ちょっと前のTokyo FM『山下達郎 サンデー・ソングブック』 で、達郎さんが「ノマドランド観た。すごくよかった」と言っていたので観たいなと思っていたら、早くもAmazon Primeで配信になったのでひとりで観ました。
○物語
ネバダ州の企業城下町で暮らす60代の女性ファーンは、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失ってしまう。キャンピングカーに亡き夫との思い出や、人生の全てを詰め込んだ彼女は“現代のノマド(放浪の民)”として車上生活を送ることに。
過酷な季節労働の現場を渡り歩き、毎日を懸命に乗り越えながら、行く先々で出会うノマドたちと心の交流を重ねる。誇りを持って自由を生きるファーンの旅は、果たしてどこへ続いているのか――。
〇キャスト
出演者たちは、2人の俳優(フランシス・マクドーマンドとデビッド・ストラザーン)以外は“実際のノマド”
〇アカデミー賞受賞作品
計6部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、マクドーマンドの主演女優賞を受賞した。
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アメリカの大自然をこれでもかと見せつけられるロードムービーです。
主人公のファーンをはじめ、映画に出てくるノマド(放浪の民)達はみんな自らの意志で(誇りをもって)ノマド生活をしているように見えます。
アマゾンの倉庫などでの短期の仕事を求めてキャンピングカーで放浪する旅はゴージャスな自然と一体化した暮らしで、この映画を見た誰もがちょっと憧れるほど素敵です。
でも、原作の根底にあるテーマは多分、格差社会。
返済の見込みのない住宅ローンを担保にした金融商品のバブルがはじけ、リーマンショックが起こります。
その金融商品で儲けたウォール街ではいくつかの会社が倒産した。けれどもノマド生活を余儀なくされる人はいませんでした。
一方、(返済の見込みのない)住宅ローンの借り手だった人々は、家も仕事も(時には家族も)失い、それまでこつこつと働いてきた(リタイア間近の)高齢者までもがノマドの旅に出た。
リーマンショックによってノマドを余儀なくされたシニアたちの、格差への静かな憤りとそれを受け容れた諦観、誇りが美しいアメリカの自然に溶け込んだロードムービーです。
落ちらしい落ちのない映画ではあります。
主演のフランシス・マクドーマンドの存在そのものが物語。
劇場での鑑賞がおすすめです。