時一応受けましたよ。既に大学受かってたんですけどね。でも担任に無理やり受けさせられて試験中半分くらい寝てました。クラスメイトからはかなり白い目で見られてましたけどね。ダハハハ!

-とんねるずのサブスク解禁もこの月です。

原田∶これは大きい出来事ですよ。これを機にとんねるずの有名曲を一通り聴いてみたのですが、ディスコ、ファンカラティーナもどきな曲が多くて、曲作りのヒントを得られました。芋づるでKID CREOLE & THE COCONUTSを聴いてみたり。

-ZE RECORDSだと他にどういうのが好きですか?

原田∶THE WAITRESSESは好きですね。ZEの二面性はかなり面白いですよね。

-意外な所でSHAMPOOがTHE WAITRESSESのカバーやってるんですよ。

原田∶それは知らなかったです!ZEはソロの女性も印象的な人が多い。CRISTINAはコロナで亡くなっちゃいましたね。

-エッ!そうなんですか!!

原田∶話をとんねるずに戻すと10月にリリースした「逢魔がドキドキ」では「ガラガラヘビがやってくる」のノリさんの〆を引用したりと今思い返せばこの時の解禁の余波でしたね、あれは。

【2月】
-Hi,how are you?としては8日の武蔵野公会堂でのコンサートは外せないです。

原田∶20代の走馬灯的なイベントにはなったかなと。ホールコンサートにおけるステージングという課題も見えましたしね。それで武蔵野公会堂後、ステージアクションにバリエーションを付けたいと思ってヌンチャクを始めたんですよ。

-ワンマンとしてはHi,how are you?史上最高の動員を記録。

原田∶そうですね。アンケート用紙を配ったんですが、自分達を支持してくれる人達の嗜好が知れて面白かったです。僕やリーダーと同世代が多いのも分かりましたし。「うちの子にかぎって…」が好きな人もいましたよ。あと目立ったデータとしてはCANが好きな人が多かったかな。
(この日のコンサートには著名人も多く訪れた)

-2月はニューロティカのあっちゃんの実家である八王子のお菓子屋、藤屋にも行きました。

原田∶感激でしたね!本当に普通に店に立ってて。貴重なお話も聞かせていただきましたし。山形に戻ってから改めてニューロティカの映像観たんですよ。そしたら、さっきの話とリンクしますが、あっちゃんがステージの端から端まで駆け回ってるんですよ。自分の進むべき道の先人だという事を強く感じました。
(藤屋の店先でニューロティカのボーカリスト井上篤さんと。写真も快く応じてくれ、オマケにお勧めのラーメン屋まで教えてくれました)

-あとはやはりDER PLANの来日公演ですか。

原田∶現時点で観に行った最後のライブですね。会場にいた有名人たちに圧倒されました。

-原田さんはピエール瀧が居る事にすぐ気付きましたよね。

原田∶姿を現した瞬間に分かりました。ライブ前にピエール瀧は会場外で何人かと居たのですが、ある時その一角から笑い声が聞こえたんですよ。で、パッと見たらパトカーが通ってて、瀧が逮捕ジョーク飛ばしたんだなって。

-翌日はDER PLANが出演するDOMMUNEにも行きました。

原田∶DOMMUNE会場で見れたのは面白かったですね!!!!!!!宇川さん「ヤバいでしょ」連発でヤバかったです!!!!!!そして、よく言われる様に音が抜群に良かった!!!!!!!
(22日SUPER DOMMUNEにて、DER PLANのメンバーと)

-コロナ禍が激化し始め、DER PLANの公演はギリギリ行われましたが、行く予定だった24日横浜ベイホールでのPIXIES来日公演は中止に。

原田∶PIXIESは残念でした。一通り好きな曲は聴けるだろうなと思っていたので。あのとき最初にクラスターが起きた客船が横浜に定着していたんですよね。

-PIXIESで特に思い入れある作品は?

