Prima Stella(18) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「なんか。 しっくりこないんですよ、」

 

奏はややイラついているようだった。

 

「うーん。 その感じはおまえの中だけのことで。おれにはわからんけど・・。 そんなにすぐにオケとばっちり合うなんて。プロでもないしな。そんな簡単なモンやない、」

 

志藤は対照的に落ち着き払って言った。

 

「え、」

 

「例えば。 あの人数で呼吸を合わせてごらんって言ったら。 それだけでもけっこう難しいもんやで。 息吸って、吐いてってだけでも。 それは指揮者のタクトに全員が集中してやっていくことでできていくもんや。 藝高は個々のスキルは高いと思うけど、みんなやってオケをそんなにやってきたわけやないと思う。 プロやないねんから。 まずは。 みんなとコミュニケーションを取って、くだらない話でもいい。 意思疎通を徐々に取ることやな。 ・・コンクールのコンチェルトのオケはプロやから、そんなことせんでもパッとできてしまうかもしれへんけど。 まだ高校生やし、」

 

いつものように早口でまくしたてるわけでなく

 

ひとつひとつを奏に言い聞かせるように志藤は言った。

 

コミュニケーション・・

 

奏は心でその言葉を繰り返した。

 

「みんなそれぞれ力はある。 みんなでいいものにしようって思えば・・きっちり合ってくる、」

 

どうしてこの人の言葉は心にスッと入ってくるのだろう。

 

「ま、このCDは。 ほんと雰囲気掴むだけの練習用やから。 全ては練習で。」

 

そしてにっこり笑った。

 

 

翌日の放課後練習、奏は先に来ていたオケの男子たちが教科書を広げてやいやいやっているのを見て

 

「あ、試験範囲出た?」

 

とその中に入って行った。

 

「え? あー、うん。 2組は出たみたい。 今先に聞いてんの、」

 

「おれにも教えて、」

 

今まで自分からみんなの話の輪に入って行くことがなかったので、みんなやや驚いたが

 

「いや、高遠はできっから別に見なくていいでしょ、」

 

「けっこう必死だから。」

 

「ね、ジャパコンの雰囲気ってどう?」

 

何となく遠巻きにしていたみんなが次々と話しかけてくれる。

 

 

友達がいないわけではなかったが、自分からあまりみんなに溶け込んでいく性格でもなく

 

本当に毎日忙しくて、学校の友人たちと過ごす時間も少なかった。

 

「あそこ、ステーキ屋になったらしいよ、」

 

「え? マジ行ってみたい。」

 

「今日帰り行ってみようか。」

 

「おれも行っていい?」

 

奏はその話にも自然に入っていった。

 

「女子はナシな。 高遠と一緒って言ったらめっちゃついてくるから、」

 

不思議に周囲の空気が緩んでくるのがわかった。

 

 

ピアノ協奏曲なんて言ったら。

 

ピアノが主役、みたいに思いがちだけど、たくさんある楽器の中の一つに過ぎない。

 

奏はその日の練習でそれをつくづく思った。

 

みんなの音に溶けて、そして一緒になって初めて曲ができあがる。

 

ピアノを弾きながら少しだけ笑顔がこぼれた。

 

志藤のアドバイスを受け、奏はプライベートでもみんなの輪の中に積極的に入って行きます・・

 

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