自転車通勤の落とし穴 | 小さい会社にしかできない労務管理のことを話そう

小さい会社にしかできない労務管理のことを話そう

労働エッセイストの松井一恵です。小さい会社には小さい会社にしかできない労務管理の方法があります。
丸17年社会保険労務士として生きてきて、みんなに知ってほしいこと、未来に残したいことを書き残そうと思います。

社員の中に自転車通勤してる人はいますか?

自転車通勤はお金がかからないので、実は把握していないという会社も多いのではないでしょうか。

ですが、「知らなかった」では済まない責任が発生することがりますので、ご用心下さいね。

 

歩いていても、自動車で通勤していても、自転車であっても、交通事故に巻き込まれる可能性はあります。この場合は、自動車の損害保険か会社の労災保険かで損害をカバーすることができます。

が、自転車での通勤は、加害者になる場合があります。

有名な例では、小学生が自転車で下り坂を走行中に60代の女性と正面衝突し、数年間寝たきりとなり、監督すべき母親に約9,500万円の損害賠償命令が出たことがあります。

「監督すべき母親に」と書きましたが、乗ってきた自転車を業務に利用させていた場合、監督すべきは会社であり、会社が連帯して損害賠償を負担しなければならないリスクがあるということです。

では、保険に加入すればいいですよね、ってことなんですが、思いつくのが自転車保険。私もカード会社が取り扱っている自転車保険に加入しています。月々数百円で、1億円までの損害賠償に対応しています。しかし、これは日常生活としての自転車運行で誰かにけがをさせた場合に使えるのであって、業務中の事故はカバーできません。個人賠償責任保険も同様です。

 

では、会社として、どう対応すればよいのでしょう。

仕事で自転車を利用させる場合は、「施設賠償責任保険」に加入しておく必要があります。施設賠償責任保険というのは会社の施設や業務に起因する損害賠償リスクを補償する保険です。

たとえば、店のガラスが割れて通行人をケガさせたとか、自転車で出前中の店員が子供をはねてケガをさせた、等々のケースに対応可能です。うちの事務所も、この保険に加入しています。(幸い使用したことはありませんが・・・)保険料もそれほど高額ではないので、ぜひご検討ください。

自転車通勤に関しては、予め規定を設けておくようにします。

通勤経路を届け出てもらい、不法駐輪は困りますので必ず駐輪場を確保すること。駐輪代は会社負担か本人負担か、保険の加入はどうするのか、規定に反した時や無断で自転車通勤をしていた場合はどういうペナルティになるのか・・・問題が起きてからだと、後手をふむことになります。

 

 

 

自転車通勤も自動車通勤やバイク通勤と同様の配慮をお願いいたします。