a tempo(2) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「ナル先生!お願いします!コンクールの練習はちゃんとしてますから!とにかく今はこっちを!」

 

「いや。 でもさあ・・ いちおうこっちもコンクールまでのプログラム組んでるんだからさあ、狂っちゃうじゃん。予定外のことやると、」

 

「そこをなんとか! マジ切羽詰まってるんです! 試験まであと3日しかなくて! 相方の足引っ張れないし!」

 

「え~~~???」

 

 

3時半からレッスンが始まったが、志藤は奏の練習スケジュールを隣の部屋のテーブルで作成していた。

 

成が担当している高校2年生の小此木晴菜がレッスン前に何やら懇願している。

 

「また勝手なことすると。おれがさくら先生に怒られるんだからな、」

 

成は腕組みをして眉間にしわを寄せていた。

 

「・・あたし。 口は堅いです!」

 

「そういう問題じゃないし。 だいたい。 おれ弾けねえし。 こんな難しいの・・。」

 

彼女が持ってきた楽譜を手にした。

 

志藤は気になってそっと立ち上がって様子を見に行った。

 

「どしたん?」

 

「え? ああ・・。 この子、花園音大付属高校の2年生なんですけど。 今度2台の試験があるそうなんですよ。 それが心配だから一緒にやって欲しいって・・」

 

彼が持っている楽譜を見た。

 

 

ショパン ロンドハ長調

 

 

「・・ショパンのロンド、」

 

「相方はあたしより全然巧いんです。 足引っ張るわけにはいかないんです・・。 まだちょっと不安で・・」

 

晴菜はしょんぼりとして言った。

 

「・・志藤さん弾けません?」

 

成が見やると

 

「アホか! どんだけブランクあると思ってんねん・・。 確かに2台の中でも難易度は高いな・・」

 

成は隣の部屋の小和に

 

「さよちゃんは? 弾けない?」

 

と聞いた。

 

「・・ショパンのロンドは。 私も弾いたことなくて・・」

 

申し訳なさそうに彼女が言ったあと。

 

何となくみんなの視線が加治木に集まる。

 

彼はいつものようにボーっと楽譜の整理をしていた。

 

「・・カジさん、できますよね。」

 

小和が振った。

 

「は? なにが?」

 

「めっちゃ聴こえてたでしょ。 今の話・・」

 

加治木はまだ黙っていた。

 

成も彼のピアノをいまだに聴いたことがなかった。

 

志藤も

 

藝大首席卒業

 

の話を思い出し、一気に興味が沸いた。

 

 

「ちょっと。 やってやったら。 かわいそうやんか、」

 

志藤が彼に振ると

 

「・・・・」

 

まだ黙ったままだった。

 

「ここで仕事してるなら。 きちんと業務はこなしたらどうや、」

 

その言葉にのっそりと顔を上げた。

 

『天才』と言われながらもその実力がベールに包まれたままの加治木でしたが、いよいよ…

 

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