原田∶やはり「DOOLITTTLE」ですね。あれの「Mr.GRIEVES」が好きです。PIXIESは幾何学的な構成の曲が幾つかあって。「DIG FOR FIRE」とか。

-ニール・ヤングのカバー「WINTERLONG」もお好きでしたよね。

原田∶はい、はい。そうですね!この間、ファミマでその曲かかってました。

【3月】
-TB-303のクローン機であるTD-3がBEHRINGERから日本発売されたのがこの月です。

原田∶これはHi,how are you?においてかなりデカイですよ。本格的にリズムマシンやシンセを買い始めるきっかけになりましたからね。ヤフオクやメルカリに張り付いていると意外に3万円以内で買えるものが沢山あるんですよ。結果的に現在6台くらい手元に。
(「EXPERIMENTAL AUDIO RESEARCHのジャケット風に。機材ジャケはそそりますね。」原田さん談)

-自分でシンセに触れるようになって聴き方に変化はありましたか?

原田∶HARDFLOORや808STATEの凄さが分かりました。シンセに触れば似たような音が出るわけですが、ああいう楽曲になる抜き差しの妙というか、理解は深まったかな。

-逆にシカゴハウスとかビックリするくらい簡単に作られてるのも分かりますよね。

原田∶ダハハハ!マフィアの音楽!プリセットそのまま応用ですもんね。それでいてちゃんと実験的なのが凄い!
(原田さんはシカゴのTRAX RECORDSやDANCEMANIAに強いRAW VIBEを感じるという)

-808STATEって結構アルバムによってタイプ違いません?特に1st「NEWBUILD」とそれ以降とか。どの時期のが好みですか?

原田∶1stのアシッド全開のが好みです。TR-808を使ってるのは1stだけみたいな話ありますよね。

【4月】
原田∶「恋の四月バカ」を配信で出しました。この曲はプリンスの「KISS」×ヒルビリーバップスというイメージですね。そこに若干のK2風味を加えて。

-K2というのは吉川晃司ですね。

原田∶いえ、小堺一機さんです。「セーラー服通り」「痛快!OL通り」辺りの小堺さんのドタバタ感を上手く出したいんですよね。
-なるほど。同じく今作に大きな影響を与えた人物では大林宣彦監督が10日に亡くなられました。

原田∶影響受けまくりです。亡くなる半年前に山形で大林監督のトーク講演を観れたんですよ。あれ良かったなあ。音楽と映画の親和性について熱心に語っていたのが印象的で。「HOUSE」が海外で評価が高いのも納得です。

-大林宣彦の小林聡美という希代の才人を世に送り出した功績は計り知れないと思います。

原田∶チャンスは自分で掴むのよ!
(小林聡美は大林監督の「転校生」出演後「痛快!OL通り」や「ラジオびんびん物語」などでコメディエンヌとしての才能を遺憾無く発揮した)

【5月】
-世の中は先月から引き続いて緊急事態宣言真っ只中でしたが…。

原田∶山形もやはり自主的に閉めてる店多かったですね。僕も12連休とかだったんで、ひたすら石坂浩二版の金田一耕助を観てました。

-この期間はCD屋もやってなくて、音楽と繋がってる人と会う事もなかったので、この頃聴いてたのは他者からの影響が少ない純度の高い「自分が好きな音楽」だったと私は感じてるのですが、原田さんはどうでしょう?

原田∶聴きたいものを細かい部分までじっくり聴いてました。BOBBY CONN、BILL NELSON辺りですね。ULTRAMARINEも上半期はよく聴きました。特別何も聴きたくない時にも流しっぱなしにしてた感じで。

-給付金出たのもこの時期でしたっけ?

原田∶結局すぐ使わず、徐々にシンセとか買うのに使ったかな。

【6月】
原田∶Hi,how are you?的には武蔵野公会堂のがDVDになったり、それのリリースイベントが中止になって、その埋め合わせ的に配信やったり。

-武蔵野公会堂のコンサートを収めたDVD「I'm fine thank you!」のリリースイベントではSaToAとTomato Ketchup Boysの出演も決まっていましたが、無期延期という形になってしまいました。

原田∶はい。面白い試みも幾つか考えてたんですけどね。飛沫対策として演者と客席の間にアクリル板を置いて。歌いながらそのアクリル板に両手で絵を描いたりとか。
(!?)

