業務災害と通勤災害 | 小さい会社にしかできない労務管理のことを話そう

小さい会社にしかできない労務管理のことを話そう

労働エッセイストの松井一恵です。小さい会社には小さい会社にしかできない労務管理の方法があります。
丸17年社会保険労務士として生きてきて、みんなに知ってほしいこと、未来に残したいことを書き残そうと思います。

昨日は、「そこでこけるか~」というお話をしたのですが、

「どっちみち労災保険使うのに、どっちでもよさげ」な通勤災害と業務災害をなぜ分けたのか。

 

1.業務災害では、「労働者死傷病報告」を出さなければなりません。

これは、松井にとっては大きな話なのです。

被災労働者の休業の日数が4 日に満たないときは、簡易版の様式第24号というのを3月ごとにまとめて、所轄労働基準監督署長に提出します。これは、「字」だけで報告できます。

が、不幸にして亡くなられたり、休業の日数が4日以上になる場合は、遅滞なく様式第23号での報告が必要になります。

これはね、「字」とともに「絵」もいるのね。極端にセンスのない私は、どんなに説明されても上手な絵が描けたためしがなく、毎回本当に心が折れます。

この、右下方の白い枠ね、で、「絵が下手だ」と突き返されたことはありませんが、「絵がない」と突き返されます。泣きたいです。

通勤災害の場合、労働者死傷病報告の提出は必要ありません。

 

2.そもそも使う申請用紙が違う。

役所の窓口に行って入手するなら、説明もするのでもらい間違いませんけど、最近様式がダウンロードできるんです。事業主さんがあわてて自分で用意されたりすると、たまに間違えてます。

そうすると、印鑑もらいなおし、医師の証明もらいなおしになりますので、シャレになりません。落ち着いて、確認しましょう。(自戒もこめて)

 

3.業務災害なら解雇できない。通勤災害は解雇できる。

労働基準法第19条では「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間(中略)は、解雇してはならない」としています。仕事の上でのけがや病気中にクビにされたんでは、踏んだり蹴ったりですもんね。通勤災害の場合は、災害自体が一切会社のせいではありませんので、解雇OKです。

けどね、解雇は解雇でちゃんとした理由がないと、通勤災害だったら、なんでもクビにしていいってことではありませんから、悪事は企てないように!

(天変地異で事業継続できなくなったり、打切補償といって大きなお金を払った場合はこの限りにあらず、という例外もあります)

 

4.通勤災害の場合は、医療費の自己負担を取られる場合がある。

休業給付が出るときだけ、そこから200円引かれます。休業給付が出る=休業4日以上なので、ちょっと大きめの災害の時です。

業務災害なら、自己負担は一切ありません。200円を1回こっきりだから、ま、説明しなくてもあんまり問題ないです。

 

5.業務災害の場合、待機3日は会社が補償しないといけない。

これを忘れる会社が多いです。業務災害でも通勤災害でも、休業4日目から休業補償がでます。最初の3日を待機期間と言いますが、業務災害の場合、この3日分は会社が支給しなくてはいけません。通勤災害であれば、そのような補償は必要ないのです。

なので、業務災害の場合は「休業補償給付」といい、通院災害の場合は「休業給付」と、名前自体違うのです。

 

全体的に見て、業務災害は仕事に起因してますから、いくら労災保険に入っていても、ちょっとは会社に責任があるよね、という考えが貫かれています。通勤災害は、会社の手の及ばないところで起こるものなので、会社に負担を負わせることはできないな、という理解でいいと思います。

 

 

それにしても、こける場所が数メートル違うと、

扱いが全く違うので、こけるなら場所を選ばなあきません。

(そもそも、こけるなっていう話なんですけどね)