a tempo(1) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「あ、ども。」

 

セリシールを訪ねた志藤はそこに加治木しかいなかったので意外そうに無言で小さく会釈をした。

 

彼はいつものように隅のパソコンで一人作業中だった。

 

ここに来るときはだいたい同じような感じで、マトモに顔を見たことも会話を交わしたこともない。

 

 

「みんな。 おらんの、」

 

そう声をかけると振り返りもせず

 

「ナルさんは今度のイベントの打ち合わせで出かけていて。神山さんは銀座に楽譜を買いに行きました・・」

 

ボソボソと答えるだけだった。

 

「あ、そ。」

 

さくらが産休に入って、志藤は奏のコンクールのこともありちょくちょくここに顔を出すようになっていた。

 

まだ午後2時でレッスンの時間まで少しあるので

 

とにかく加治木がキーボードを叩く音だけが響いた。

 

 

さくらちゃんはヘンなのが好きやからな・・

 

 

そんな彼を見て志藤はぼんやりと思っていた。

 

一度、加治木がいない時にさくらに

 

 

あいつ。 なんなん?

 

 

と尋ねたことがあったが

 

「ああ。 ああ見えてなかなか使える子なのよ。 パソコン操作も詳しいし。 ほら今度レッスンの予約システム入れたじゃない? あたしやナルもよくわかんないのよ。 詳しい人いてくれると助かるし。」

 

サラっと答えられてしまった。

 

「藝大卒なんやろ?」

 

「うん。・・確か。 首席じゃなかったかな・・。」

 

さくらは同じトーンで言ったのだが

 

「首席!」

 

志藤は驚いて思わず立ち上がってしまった。

 

「そ、それで? 今、ここのバイトなの・・?」

 

「まあ・・。 本人がマトモに仕事に就く気がなかったから。」

 

それにはややおののいてさくらは彼を見上げてしまった。

 

「いや。 藝大の首席やったら。 演奏家としてもチャレンジしてもええやん・・」

 

「コンクールも。 全然出ないしね。 演奏はホント。 素晴らしいんだけど。 よくもまああそこまでやる気なくて首席にまでなったなって。教授たちもみんな不思議がってたわよ。 院に進んだらって言ったんだけど。 それもせずに・・なんかブラブラしてる。」

 

志藤は大きなため息をついてまた座った。

 

「・・意味わからん・・」

 

「あたしも。」

 

さくらも平然としてそう答えながら普通に書類を書き込んでいた。

 

 

 

・・そんなことを思い出して。

 

「おまえはレッスンとかつけたりせえへんの、」

 

志藤は加治木に声をかけた。

 

「は? おれッスか? まあ理論なんかは教えられるかもしれないですけどー。 ピアノは・・」

 

またやる気のない返事で

 

 

・・無駄な学歴!!

 

 

志藤はそのセンテンスが頭をぐるぐるして意味もなくイラついてしまった・・

 


セリシールにバイトでやってきた加治木理緒ですが。・・ナゾ多いです(-_-)

 

 

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