「涼と奏は。 3つしか年が変わらんのやな、」
志藤は茶碗を手にしながらぽつりと言った。
「え、」
ゆうこは温めたおかずをコトっと置いた。
「・・梓さんは。 一人で。 仕事をしながらどうやって奏を育てたんやろ。 どうしても自分の子はすごく幼く思えてしまう。」
そしてふっと笑った。
「おれは。 親として、何をしてきたんや、」
ひなたはリビングに繋がるドアの外から父の声を聞いていた。
「奏のことは確かに仕事や。 ホクトとしての。 でも・・おれが奏を教えるのが本当に楽しくて、見るたびに巧くなっているあいつが、嬉しくて。真尋と一緒にやってた頃を思い出して、正直取締役の仕事より、楽しい。 ここのところはずっとジャパコンの本選で奏に何弾かせようかって。もうそのことばっかりで。 涼の発表会のことも。 忘れてた、」
志藤は箸を置いた。
「ピアノは自分にやる気がなかったらやっていてもしょうがない。やらされてるんじゃあ、巧くもならない。 涼がやめたいって言ってるなら無理して続けずに、自分が好きなことをやるべきやと思ってる。 昨日もカッとなって叱ってしまって。 涼の本当の気持ちなんかひとつもわかってなかった、」
ゆうこは志藤の携帯に送られた奏からのメールをジッと読んでいた。
「アカンなあ。 なんか。 男の子って・・育てるのプレッシャーやな、」
志藤は苦笑いをした。
「プレッシャー?」
「なんか。 自分を試されてる感じする。 息子を通して自分の力量が見透かされてるようで。 どうしてもきちんと育てなアカンって思ってしまう、」
「それは。 男の子も女の子も同じ。 誰とも比べずに自分の子供のできることを手助けしてあげればいいのよ。 涼も今はちょっと反抗期でなかなか素直になれないけど。 涼が一番あなたに甘えたいって気持ちがあるなって・・ちっちゃいころから思ってた、」
ゆうこはそっとスマホのスイッチを消してテーブルに置いた。
「え、」
意外なことを言われてハッとする。
「兄弟の中でも、涼は一番あなたに認められたい、褒められたいって気持ちが強い。 やっぱり男の子だし。長男だし。 そうやって意識して育てたわけじゃないけど、父親に対する気持ちはひなたたちとは違う。 涼は口下手でなかなか自分の気持ちを表に出せないから・・余計に昨日は爆発しちゃったんじゃないかと思うの、」
涼太郎の自分への思い。
正直、一度もそう感じたことはなかった。
志藤はジッと彼女を見た。
息子を育てる難しさを志藤はかみしめていました・・
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