-その「I'm fine thank you!」ですが、一つのライブをパッケージしたDVDはなかなか売れにくいような気もするんですよ。セールス的にはどうでしたか?

原田∶それがですね、バカ売れしたんですよ。通販で遠方の方が沢山買ってくれて。嬉しかったですね~。

-おお!映像として改めて武蔵野公会堂での演奏観てみてどうでした?

原田∶もうちょっと「見せる」事を考えなくてはと思いました。ですから、次は金髪にしてタップダンスやろうかなと考えてるんですよ。

-たけしですか!

原田∶いえ、小堺一機さんです。

-ああ~。昔よくタップやってましたね。
原田∶YOUTUBEにヌンチャクの技を紹介してくれてる、ヤスチンマオさんのチャンネルがあって。それもステージに取り入れる為によく観てます。あとは井上和香さんの動画を観て自分自身のヌンチャクを大暴れさせたり。

【7月】
原田∶今年一番面白かった映画「ヘヴィトリップ」を観たのが7月かな。オービスでアー写を撮るシーンがあって劇場で爆笑しました。

-映画はよく観に行かれますか?

原田∶ですね。ただ観た映画の半券を一応取っておくんですが、流石に今年の4,5月のは一枚も出てこなかったです。今、確認してみたところ。
(京都時代の原田さんの部屋より。このような映画を観て楽曲制作のインスピレーションを得ているという)

【8月】
原田∶この曲聴いてもらっていいですか?

-これは柳沢慎吾のシングル「ピエロ」のB面「BE MY GIRL」ですよね。コサキンソングとしても知られ、Hi,how are you?も一時期レパートリーにしてた。

原田∶はい。この「ピエロ/BE MY GIRL」のリリースが1985年8月1日で35周年なんですよ。

-へぇ~。確かに80年代真ん中くらいの音。

原田∶そう!そこなんですよ!今回取り上げたのは35周年というだけではなくてですね、柳沢慎吾「BE MY GIRL」にみられる「微妙にエレクトロニックなポップス」というのが我々の最新作「High School,how are you?」のコンセプトだからなんですよ。

-「High School,how are you?」の中にある歌謡曲テイストは柳沢慎吾が軸でしたか!

原田∶ええ。その時代を通過していない者なりに80年代を意識した作品になっているかと思うのですが、どうでしょう?ニャンギラスやCCBも表面的ではありますが参考にしてます。

【9月】
-この月はTERRY RILEYが佐渡で公演を行っています。

原田∶TERRY RILEYが日本に住んでるの驚きでしたよね~。日本在住、過去住んでたミュージシャンって結構多いですからそういった人達の住み心地インタビューとかまとめたもの読んでみたいですね。MORGAN FISHER、VELVET CRUSHの人、JIM O'ROURKE、TOY DOLLSのOLGAなど。

-原田さんはこの時期、RAYMOND SCOTTやBRUCE HAACKにハマってましたね。

原田∶そうですね!「自分で電子楽器を作り出せる」「子供を対象にした音楽」という二点でその二人に興味が湧いて。

-Hi,how are you?でもそういう展開になっていけば面白そう。

原田∶あと9月でどうしても語りたいのあるんですけどいいですか?

-どうぞ、どうぞ。

原田∶僕が敬愛していた俳優の斎藤洋介さんが亡くなられたんですよ。残念でした。晩年に振り込め詐欺の被害に遭われたのも相当なインパクトでしたが、サスペンスや刑事ものでの演技が好きで。

-バラエティ対応力も高い方でしたし。

原田∶そこで9月にマルベル堂でアー写撮りをした際に敬意を表して斎藤洋介風のも撮ったんです。いいでしょ?
(「マルベル堂でのアー写撮影はとても楽しかったですね。とにかくカメラマン兼店長の武田さんが気さくな方で、接客から撮影からプロの仕事を目の当たりにしました。言われたとおりに首を傾けたらちゃんとブロマイド風になってて。」原田さん談)

