「妊婦だからって、好き勝手していいんですか」
と言ってきたのは、妊婦さんの同僚女性社員。
会社は妊婦さんに対して、保健指導や検診の時間を確保しなければなりません。どうやら、ここまでは納得できるようなのですが、
「予定組んで、検診行くのは仕方ないにして、妊娠してるからって、遅刻したり、休んだり、勝手したら、私らが困るのに」
そう、お医者さんがそうしなさいと言ったら、時差出勤や休業しなければなりません。そのしわ寄せが他の女性社員にくるのが、納得できないというのです。
それ、社長に言ったほうがいいんじゃないのかなぁ。
「社長に言ったんですよ。会社の義務だから、
女どうしで、かばいあって、うまいことやってくれよ、だって。」
「女どおしでかばいあう」・・・なんで言うかなぁ、最悪のタイミングで、社長、それ一番言っちゃダメなやつ。
分断、作っちゃっうから。女性社員の間に、ベルリンの壁、作っちゃったから、これ。
「なんで私らが、あの人のために、なんとかせなあかんの?」ってなるし、でね、妊婦は「迷惑かけられないし」ってなる。「だから辞める」ってなったら、今度は言い出したほうも浮く。「○○さんが妊婦さんをいびったから、辞めちゃった」って。ベルリンの壁、2つだもの。もし、流産でもしてみなさい、「○○さんがいろいろ言ったせいで、●●ちゃんの赤ちゃんが・・・」、と社員の間に深くて広い河までできます。
大谷由里子さんが書かれた「オンナの敵はオンナ」と本があります。一回読んでみてください・・・女性社員だって、それぞれ立場が違えば言い分も違うのです。そして、例外なく、みんなつま先立ち程度にがんばってるの。顔は涼しくても、ふくらはぎはプルプルして、それでも踏ん張ってるの。踏ん張ってる以上に、他人のためにもっと踏ん張れと言われても、「わかっちゃいるけどできねぇよ」って、なります。ほんと、男性社長に読んでほしいんだよなぁ。。。
要は社長、母性保護の問題から、逃げないこと。
女性社員間のマターにしちゃだめ。じゃ、どうすればよいかですが、
1)誰も妊娠してないときから、就業規則を周知しておきます。法律に母性保護規定についても、しっかり説明をしておくこと。(会社の立場をはっきりさせておく)
2)誰かが妊婦さんの時差出勤や欠勤について、社長に意見してきたら、「よく言ってきてきてくれたなぁ、ありがとう」とねぎらって、「何がどのぐらい困ってるか」グチや不満も含めてよく聞くこと。(気持ちの解決)
3)それに手を打つこと。(事実の解決)よく聞いて整理すれば、何をしたらいいか、1つや2つ、やることは思い浮かぶでしょう。たとえば、欠勤が多くて、仕事がまわらないなら、期限付きでアルバイトを入れるとか、派遣会社に相談するとか、他の部署も含めて、仕事の割り振りを再編するとか、社長主導で、全社ぐるみで、対応すること。
「言うた甲斐があった」と実感してもらえば、ベルリンの壁も深い河も克服できます。
気持ちの解決と事実の解決、両方を忘れないでくださいね。
※男女雇用機会均等法における母性健康管理の措置
(1)保健指導又は健康診査を受けるための時間の確保(法第12条)
事業主は、女性労働者が妊産婦のための保健指導又は健康診査を受診するために必要な時間を確保することができるようにしなければなりません。
※ 健康診査等を受診するために確保しなければならない回数
○ 妊娠中
┌ │ │ │ └ |
妊娠23週までは4週間に1回 妊娠24週から35週までは2週間に1回 妊娠36週以後出産までは1週間に1回 |
┐ │ │ │ ┘ |
○ 産後(出産後1年以内)
医師等の指示に従って必要な時間を確保する
(2)指導事項を守ることができるようにするための措置(法第13条)
妊娠中及び出産後の女性労働者が、健康診査等を受け、医師等から指導を受けた場合は、その女性労働者が受けた指導を守ることができるようにするために、事業主は勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければなりません。
※ 指導事項を守ることができるようにするための措置
○ 妊娠中の通勤緩和(時差通勤、勤務時間の短縮等の措置)
○ 妊娠中の休憩に関する措置(休憩時間の延長、休憩回数の増加等の措置)
○ 妊娠中又は出産後の症状等に対応する措置(作業の制限、休業等の措置)