Aldebaran(4) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

翌朝。

 

玄関で物音がしたので初音はまだ寝ている父を起こさないようにそっと布団を出た。

 

すると。

 

天音がリュックを背負って靴を履いている。

 

「天音、」

 

その声に振り返りもせず

 

「帰るわ。」

 

ボソっと言った。

 

「え、」

 

「こんな感じで一緒に年越しでけへん、」

 

背中が怒っていた。

 

「いや、こんな時間にバスも出てへんやろ、」

 

「なかったら歩く。大したことない。じゃ、」

 

一度も振り向かずに天音は出て行ってしまった。

 

呼び止めることもできずに。

 

 

 

北風が冷たかった。

 

自然と寒い風が目に入って涙目になる。

 

 

兄ちゃんのアホ。

 

 

手でそれを拭った。

 

小学校へ行くのも歩いて40分くらいかかった。

 

小1の頃は途中で疲れてしまって休み休み帰った。

 

自転車通学だった兄の方が先に帰っていて心配して迎えに来てもらったことあった。

 

中学へは自転車で30分。

 

上り坂が地獄だった。

 

 

でもおれもいい年なんだから。

 

こんな道のりどうってことない。

 

 

そう思ってしまうところがやっぱりまだまだ自分が子供じみている気がして。

 

 

最寄り駅まで歩いたら1時間半もかかってしまった。

 

さすがに疲れて駅前のベンチに座った。

 

 

大みそかに帰ったりしたら北都家の人たちどうしたのかって思うよな。

 

帰りずら・・

 

 

はあっとため息をついた。

 

そこに。

 

 

「・・天音?」

 

声を掛けられ顔を上げた。

 

「天音やん・・。 どしたん?」

 

赤星だった。

 

「・・風ちゃん、」

 

「え?今こっち来たん?まだバスない時間やん、」

 

「や・・」

 

昨日来たけどもう帰るとこ

 

とは言えず。

 

押し黙ってしまった。

 

「おれ昨日仕事忙しくて店に泊まったんよ。 今気晴らしに散歩してたとこ。 来いよ、」

 

その笑顔に何となく立ち上がった。

 

 

 

赤星のテーラーに来るのはいったい何年振りなのか。

 

全く変わっていない。

 

ミシンのそばの作業台にたくさん出来上がったシャツが畳まれている。

 

「初音ンとこに頼まれたやつ。 大量注文で嬉しいんだけど。何しろたまに妹が手伝ってくれてんねんけどまあ大変で、」

 

コーヒーを淹れてきてくれた。

 

「・・ありがとう、」

 

「おまえ東京で会社勤めして学校通うんやってな。偉いな。」

 

そんな風に言われて

 

「いや・・」

 

何だか昨日の話と繋がってしまってすごく嫌な気持ちになった。

 

「初音、嬉しそうやったで。」

 

赤星はまた作業に戻った。

 

「なあ。風ちゃん、」

 

「ん?」

 

「おれ昨日。衝撃的な真実。聞いてもうたんやけど、」

 

その言葉に赤星の手がピタっと止まった。

 

思わず家を出てしまった天音ですが、偶然に風太と出会って・・

 

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