「ごちそうさまでした! すごく美味しかったです。 また来ます、」
会計を終えてさくらは佑真の母にそう言った。
「ぼくも。 ホクトの事業部の人たちにお店を宣伝しておきます、」
葦切も笑顔だった。
「ありがとうございます。 またどうぞいらしてください。 高遠くんも。」
「はい。」
奏も笑顔で頷いた。
店を出ようとする奏に佑真が慌てて追いかけてきた。
「高遠、」
「ん?」
「コンクール。 頑張ってな。 結果、連絡ちょうだい。」
「あ、うん。 ありがと。 まあどうなるかわかんないけどー。 でも自分の力を出し切れるように頑張る。」
「ひなたは。 見に行かないの、」
「部活あるからって言ってた。 もうずいぶんコンクールにも来てないよ。 でも。 それぞれ大事なものがあるから。 しょうがない、」
奏はふと笑った。
「自分の大事なことが一番。 お互いのために無理をするとつらくなる、」
その言葉に佑真は
「やっぱ。 おまえ高1とかウソじゃねえ? なにその達観した感じ、」
おかしそうに笑った。
「今はきっとそういう時間だから。 佐野くんも頑張ってね。いつか花園に出てね、」
「それは・・けっこう難しいよ?」
楽しそうに会話をする二人を見てさくらは
「・・奏が同じくらいの子とあんなに楽しそうにしてるのって初めて見た。」
葦切にぽつりと言った。
「奏くんの世界がどんどん広がってるってことですよ。 寝てばかりいた赤ん坊がハイハイするようになって、一人で立つようになって、そして歩けるようになって・・みたいな。 それは奏くんのこれからにとってもすごくいいことですから、」
葦切はいつものように穏やかに彼女に言った。
「あたしと出会う前の奏の生活もあった。 その頃のことはまああたしに遠慮してかもしれないけど・・一度も聞いたことないです。 寂しい思いやつらいこともたくさんあったと思うけどー。 今はあたしも・・志藤さんも。 ひなたも。 みんないるし。 あの子がいつか世界の舞台に立つ日をみんなが夢見てる。」
さくらは楽しそうに佑真としゃべっている奏を見た。
「奏くんは。 ようやく輝けるところにたどり着けたんですね、」
「まだまだ。 ピアニストとしては・・幼稚園児くらいですから。 これから手を掛けて育てていかないと。 なんか。 お母さんみたいな感じ、」
さくらは葦切を見て笑った。
「あながち。 奏くんの『お母さん』って言うのも間違ってなかったってことですね、」
「いやいや。 人から言われるのは。 絶対に勘弁してほしいわ、」
そこだけは譲らないさくらに葦切はまた笑ってしまった。
「じゃ。 またね、」
奏は手を振って佑真と別れた。
「またねーって。 女子高生か、」
さくらがからかった。
「よし。 うなぎ食べさせたんだから。 3次も絶対通る!」
そして彼の背中をぽんと叩いた。
奏も穏やかにほほ笑んで、うん、と頷いた。
奏の未来に向けてさくらも心新たにします・・
今回のお話は今日でおしまいです。
いつものように明日からのおしらせを後ほどしますのでよろしくお願いします!
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