新卒でとるべき人、中途採用でとるべき人 | 小さい会社にしかできない労務管理のことを話そう

小さい会社にしかできない労務管理のことを話そう

労働エッセイストの松井一恵です。小さい会社には小さい会社にしかできない労務管理の方法があります。
丸17年社会保険労務士として生きてきて、みんなに知ってほしいこと、未来に残したいことを書き残そうと思います。

ある衣料品(仮)の問屋さんが、

「外注、高いなー。うちでやったらこんなに経費かからないよなー」ということで、新たに自社で加工やタグ付けの軽作業部門を作りました。

新たに部門ができれば、管理者を置かなければなりません。白羽の矢が立ったのは、平成3年入社、真面目に実直に勤めてきたものの、管理職には縁がなかった営業の山口主任(仮)でした。「ここらでいっちょ、昇格させてセンター長に、彼自身もさらにステップアップできたらいいよね」という社長の親心だったわけですが、これがどうもいけません。

商品を大量に運ぶための大型リフトをつけたのに、ほとんど活用されず。出荷伝票システムはダウンするし、送り状印刷も自動で印刷できるはずが、ほとんど使用せずに出荷していたので、注文から出荷までの時間が外注してた頃の倍かかってしまいます。大きな棚を導入したのに、品物の搬入がまちまちで整理が悪く、これも出荷遅れの原因のようです。それよりなにより、雇い入れたパートさん(いわゆる「大阪のおばちゃん」です)が山口さんの言うことを全く聞きません。「トイレ・更衣室・休憩室の清掃を当番制で行ってください」とお願いすると「それはうちらの仕事じゃありません」と拒否され、「台車は所定の位置に戻してください」とお願いすると、「所定の位置が不便ですねん」とのお返事が。「では、どこなら便利ですか?」とたずねると「それは社員さんが考えることなんじゃないですかぁ~?」と言い返されてしまいます・・・先にちょっと相談してくれたら、ここまで重症にならなかったのになぁ。山口さん、お気の毒です。

 

「大阪のおばちゃんを大量に使って、工場内軽作業をサクサク仕切る」なんて芸当には、特殊技能が必要なのです。それはもう、教育とか研修とかで修得できる技能ではなく、やってなんぼ、くぐってきた修羅場の数+もって生まれた才能(押しの強さ・何でも単純化して説明できる口先・変わり身の早さ・ご愛嬌等々)が必要になるのです。ここは、経験者をにやってもらうべきなのです。商品知識より、工場内軽作業の現場を仕切った経験を重視して、そういう人材を採用して、センター長に据えます。商品知識がある実直な山口さんを副センター長に、その下に正社員、パート社員という布陣を取ります。仕切り経験者の下で修行をし、もし「才能」が開花したら、本人の意向を確認した上で、山口さんをダブルセンター長に格上げすることだってできるのです。焦る必要はありません。

ということで、アドバイスの結果、この9月あたまから、工場内軽作業業務請負の老舗某F社から経験者を中途採用し、実践投入しました。わずか十数日ですが、ずいぶん仕事が回るようになったようです。

 

私たち中小企業の人材登用は、待ったなしです。

教育を積んで成長していくような仕事を担当する者 → 新卒採用

特殊技能が必要な仕事を担当する者 → 中途採用

と分けて考えておきましょう。

要員計画を考えるときに、少し気にしておいてくださいね。