いくつかあったケーキの中からイチゴのムースが挟んであったショートケーキを選んでお皿に載せた。
「奏くんね。 ちっちゃい頃から恐竜が好きで。 恐竜図鑑とか図書館で借りてよく読んでいたんですって、」
ゆうこはひなたの前に座った。
「ああ、言ってたよ。 よくスケッチブックに絵を描いたりしてたって、」
ひなたは笑った。
ゆうこは昼間奏の母がやってきた時のことを思い出していた。
「奏が小学校2年生くらいの時。 凛太郎くんと同じくらいのころに。 浜松の博物館で恐竜展が催されたことがあって。 ・・私は知らなかったのですが、ある日奏の机の隅にそのチラシが挟んであって。」
梓は懐かしそうな目をして言った。
「奏。 行きたかったんだろうなあって。 もうとっくに日にちが過ぎてしまっていてね。 私に言えなかったんだろうなあって。」
紅茶にそっと口をつけた。
「とにかく。 私が毎日仕事で忙しくて。 奏をどこかに連れていくとかそういうこともなかなかできなくて。 いつもいつも我慢をさせてしまっていました。保育園に通っている時も迎えに行くのもいつも最後で。 先生と二人で私を待ってました。 夜はお世話になっていた方がオーナーをしていたレストランで仕事もあったので、奏を家にひとりにしなくちゃいけなかったし。
ご厚意でオーナーさんのご自宅の離れのピアノを貸していただいて、そこでピアノの練習をさせてもらっていました、」
明るく言う梓だったが、ゆうこはその頃の彼女の苦労を思う。
「まだ4歳くらいの奏にずーっと指の練習をさせて。 それを私が帰るまでずっと。 素直によく言うことを聞いてくれていたと思います。」
「そうですか・・」
ゆうこは彼女の前に座った。
「わりあいしっかりした子ですが、小さい頃に我慢をしてきたせいか、子供らしく過ごせなかったのかな、とも思います。 恐竜展の話をしてくれてる時の奏の顔が。 ほんとその頃に戻ったようで。 私もとても嬉しかったです。 志藤さんご一家、ひなたちゃんのおかげだと思います、」
頭を下げられて
「い、いえ。 ほんとウチはなにも・・。 凛太郎もそれはもう喜んでずーっとその話ばかりで。 奏くんのことも、何でもよく知っていて教えてくれるんだーって。」
ゆうこは逆に恐縮してしまった。
「今は。 お互いに幸せにやってますけど。 どんなに願ってももうあの頃には戻れませんから。 あっという間にきっと大人になってしまいますから。」
梓はハイハイで足元にやってきた美音を抱き上げた。
梓は幼いころの奏のことを思い出します・・
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