ひなたは奏の結果がわからず病室でやきもきしていた。
その時
「・・なんだ。 けっこう元気そうだね。」
やって来たのはさくらだった。
「先生、」
なぜ奏ではなく。
さくらがやって来たのか。
ひなたはその意味を考え、嫌な予感しかしなかった。
「奏。 6人中6番目だったの。 ・・正直、ちょっとらしくなかったかなって。」
さくらは傍らの椅子に腰かけた。
「え、」
「今回、設楽さんとの関係をカミングアウトしたり・・ちょっと騒がしかったのは事実。音楽とは関係ないマスコミにも注目されて騒がれちゃったからね。 志藤さんが全部シャットアウトしてくれたけど。 奏、気にしいだから。」
苦笑した。
「・・あたしの。 せいもあるのかな。」
ひなたは思いつめたように言った。
「まあ・・それもなくはなかったかもしれないけど。 でも。 どんな時でも強い気持ちがないとコンクールは勝ち抜けないよ。 志藤さんにちょっと厳しいこと言われて落ち込んじゃったから。 ・・きっとひなたのところにも来れないだろうなって、」
「パパが、」
ひなたはそれを想像し、奏の落ち込む姿が目に浮かんでしまった。
「今の奏はね。 どんなことでも全て勉強だから。 こういうことひとつひとつ乗り越えて・・大きくなってほしい。 自分のやりたいことを貫くのって、いい時ばかりじゃないでしょう? どっちかって言うとつらいことの方が多い。奏は今後の人生をピアノで生きていきたいって思ってるわけで、自分が好きなことをしてそれを仕事にするって・・幸せなことだけど、その分大変だから。 夢と現実のはざまで揺れる。自分の好きなことを世間に評価されるってのは。 やりがいはあるけど、なかなかつらいよ、」
さくらはいつものように淀みなくキッパリとした口調で言った。
「つらくても苦しくても。 自分の音を生み出していかなくちゃいけない。 奏はもうそういう世界に半分足をつっこんでるんだよ。 厳しいけど・・そういう世界だから。 ひなたは・・どう思うかわからないけど。 でも。 もし、奏のことを思ってくれるのだとしたら・・そこはわかってあげてほしいかなって、」
そして優しくそう言った。
ひなたは掛布団の端っこを意味なくいじくりながら
「・・別に。 あたし全然気にしてもないし。」
さくらを上目づかいに見た。
「なんか最近。 カナがピアノ優先でもしょうがないなって思うようにもなってきて。 それは絶対止められないし、うん。 もうしょうがないかなって思ったりもする、」
決して賢くなさそうな彼女が悟りを開いたように言ってくることに
さくらは意外そうな目で見やった。
好きなことを仕事にしようとしている奏のこれからの厳しさをさくらはひなたに静かに話します・・
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