2020年に出会って良かった児童文学 “自分用“ | ほんとうのピコットさん

ほんとうのピコットさん

子どもの本屋「夢文庫ピコット」店主です。
タイトル「ほんとうのピコットさん」については、
http://ameblo.jp/pikot/archive1-200711.html をどうぞ!

医者の不養生とか紺屋の白袴とか言いますね。 
専門にしていることでも、 
自分にまではなかなか手が回らない 
という様なことでしょう。

 プロは大変。
 
ところが本屋のわたしは、 
むしろ、浴びるように読む暮らしです。 
 
だって、うちは聞く本屋ですから。 


お父さん まずは聞いてみよう! 
お母さん 聞いたほうが早い! 


と言ってくださるお客様が多く、 
店主の方だって、

お奨めするのが生きがい !
みたいに思っていますからね。 
 
だから新刊のチェックでは、 
クリップ この本誰々さんにおすすめしたい 
クリップ あ、幼年童話の入口にいる子にぴったりだ  
クリップ 昆虫マニアのあの子が喜ぶかな~
クリップ これ、保育で使っていただくのに良さそう 
といったふうに、、 
読みながらお客様を思い浮かべ、

頭の中のお奨めリストにファイリングします。 
 
 
ところが、たま~に、 
時間も仕事も忘れ、 
お客様も思い浮かべず、 
夢中で読み耽る作品に出会うことがあります。 
 
こんな事ばかりだと仕事に支障が出ますが、 
幸か不幸か、

そんな作品にはそうそう出会う事はありません。 
読み終わって、 
あ~、この本に出会えてよかった~と思える 
そういう作品に出会えることは、 
読書の神様からのご褒美です。 照れ

(ご褒美をもらう程の事はしていませんが)
 
そういう作品は、

<自分専用リスト>にファイルされ、 
お客様にお奨めするとも限りません。 
その自分専用ファイルから、 
毎年1冊だけブログでご紹介して来た、 
出会って良かった自分用、 
今日は2020年の1冊をご紹介します。 

 

 


 
 
父さんのことば 

パトリシア・マクラクラン 作 

若林千鶴 訳 石田享子 絵

リーブル刊 本体¥1,300.

 

 

 

精神科医の父さんは、 
思いやりとユーモアのある素敵な人でした。 
物事を深く捉えるその考え方には、 
娘であるフィオナも影響を受けていました。 
 
そんな父さんが突然の交通事故で亡くなり、 
母親とともに残された姉弟は、 
喪失感に苛まれます。 

そんな一家に手を貸したのは、 
隣人や、彼の患者、

それにシェルターの犬たちでした。 
 
と、このように粗筋をご紹介すると、 
物語に意外性がある訳ではないことが 
お分かりいただけますね。 
だからこの物語のどの部分が

わたしの気持ちを捉えたのかについて、
上手くお伝えできるかどうか

自信がないのですが・・・。 
 
父親を失っても続く日常の中、 
立ち直りのきっかけを求めて、 
フィオナは弟のフィンと、 
シェルターで保護犬のお世話を始めます。 
 
それぞれに事情を抱えた犬たちと

過ごしながら、 
姉弟は折に触れ、

亡き父さんの言葉を思い返し、 
父さんの考えを辿ることで、 
二人は立ち直りの力を得ていくのです。 
 
 

読みながら感じたのですが、 
タイトルが「父さんのことば」とあるように 
残された家族や親しかった人たちの記憶に残る 
父さんの言葉は、 
深くて、誠実で、彼の人生そのものです。 

 
言葉の持つ力はすごい。 
語った言葉は、 
その人が亡くなったあとも留まって、 
残った人たちとかかわり続けるのです。 

 

父さんの場合がまさにそうでした。

その言葉を子どもたちが思い返す時、

読み手のわたしも一緒に、

姉弟の父さんの

思いや人柄に触れることができたのでした。


世の中、

自分に都合良く語れる人は多いけど、 
フィオナの父さんのように、 
自分の気持ちと向き合い、 
家族や友人にごまかしのない思いを伝られる 
そういう人ってどのくらいいるんだろう。 
 
そもそも、

こんなブログを長々と書いているこのわたしは、 
後で思い出してもらえるどころか、

読み手に届く言葉を使えているだろうか。

 
節分

よもや、ことばをごまかしたり

飾ったりはしていまいな? 

 

そう考えると、 
自分の文章を振り返るのがちょっと怖いです。 
アセアセ
 
生き方そのものであった父さんの言葉によって、

家族が喪失を乗り越えてり、
新しい歩みを始める感動の終章を、 
嬉しい気持ちで読むことができました。 

もうひとつ付け加えます。

このお話の中には、 
父さんと読んだ絵本が出てくるのですが、
フィンがシェルターの犬・エマに読み聞かせた

この絵本・・・、 
わたしも大好きです。 
1980刊の作品ですが、まだ入手可能ですよ。 

 

 

 

 

 

かえでがおか農場のいちねん

アリス&マ-ティン・プロヴァンセン 作

岸田衿子  訳 ほるぷ出版 刊 本体,1800.


 
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