「もう一度。 奏と暮らしたいなあって思うこともあるんですが。 たぶん・・もうないのかな、とか。 ミオが生まれてから、思い出すのは奏の小さかったころのことばかりで。」
梓は複雑な気持ちをゆうこに口にした。
「奏くんのことは私よりひなたの方がよくわかってるとは思うんですけど。 ピアノが思いきりできることが何より嬉しいみたいってことは言ってます。 お母さんと離れて暮らすことが寂しくないわけないでしょうけど、どこの家でも子供はいずれ出て行くものって思わないと。 ウチも今は5人も子供がいて、しっちゃかめっちゃかですけど。 きっとまた主人と二人になって静かになってしまうのかな、と思う時もあります。」
梓がまだ奏に対して申し訳ないという気持ちを抱いていることがわかって、優しくそう言った。
「時間が戻って来ないのは。 私も同じです。 みんな同じ。 奏くんはお母さんが幸せでいてくれることがなによりの幸せだと思います。」
梓はその言葉に少しだけ笑顔を見せて頷いた。
「・・そうかあ。 カナ、本当に恐竜展行きたかったんだね、」
ケーキを食べながら、ひなたもしみじみ言った。
「カナ、あんまり浜松にいたころの話、しないの。 聞いてもはぐらかされるし。 つらかったのかなーとか、」
「・・まあ。 寂しかった思い出が大きいのかもしれないけど。 でも。 肝心なのは今だから。 高校生になったら大人になるまではすぐよ。 何にも考える暇もなく大人になっちゃうし。 人生ってうまくできているというか、いいことばっかりでもないし、つらいことばっかりでもなくて、常にゆらゆらしてる。 つらいことがあっても、またいいことがあると思うとね。 乗り越えられるでしょ? 人生終える時に丁度よかったなーって感じになってると思うんだよね・・。 だから。 悔いなく今を生きるんだってば、」
ゆうこはひなたの背中を優しくぽんと叩いた。
「・・ママ、たまに深いこと言うね、」
ひなたは頬杖をついてぽつりと言った。
「・・たまに、は余計です。」
今度は頭にぽんと手をやって笑った。
「あいたたたた・・」
ひなたは部屋のラグの上で柔軟をしていた。
右足は順調に回復しているものの。
気になるのは、まっすぐに伸びないこと。
病院の医師からも
焦らないで
と言われているけど、また同じところを痛めるのではないか、という怖い気持ちもある。
ひとつため息をつくと、スマホに着信があった。
つらかったことも何もかもが今に繋がっています・・
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