【10月】
-Hi,how are you?初のソノシート「逢魔がドキドキ」リリース!後藤さんによるジャケットも素晴らしいです。

原田∶あれ、いいですよね!僕の自宅で、暗幕張って照明たいて撮影しました。後藤さんは普段から一緒に個室付浴場へ行ったりしてるので、ツーカーですね。意図を汲み取ってくれるのでいい出来になりました。

-曲も妙に残る節で。

原田∶エーストーンのリズムボックスを使ったのが新しい試みでした。「THE SPECIALSの2ndみたいなの」というのはずっと頭にあって。今後もこのタイプの曲は増えてくと思います。

-時事的には記録的ヒットとなった劇場版「鬼滅の刃」の公開がこの月ですが。

原田∶映画も観てないですし、原作も読んだ事ないんですよね。面白いんだろうとは思うのですが、絵のタッチがあまり好みじゃなくて。その点で入り込めてないですね。
(京都時代の原田さんの部屋より。このような絵のタッチが好みのようだ)

【11月】
原田∶この月は高橋留美子の紫綬褒章でしょう!めでたいですよね。高橋留美子作品って年中行事や神仏習合の盛り込み方が上手いんですよ。流石だなと思います。「High School,how are you?」は1月から12月までのカレンダー式アルバムになってまして、その辺の季節感はかなり参考にさせてもらってます。あとラムがインベーダーという設定で、そこに鬼や雷神の要素を足してるのって天才じゃない?
(因みに「カレンダー式にしてはどうか?」というのは私の提案でして、こちらの「らんま1/2 歌暦」がヒントになっています)

-Hi,how are you?が参加したサニーデイ・サービスのリミックス盤のリリースも11月です。

原田∶あれは光栄でしたよ~。と同時にもっと宅録に適した環境を自部屋で整えようと思いましたね。来年は宅録で一枚出したいという野望もあります。

【12月】
-水島新司の引退宣言にはSNSが「お疲れ様」という言葉で溢れ返りました。

原田∶水島作品はあんまり通ってなくて、ドカベンを幼少期にケーブルテレビで見てたくらいの薄い印象しかないんですよ。でも新潟に出張で行った時に主要キャラのブロンズ像を前にしたらテンション上がっちゃいましたけど。
(日本ではSxOxBの次に好きだという赤痢の「PUSH PUSH BABY」と共に)

-Hi,how are you?的には12月14日に仲村トオルがデビュー35周年を迎えたのも大きいのではないでしょうか。(仲村トオルのデビュー作「ビーバップハイスクール」は1985年12月14日公開)

原田∶それは勿論過ぎです!文脈的にトオルさん無しでHi,how are you?は語れません!!トオルさんのエビオスのCMも2020年ベストCMでしょう。トオルさんに関する色んな文献を読んでみると、凄くストイックなんですよね。そして、チャレンジ精神とユーモア。その辺は偉大な先輩を見てきてるからなのでしょうね。

-偉大な先輩というのは「あぶない刑事」で共演した舘ひろしと柴田恭兵の事ですね。

原田∶いえ、小堺一機さんです。

-そっか!仲村トオルと小堺一機は専修大学の先輩・後輩でしたね。
原田∶やっぱりね、Hi,how are you?として今までも、これからも、ずっと大切にしているのは再生ボタンを押した時に「なにがでるかな?」という感覚なんです。ですから2021年のHi,how are you?は「なにがでるかな?ハイハワユー?」をキャッチコピーに音楽界を騒がせますよ~。パッホーン!!



Hi,how are you? 6th Full Album

“High School, how are you?” 

2021年1月1日
CD & ストリーミング発売!

1月.恋の賽銭泥棒
2月.恋の豆鉄砲
3月.恋の三色団子
4月.恋の四月バカ
5月.恋のボリ・スヴィアン
6月.恋のりびんぐゲーム
7月.夏風デート
8月.りんご飴
9月.Autumn pagent
10月.逢魔がドキドキ
11月.明日泥棒
12月.あわゆき 

【CD】
TETRA-1031 /¥2021+tax
TETRA RECORDS

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