5月19日(土)@渋谷ユーロスペース
林雅行監督によるドキュメンタリー映画。
「湾生回家」以来、久々に「湾生」の世界に浸った。
湾生が登場する映画でいつも気になるのは湾生の人たちの話す言葉。
何とも言えないイントネーション。
東京の言葉が標準語だとすると、それとはかけ離れている。
けれど日本のどの地方にも染まっていない不思議な音。
そして、どこかあたたかい。
母の話す言葉と同じその不思議な音にのせて、竹中信子さんと武石道夫さんが語るストーリーは、波乱万丈な自らの運命をどこか俯瞰しているかのような語り口。淡々としていて湿り気がない。
台湾は日本が清国から譲り受けた初めての植民地。大日本帝国の威信をかけて築かれたインフラや住まい、学校などは内地のそれとはくらべものにならないくらい近代的であか抜けていた。教育もファーストクラス。
そんな場所で何不自由なく生まれ育った湾生たちが焼け野原と化した内地に放り出される。
素晴らしいはずの内地なのに・・・。湾生はみんなそのギャップが意外だったと、そんなエピソードも。
けれど、ハンディだらけの人生を、からだに刻み込まれた幸せな記憶で乗り越えてきた。
「外地から内地に引き揚げたといっても、自分にとっては台湾が生まれ故郷。引き揚げるという言葉がピンとこない」という竹中さんの言葉でわかった。
母も含めてこの人たちはガイジンなんだな、と。
リベラルな生き方に励まされる。
そんなガイジンもどんどん減っている。
これだけは保護することもできない絶滅危惧種だ。
母が目指していた「タカラヅカ」 (今でも口ずさむ歌)