台湾の真実を伝えるために、普段は中国語で文章を書いている著者(ジャーナリスト)が、日本人向けに台湾を語りつくした本です。
著者はある時、台湾の大学院生に「どうして台湾には日本についての情報があふれているのに、日本人は台湾のことをほとんど知らないのですか」と尋ねられた。
またある時は、台湾の大学教授から「どうも日本人が関心を持つ台湾は、常に日本と関係のある台湾ということのようですね。日本と無関係の台湾というものは、想像できないのでしょうか」とも言われた。
たしかにそうだなと思う。
東日本大震災時の台湾からの多額の義援金の背景にある台湾と日本の歴史、そして戦後の台湾についてちゃんと知っている日本人がいったいどれほどいるのだろう。湾生や引揚と無縁な普通の日本人にとって、台湾はグルメやショッピング、ちょっと昭和レトロを感じられる旅先で終わってしまっているのかもしれない。少なくとも私の世代が受けた教育では「大日本帝国」に割かれたページや時間はごくわずかだったし何も残らなかった。
そういう意味で、この本は、オランダ時代、鄭氏政権時代、清朝時代、日本統治時代、中華民国時代、と常に外部の誰かに支配されてきた台湾の歴史を教えてくれる教養ある「雑文」です。(著者によると、「雑文」とは抒情性を備えた評論文)
本省人と外省人の分布やライフスタイル、外省人に占拠された台北よりもむしろ、本省人の多かった台北以外(特に台南)に美味しいものも文化遺産も眠っているなど、聞き捨てならないお話ばかり。特に「台南はボストン」というくだりはステキです。
そういうことを知って旅すると台湾がもっと愛おしくなると思います。
本に登場した場所で、次に台湾に行くときに訪れたい場所の備忘録として書き留めておきます。
①台南市 林百貨店(台南)
日本統治下の1932年にオープンした百貨店。長年廃墟だったが、2013年に修復しデパートとして再オープン。
(創業当時 wikipediaより)
(現在 林百貨店webより)
②青田七六(台北)
農学者足立仁台北帝大教授が1931年に設計建築した自宅。
住所の台北市青田街七港六号が名前の由来。現在は古民家レストラン。
(台北ナビより)
(リビング 青田七六 webより)
③国立台湾文学館(台南)
④宮原眼科(台中)
日本統治時代の眼科医院を超おしゃれに改築したスイーツ屋。
ハリーポッター風の内部で知られる。
(台北ナビより)
次に台湾に行くのはいつだろう・・・